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現実感増すイランの核兵器保有    桜井よしこ
■重視すべきネタニヤフ首相の警告 」

イスラエルのネタニヤフ首相はおよそいつも「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)紙など米国のリベラル系のメディアにあしざまに批判される。イスラエルがイランやパレスチナなど、“敵対的”な国あるいは民族にいわば囲まれる形で、国際社会の中で生き延びるために、ネタニヤフ首相は、非常に現実的かつ強硬な話をする。NYTなどはそれを嫌い「超右翼主義者」という形容詞で報じる場合が多い。
 

しかし、3月3日、ネタニヤフ首相が米国上下両院合同会議で行った演説は堂々たる内容で、オバマ政権に真っ正面から問題提起するものだった。
 
 
ネタニヤフ首相は米国が中心になって行っているイランとの核交渉を「非常に悪い取引」だと断じたのである。米国主導の、つまりオバマ大統領主導の合意案ではイランの核保有は阻止できない。イランの平和的核利用を認める結果、核施設は廃棄しないという案はイランの核計画に必要な施設をほぼ無傷で残すものだと、主張した。
 
 
オバマ大統領は現在の合意案では、イランが製造を決断してから実際に核兵器を保有するまでに一年かかる、米国など国連安全保障理事会常任理事国が中心になって、イランの核開発を阻止することができると主張する。核計画を制限する合意の履行期間を「10年以上」としているために、その間の核開発も不可能だというのだ。
 
 
だがネタニヤフ首相はオバマ大統領の考えが楽観的過ぎるとし、イランが核兵器製造を決断して実際に保有するまでは1年よりずっと短いと、イスラエルの情報では分析されていると説明する。履行期間10年ということは、その先は制限が撤廃され核兵器製造が可能になるということであり、結論としてイランの核保有は阻止できないのではないか、と反論する。
 
 
ネタニヤフ首相の警告する通りイランが核兵器保有に至る可能性は高いと、専門家らもこれまで繰り返し指摘してきた。イランが核を持つとき一体何が起きるだろうか。中東諸国が激震に見舞われるのは目に見えている。イランの核保有を恐れる気持ちはアラブ諸国に非常に強い。加えて米国の中東政策に頼りながらも、オバマ大統領の軍事介入に対する消極姿勢にアラブ諸国の不安は拭えない。
 
 
従ってイランが核保有に至るとき、サウジアラビアをはじめとする近隣諸国は米国の核で守ってもらうという発想よりも、自らの核武装を選ぶことは十分にあり得る。そのとき、すでに崩壊気味の核拡散防止条約(NPT)は最終的に破綻するだろう。
 
 
一方でイランは自国の核の一部をイスラム過激派の手に渡しかねない。あらゆる意味で、核兵器が一挙に拡散する危険性が生じかねない。このような最悪の事態にどう対処するのか。
 
 
オバマ大統領はこうした世界規模の危機に対処しかねている。振り返ればオバマ大統領は、イランの核開発の危機にかつて一度も積極的に取り組んだことはないのではないかと思えてならない。
 
 
オバマ大統領は、イランが核兵器を完成させる前に関連施設を攻撃すべきだというイスラエルの考えを、再三、けん制してきた。イスラエルの存亡に関わる核攻撃の危険について、オバマ政権はあまりに危機感を欠いているとネタニヤフ首相が考え、批判するのも当然であろう。
 
 
ネタニヤフ首相はホワイトハウスの頭越しに野党共和党によって招かれたが、オバマ大統領の意向を気にして訪米と演説を取りやめることをしなかった。上下両院合同会議には50人以上の欠席者が出たが、それでも自説を曲げることはなかった。オバマ大統領はネタニヤフ首相が実行可能な、検証可能な案は示さなかったと批判したが、それでもネタニヤフ首相の警告は重要な意味を持つと私は思う。(週刊ダイヤモンド)
 

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| 桜井よしこ | 20:28 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |







教育改革や農協改革で見え始めた日本再生への道    桜井よしこ
「恰(あたか)も、明治維新のあの大改革の嵐、日本開国の命懸けの戦いの中を駆け抜けたような感慨を抱いています」

中央教育審議会会長の安西祐一郎氏は2月9日の第7期中教審の締めくくりの会でこう語った。戦後教育の大改革といってよい成果を挙げ得たことへの安堵の気持ちが込められていた。
 

私も末席に連なった中教審の議論は、必ずしも全て順調だったわけではなかった。とりわけ教育委員会の在り方についての議論は白熱した。
 

教育委員会は教科書の採択に始まり教育現場が直面する問題全般に責任を有する。にもかかわらず、偏向した内容の教科書が多くの教育委員会によって採択され続けてきた。また、2011年、大津市で発生した中学2年生男子のいじめによる自殺事件で見られたように、いじめを隠し、責任逃れに終始する教育委員会も存在した。
 

中教審はこのような現状を克服するために首長の責任を明確にし、新設した教育長の任免権を首長に与えるなど、首長の権限を強めた。この改革によって、有権者の意思で選ばれた首長が、教育現場により強い権限を及ぼすことができるようになった。教育現場に今も色濃く見られる日教組のあしき影響も緩和されるだろう。
 

教育内容の大きな変化の一つは、今年4月から「教科」として教えられる道徳教育にあるだろう。かつて修身と呼ばれた道徳教育は、昭和20年、占領軍が禁止して以降、日本の学校できちんと教える体制はなかったのだ。06年の第1次安倍内閣で、教育基本法が改正され「道徳心を培う」ことが教育の目的として書き込まれた。今回、安倍晋三首相、下村博文文部科学大臣の下で道徳が正式に教科として教えられることになったのは、非常に大きな意味があると思う。
 

「朝日」「毎日」「東京」の3紙は社説で、多様な価値観が育たない、価値観の押し付けだなどと批判したが、そうした批判は当たるまい。
 

どの時代でもどんな国でも、勇気、誠実、他者への思いやり、正義感などは普遍的価値観として大事に守られ、受け継がれてきた。大人が実行して子供たちに範を示し、家庭や学校で重ねて大事な価値観として道徳を教えてきた。この当たり前のことをわが国は敗戦の結果、禁じられていた。70年ぶりに復活する道徳教育は必ず、日本人の善さを引き出し大きな力に育て上げていくと、私は確信している。
 

第7期中教審で決定されたもう一つの重要点は日本史を必修科目にしたことだ。これまで高校の歴史の必修は世界史であり日本史は選択科目にすぎなかった。自国の歴史を知らずして、世界の歴史を学んで何の意味があるのか。これもようやく改められた。
 

分野は異なるが、今週発表された戦後社会の大改革のもう一つの事例が農協改革である。農協の特権体質は、法人税率が19%で一般企業の25.5%よりずっと安いことや、農協会員の株の配当は損金算入されて課税されないことや、農協の事務所や倉庫には固定資産税が掛からないことなど幾つもあるが、私は「整促方式」という農協独自の制度に注目したい。
 

これは約700ある地方の単位農協や県連、全農など農協系組織の全てを利用して事業を行う仕組みである。肥料や種、農機具の買い付けから生産物の出荷まで全事業を全員で行い、各レベルで手数料を受け取る仕組みといえば分かりやすいだろう。そこには合理化や効率化の考えはなく、そこに関わる人々の利益優先しかない。結果として日本の農業は衰退したが、この農協も改革されることになった。
 

教育改革も農協改革も具体的な法案作りの段階で骨抜きにされないように監視が必要だ。まだ油断はできないが、15年が力強い日本再生の年になることが実感される。(週刊ダイヤモンド)
 

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| 桜井よしこ | 16:50 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







危機に弱く役に立たない政府機関    桜井よしこ
■対外情報機関の設置が急務 

オレンジ色の囚人服をまとい、鎖と手錠で拘束された後藤健二さんが、1月24日午後11時すぎには殺害されたとみられる湯川遥菜さんの写真を、27日夜にはイスラム国に捕らわれているヨルダン人パイロットの写真を両手に持たされ、メッセージを発信させられた。
 

29日午前段階でのイスラム国の要求は、後藤さんとヨルダン政府が拘束している女テロリストの交換である。
 

日本人のためにヨルダン政府が、拘束中のテロリストを解放するという一対一の交換は、日本およびヨルダン政府にとって非常に厳しい条件だ。事態は予断を許さないが、私たちは事件が世界に発信していることを読み取り、次なる状況に備えなければならない。
 

安倍晋三首相の、人命は尊重するが、テロには屈しないという方針を、国民の6割が支持していることが世論調査で明らかになった。非常に心強い。法も道理も踏みにじり、暴力による支配を押し広げていく勢力は、これからも存在し続け、根絶は容易ではないだろう。私たちが慣れ親しんできた国際社会の秩序や道理が公然と否定される事態は発生し続けるだろう。
 

日本はこうした事態に無防備であり続けてきた。だからこそ、今、国民を守るために何をすべきかを考えたい。まず第一は、世界各地域の情報を自力で取り、分析する能力を養う体制をつくることだ。日本は、先進諸国の中でインテリジェンスに最も疎い国である。これまで日本人や日本の企業が海外で危機に陥ったとき、ありていにいって各国の在外公館をはじめとする政府機関は、ほとんど役に立たなかった。
 

危機に直面して、大使館や日本政府に情報を提供してきたのは日本の総合商社やメディアだった。国家としての情報収集能力を備えていないこのような実態は今も基本的に変わっていない。
 

大国米国が海外での紛争に介入することをためらい、軍事介入に非常に消極的になったことが、世界のルールが大きく変わることにつながっている。今回の事件に限らず、予想を超える事件が発生し続ける構造的な変化が世界政治に起きている中、日本はなんとしても国際社会の動向を察知し、備えるための情報機関をつくるべきだ。
 

情報機関は、世界を広く俯瞰し、およそ全ての問題を「国際社会の中の日本としてどう対処すべきか」という発想で眺め、分析し、対応策を打ち出せる能力を備えていなければならない。
 

例えば日米、日中関係にしても、今回のようなテロリスト問題にしても、二国間あるいはその相手との関係だけで考えるのではなく、日本の国益を担保し、日本国民の命を守るために何をするのがよいのか、全体像を見詰めた上で戦略を描けるものでなくてはならない。
 

であれば、北米課や中国、モンゴル課など、縦割り構造の発想にとらわれがちな外務省では役に立たないということだ。新しい情報機関は既存の役所の外に、首相直属の独立機関として設置するのがよい。
 

安倍首相の強い意思で設置した国家安全保障会議(NSC)も、本来、きちんとした情報を上げてくる下部組織を持っていなければ、機能しない。
 

NSCが正しい判断を下し、正しい戦略を打ち出すためには、判断材料と優れた情報がなければならない。あらゆる意味で、対外情報機関の設置を急ぐことだ。
 

次に、海外での邦人救出のためにわが国は一体、何をなすべきか、具体的に論じるべきだ。
 

海外で予想外の事件に巻き込まれると、日本人は現行憲法と現行法の下では、日本政府が助けに来てくれることはないという現実に直面する。助けてくれる国家を持たないこのような状況に、これからも私たちはずっと甘んじていくのか。官民挙げて現実的に語り合うときだ。(週刊ダイヤモンド)
 

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| 桜井よしこ | 11:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







報道精神の対極にある朝日の体質    桜井よしこ
「朝日新聞」の記者有志が『朝日新聞 日本型組織の崩壊』(文春新書)を上梓した。有志記者らは、朝日の一連の不祥事を批判した競合紙や雑誌についてこう書いている。

「朝日新聞社を内部から観察していると、『反日』『左翼』といった右派陣営からの紋切り型の批判は、まったく的外れだ」「朝日の不祥事の原因は左翼的イデオロギーのせいだ、と条件反射的に非難する右派メディアや保守系識者の論調は、まったく事実を見ていない」
 

そうなのか。私も含めて朝日を批判してきた言論人は「まったく事実を見ていな」かったのか。
 
 
有志記者はこうも書いている。
 

「社全体として見れば、個々の記者レベルでは、改憲や増税の必要性を認める者のほうが、もはや多数派である」
 
 
私は思わず余白に書き込んだ。「それなら社説、天声人語を含めて紙面を変えて見せてよ」。
 
 
朝日記者の多数が憲法改正の必要性を認めているのであれば、今の朝日の紙面は一体どういうことか。考えとは反対の左翼的な論を張り、それを読まされる側が「朝日は左翼的だ」というのを保守の無理解と責めることに何の意味があるのか。批判する前に、まず朝日は自ら紙面を変えてみせよ。
 
 
このように本書は或る意味刺激的である。吉田調書の誤報及び吉田清治氏の慰安婦虚偽証言など、朝日が長年、問題報道を重ねてきたことについて、幾年もの間、朝日の社風の中ですごし、朝日の人事の洗礼を受け、朝日という企業の裏も表も知り尽くした数人の記者が物したのが本書である。
 
 
手練の記者の文章は読み易く、豊富な具体例が朝日の人間模様を見せてくれる。面白いが、興醒めでもある。「なんだ、批判している貴方も朝日の記者じゃないの」。そう感じる部分があったことは否めない。それでも、幾つか、朝日新聞への理解という点で非常に参考になった。
 

■訂正よりも出世
 
 
世紀の誤報とまで批判される一連の不祥事を正すために、慰安婦報道の検証には「第三者委員会」が、吉田調書報道では「報道と人権委員会」が、これらの2つの委員会の調査を受けて、朝日新聞立て直しのために「信頼回復と再生のための委員会」が設置されたが、この種の検証さえ権力争いに利用されていると有志記者は書く。
 
 
不祥事や誤報が発覚しても、朝日は訂正したがらない。訂正記事を出せば、記者及びその上司の後のキャリア、人事と給料に直接影響してくる。そのため、両者一体となって訂正回避に力を尽す、その典型が慰安婦報道だそうだ。
 
 
97年3月31日の紙面で朝日は、吉田証言の真偽は「確認できない」と報じた。少なくともあの時点で訂正し、謝罪出来ていれば、今日の朝日への信頼失墜は避け得たかもしれない。しかし、朝日は吉田氏の嘘を「確認できない」で済ませようとした。その心は、「これで『訂正』は回避できた、一件落着、というのが当時の関係者の暗黙の了解だった」と書いている。事実の報道や、虚偽報道の訂正よりも、出世のほうが大事だったのだ。
 
 
慰安婦報道に関して衝撃的な内部事情も描かれている。138頁、「取材班の目的は・攻め・」の部分だ。昨年8月5、6日の慰安婦報道の検証記事の当初の目的は吉田証言の信憑性を問うものではなく、「あくまで従軍慰安婦の『強制性』を検証し、『これまでの朝日の報道が間違っていなかった』ことを証明するため」だったという。
 
 
2012年12月の衆議院議員選挙を前に、日本記者クラブ主催の党首討論会で、当時まだ野党だった自民党総裁、安倍晋三氏が「朝日新聞の誤報による吉田清治という詐欺師のような男がつくった本が、まるで事実かのように」伝わっていったと、朝日を名指しで批判した。その安倍氏が首相に返り咲き、河野談話の検証が始まった。朝日はこれを朝日包囲網ととらえ、批判を座視できず正当性を示す必要が出てきた結果、「慰安婦問題取材班」が生まれたという。
 
 
驚くべき反省のなさである。道理で慰安婦報道に関して、なんの謝罪もなかったわけだ。慰安婦報道見直しのきっかけが、朝日の報道の正しさを証明して安倍政権に立ち向かうことだったという朝日流の考え方を、私たちは心に刻み込んでおきたいものだ。
 
 
本書で慰安婦問題を扱った第3章を執筆したのは辰濃哲郎氏で、執筆者中唯一人、「かつて一緒に仕事をした仲間を匿名で切り捨てることに、どうにも心の置きどころが安定しない」として実名を明かした。
 
■23年後に告白
 
 
92年1月11日の朝刊1面トップの記事、「慰安所 軍関与示す資料」は氏が書いた。その報道に内閣外政審議室は「蜂の巣をつついたような騒ぎ」になり、動揺した宮澤喜一首相は、1月16日の訪韓で韓国側に8回も謝罪の言葉を繰り返した。
 
 
このように日本政府を追いつめた記事について、辰濃氏は書いている――「ただし、この記事には決定的な誤りがある」。
 
 
記事の下につけた解説には、「慰安婦の約8割が朝鮮人女性」「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」などと書かれている。史実を見れば、慰安婦の8割が朝鮮人女性という点も、挺身隊=慰安婦という点も、8万人或いは20万人という数字も、全て誤りだ。
 
 
辰濃氏は「この点については謝罪させていただきたい」と書いた。日本軍が慰安所設置に関与したのは、悪徳業者を取り締まるなどの目的だった。そのことを解説せず、強制連行、挺身隊、20万人などという偽りの解説と共に紙面を構成したことがどれ程の悪印象を形成したか、朝日の慰安婦報道が日本全体をどのような不名誉の淵に突き落としたか、その負の影響を殆ど実感していないかのような書き振りで、23年後に告白されても困るのだ。
 
 
吉田調書の報道でも、朝日人の気質を表わす、これまた仰天話が出てくる。所長命令に違反して東電社員や作業員の9割が逃げたとの報道は、調書さえ入手して読めば、偽りだとすぐにわかる。にも拘らず、なぜ朝日はこんな記事を書いたのか。「これが他の新聞や雑誌がいくら考えてもわからない『謎』だった」と有志記者は書いたが、そのとおりだ。そして、こう説明した。
 

「この謎の回答は、極めてシンプルなものだった。彼らはそもそも、調書の一部を、自分たちの描くストーリーにあわせて恣意的に切り取ったつもりなどサラサラなかったのだ。要するに、彼らは『意図的に記事を加工した』という自覚さえ持っていなかった」
 
 
これが朝日だ。本書で朝日と朝日記者をよりよく知ってほしい。(週刊新潮)
 

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| 桜井よしこ | 20:42 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







仏週刊紙襲撃事件で世界が団結でもお寒い日中韓の「言論の自由」    桜井よしこ
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したフランスの政治週刊紙「シャルリー・エブド」をめぐる言論、表現の自由の戦いの激しさに、私たちは何を読み取るべきだろうか。

事件は1月7日に発生。シャルリー・エブド襲撃で風刺画家5人を含むジャーナリスト8人、全体で12人が殺害された。
 

11日には、パリで120万人を超える人々が、フランス全土で370万人が追悼大行進に参加した。オランド仏大統領を中心にメルケル独首相、キャメロン英首相など欧州連合首脳に加えて、ウクライナ大統領とロシア外相、イスラエル首相とパレスチナ自治政府議長などが、政治的立場を超えて腕を組み、横一列に並んでゆっくりと歩みを進め、強い連帯を示した。
 

編集出版を担う主要人物を失ったにもかかわらず、シャルリー・エブドは襲撃後初の号の発行部数を通常の6万部から、AFP通信によると、300万部へと大幅に増やした。
 

シャルリー・エブドには、フランスの左派系新聞「リベラシオン」が編集作業用のスペースを用意し、主要紙の「ルモンド」もテレビ局もフランス政府もおのおのの形で支援を提供した。フランス全体、そして世界が、言論、表現の自由へのいかなる弾圧も挑戦も許さないという立場で団結したのだ。
 

フランス革命は自由、人権、平等をうたった血の革命だったが、血の襲撃に直面して、大増刷し、しかもその最新号にはまたもムハンマドの風刺画を掲載するという、この不屈かつ大胆な反撃の精神はどこから生まれるのか。
 

明治大学教授の鹿島茂氏が1月12日の「読売新聞」にフランス革命の最大の敵はカトリック教会だったとして、「平和の第一原理は非宗教性(政教分離)にある。公の場に宗教は全く持ち込まない。シャルリー・エブドのイスラム教を含む宗教批判はその伝統に沿っている」と解説していた。
 

宗教を含めてあらゆる価値観からの自由を求めた革命は、農民暴動、王の処刑、独裁政権と恐怖政治などを巻き起こしながら、10年間続いた。このような歴史を持つフランスのいかなる宗教をも公然と風刺し、批判する価値観は、ムハンマドを聖なる預言者として一切の批判を許さないイスラム過激派と折り合うことはないだろう。
 

イスラム過激派からの血の襲撃は再び三たび起こり得るということだ。この状況下でシャルリー・エブドは立ち上がった。つまり、彼ら、そして彼らを支援するフランスのメディアおよびフランス政府の側には、文字通り、命懸けで自由を守ろうという決意があるということだ。
 

フランスでの様子を見ながら、私は日本と中韓両国における言論、表現の自由について考えざるを得なかった。中国が一党支配の下で言論、表現の自由を締め付け続けているのは周知のことだ。人間の自由を認めない遅れた国に対しては、こちらも覚悟を持って彼らの情報、謀略戦に対処するしかない。
 

韓国は民主主義国だと主張しながら、「産経新聞」前ソウル支局長、加藤達也氏の出国禁止措置をまたしても3カ月延長した。朴槿恵大統領の狭量と韓国司法界の思想的偏りの結果だと考えてよいだろう。
 

しかし、日本でも随分おかしなことが起きている。「朝日新聞」の元記者、植村隆氏が、慰安婦報道に関して名誉を毀損されたとして、西岡力氏と文藝春秋社を訴えたことだ。
 

かつて植村氏は元慰安婦のテープを入手し、スクープ報道した。それを批判した西岡氏も文春も再三、氏に取材を申し込んだが、氏は応じることなく司法に訴えた。
 
 
氏は元記者で言論人である。言論人なら言論の自由の原則に沿って堂々と反論すればよい。それを司法に訴えるのは、自ら言論の自由を規制するものでしかない。(週刊ダイヤモンド)
 

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| 桜井よしこ | 08:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







外交も戦争も全て情報戦が決める    桜井よしこ
お正月休みを利用して、以前からじっくり読みたいと思っていた本を読んだ。米国政治学会会長や米国歴史学会会長を歴任し、1948年に74歳で亡くなったチャールズ・A・ビーアドの・President Roosevelt and the Coming of the War, 1941・(邦訳『ルーズベルトの責任 日米戦争はなぜ始まったか』開米潤監訳、藤原書店)である。

ビーアド博士は614頁に上るその大部の書の中で、あくまでも冷静に正確に、ルーズベルト大統領が如何にしてアメリカを第二次世界大戦に参戦させたかを書いている。
 

ルーズベルトは1939年の独ソ不可侵条約締結以降、ナチスドイツとの戦争は避け難い、日本との戦争も回避し難いと覚悟していた。しかし、米国民と議会には根強い反戦・厭戦論が存在した。1940年の大統領選挙においても、攻撃を受けない限りアメリカは絶対に参戦しないと、自ら幾十回も繰り返した。公約違反はできない。結果として、彼は本音を隠し続けた。
 

ルーズベルトとハル国務長官は、国民と議会に対し、アメリカが戦争に向けて準備をしていること、1941年8月のルーズベルトとチャーチルによる大西洋会談ですでに参戦を決めていたことなど、おくびにも出さず、メディアを巧みに操った。
 

こうした事実を公文書、議会の議事録、報道記事など広範な資料に基づき証明したのがビーアドであり、アメリカが戦争に至った原因は、日独といった枢軸国の行動だけではなく、アメリカにもあるという事実の集大成としての本書である。
 

本書は、1948年4月に上梓されたが、彼の主張は反愛国主義であると非難され、不買運動まで起きた。アメリカの歴史学会会長としてのビーアドの名声も地に落ち、彼は友を失い、孤立した。
 

それでも本書はアメリカで版を重ねて読みつがれてきた。本書を貫く冷静さ、事実に沿ってアメリカ外交の実態を描き出したビーアドの知的誠実さゆえであろう。
 

■事実の捏造まで
 

ビーアドの書は第2次世界大戦に関して私たちが日中戦争もしくは日米戦争に焦点を当てすぎる余り、ともすれば注視しないで終わりがちなヨーロッパ戦争の重要性に目を向けさせてくれる。
 

チャーチルをヒトラーに勝たせること、イギリスの勝利がアメリカの国益であると確信したルーズベルトが、チャーチルとの意思の疎通を重ねて参戦に傾いていく様が、ビーアドによって明らかにされていく。
 

ビーアドは取り立てて親日であるわけではないが、歴史を見詰める彼の目の公正さは、枢軸国の一員として絶対悪の存在とされてきた日本の評価を多少なりとも変える力を持つものであり、私たち日本人こそ、この書を読むべきなのだ。
 

参戦すべきだと確信していながら、前述のように参戦できない要素に縛られていたルーズベルトは、アメリカが攻撃を受けてやむなく参戦に踏み切ったという形を作るために、情報隠しを超えて、事実の捏造まで試みた。たとえば大西洋でのアメリカ駆逐艦「グリアー号事件」である。
 

事件は1941年9月4日、国籍不明の潜水艦が、アイスランドに向かうグリアー号を攻撃したというものだ。ルーズベルトは9月11日、ラジオ放送で「ドイツの潜水艦が先にアメリカの駆逐艦に発砲した」、「警告もなしに」「計画的にアメリカ艦を沈没させようとした」と、公式に発表した。
 

ドイツ側はルーズベルトの発表を全否定し、アメリカ上院海軍委員会が詳細な調査に乗り出して、以下のことを明らかにした。
 

グリアー号はイギリス機から、約10マイル先の海中を潜水艦が航行中と教えられ、その追跡を始めた。追尾は3時間以上続き、イギリス機が爆雷4発を投下、対して潜水艦は魚雷を1発発射し、グリアー号が爆雷8発で応戦した。潜水艦はもう1発魚雷を発射、2時間後、グリアー号は再び潜水艦を見つけ爆雷攻撃をかけたという。海軍委員会のこうした詳しい調査結果は、ルーズベルトの説明が不正確かつ不適切であることを証明してしまった。
 

このあとも、米海軍艦「カーニー号事件」(41年10月17日)をはじめ幾つかの「事件」が起きた。ルーズベルトは、対ドイツ宣戦布告の正当な根拠を創作しようと試み続けたわけだ。しかし、海軍委員会やメディアの調査によって彼の企みはいずれも自壊し、このとき、ルーズベルトとハルは日本に特別の注意を向け始めたと、ビーアドは書いている。
 

ビーアドは、大多数のアメリカ人にとって最大の敵はドイツのヒトラーであって日本ではなく、むしろ対日戦を避けることでドイツ戦に軍事力を集中できると考えていたと説く。
 

■絶対にのめない条件
 

だが、ルーズベルトはそうではない。彼は41年7月には在米日本資産を凍結し、通商を停止し、日本を追い込みつつ、先述の大西洋会談をチャーチルと行ってその後、連邦議会指導者に、「武力戦争」になる最大の危険は極東にあり、「日本が新たな武力侵略を始める可能性は五分五分」と示唆している。
 

日本に事実上の最後通牒であるハルノートを突きつけたのは41年11月26日だが、そのときも、ハルもルーズベルトも、アメリカが日本を追い込んだことは語っていない。ハルノートの内容が、それ以前の7か月にわたる日米交渉の内容をはるかに超える厳しいものであり、日本政府は絶対にこの条件をのめないと彼らが確信していたことも隠し通された。
 

ビーアドは記述している。ハルノート手交の翌日の11月27日、米陸軍省がアメリカ前戦基地司令部あてに極秘の警告を発したのだが、ルーズベルトの指示で「戦争が回避出来ないのであれば、合衆国は日本に最初の明白な行動に出ることを望む」という一項が加えられた。
 

このことに関して、春日井邦夫氏の大部の書『情報と謀略』(国書刊行会)には、ハルノート手交当日、ルーズベルトはチャーチルがアメリカに派遣した情報マン、W・スチーブンスン(暗号名イントレピッド)に、日本との交渉は失敗に終わると伝え、イントレピッドは翌27日にその情報をチャーチルに伝え、軍は2週間以内に行動を開始すると打電したと指摘している。
 

ビーアドの表の情報と、春日井氏のいわば裏の情報がピタリと重なるのである。ルーズベルトは真珠湾攻撃を言葉を尽くして非難したが、それが結局彼の待ち望んでいたアメリカ参戦への「口実」となったことは、ビーアドの書からも明らかだ。
 

情報戦の凄まじさ、恐ろしさを実感する。いま、日本は中国の情報戦略で深傷を負わされつつある。国の命運をかけて情報戦を戦わなければならないと思うゆえんだ。(週刊新潮)
 

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| 桜井よしこ | 08:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







原油価格急落で窮地のロシアを他山の石にすべき日本の現状     桜井よしこ

ロシアのプーチン大統領が深刻な苦境に陥り、経済に構造的問題を抱える国の弱さが露呈された。そのことはしかし、膨大な財政赤字でもなお、経済の構造改革に抵抗し、岩盤規制を打ち破れない日本にとって、他山の石でもある。


<strong>ロシア経済が自立できない最大の要因はものづくりができず、原油、天然ガス、木材などの第一次資源輸出によって支えられている発展途上国型の経済にとどまっていることだ。


原油輸出への依存度はとりわけ高く、政府歳入の4割を占める。その原油価格が大幅かつ急激に下落中である。2014年6月には1バレル107ドルだったが、12月10日には70ドルを割った。ロシア政府の予算は1バレル100ドルを前提に編成されており、60ドル台突入は政権基盤を激しく揺るがす。


ところが、12月16日、原油価格はさらに50ドル台に急降下した。これはロシアに対する西側陣営の一致団結した経済制裁の結果である。</strong>


ウクライナからクリミア半島を奪った後も、ロシアはウクライナとの国境に万単位のロシア軍を展開させ、ウクライナ東部の州をうかがっている。ロシアは否定するが、ウクライナ国内の親ロシア派への実質的な支援も続く。


オバマ米大統領はウクライナ問題への軍事介入をいち早く否定したが、米国でのシェールガス生産が実質的なロシア制裁となった。シェールガスが比較的安価で大量に生産され始め、世界の原油価格が下がり始めたときに、世界最大の産油国サウジアラビアが減産を否定した。


12月16日の原油価格大幅下落は、石油輸出国機構(OPEC)加盟の一部の国が緊急会合の開催を求めたのに対し、アラブ首長国連邦のエネルギー担当相がその必要はないと述べ、OPECが「原油価格に関する目標値はない」との考えを公表したことが直接の引き金であるのは明らかだ。


サウジアラビアを軸とするOPEC諸国が事実上、もっと価格が下がっても許容する、当面減産はないと表明したわけだ。この強固な意思表明はウクライナ領土を力で奪い、国民を弾圧し続けるシリアのアサド大統領や核開発疑惑のイランを支援し続けることは許さないという決意でもある。そのことをロシアに分からせるために、中東の産油大国らが米国と協力してロシアの泣き所を突いたのだ。


米大統領経済諮問委員会のファーマン委員長は12月16日、「ロシア経済の変調は(ウクライナ問題など)ロシアが国際ルールに従わなかった結果だ」と述べた。オバマ大統領は対露経済制裁の強化を可能にする法案に12月第3週に署名する見通しである。その一方でケリー国務長官は、ロシアがウクライナ問題で「建設的な行動を取る兆候がある」との見方を示した(「産経新聞」12月18日)。


<strong>第一次資源の輸出に依存するロシア経済の脆弱性故に、プーチン大統領はいま、西側に屈服せざるを得ない状況に立つ。経済制裁で西側社会がロシアの蛮行を阻止できるのはこの上ない朗報だ。しかし、立場が入れ替わった場合はどうか。


強大な軍事力を備える中国は、自らが主導する金融機関や貿易圏を創設しつつ、侵略を続けている。世界の国々を、軍事力だけでなく経済、金融の力で中国に従わせる仕組みをつくっているのである。そうした中国に対して、日本は急いで軍事力のみならず、経済力においても強い国へと再生しなければならない。


そのためにアベノミクスの成功は絶対に欠かせない。岩盤規制を打ち破り、経済成長を促し、企業の力を強化し、働く人に還元していくことで揺るぎない国家基盤をつくることを、観念だけでなく実行で示したい。企業、業界、日本人全体が進取の気性で経済改革を進めるときだと思う。</strong>(週刊ダイヤモンド)


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| 桜井よしこ | 17:45 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







「弱い日本」を望む米国の反日言説    桜井よしこ
ペリー率いる黒船4隻は砲艦外交でわが国に開国を迫ったが、その後、日米関係はあからさまな敵対関係に陥ることなく基本的に友好関係を維持し、交易を拡大させた。明治38(1905)年、日本が日露戦争に勝ったとき、セオドア・ルーズベルト大統領は日本の勝利を喜び、ポーツマスでの講和条約の交渉を後押しして、ノーベル平和賞を受賞した。

これはしかし、表の出来事である。表の動きと同時進行で、アメリカは対日警戒心を抱き始める。日本を太平洋における仮想敵と位置づけ、いつの日か日米は戦うという前提で、明治39(1906)年には「オレンジ計画」と呼ばれる対日戦争計画を立案した。

同計画は、議会で立法化されたわけでも大統領が署名し正式に承認したわけでもないが、米海軍将校の遺伝子に組み込まれるまで深く研究され、改善を加えられ、完成された。この対日戦争計画が、日本が対米戦争を始める35年も前に作成されたことを見れば、アメリカの戦略の深さを思い知らされる。

日本への強い猜疑心と警戒心から生まれた同計画だったが、実はその発端は日本人への人種差別だったと、エドワード・ミラーの『オレンジ計画─アメリカの対日侵攻50年戦略』(新潮社)に明記されている。


明治24(1891)年から明治39年の間にカリフォルニアに渡った数千人の日本人移民は、白人社会の人種差別を受けた。差別を煽ったのはメディアだったが、とりわけ「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)はその先頭に立った。

たとえば1906年12月16日の紙面には、次のような記述が見える。

・日本人は地味で小柄で褐色で、我々のもとに召使いを送り出す人種だ。

・日本人と中国人とでは、はっきり言って中国人の方が服装にしても一般的な伝統にしてもはるかに好感が持たれている。

・日本人は日露戦争後、並はずれてうぬぼれるようになり、中国人と一緒に住もうとしない。

・アジア人は劣等人種にとどまらなければならず、それが気に入らないのであれば米国に来てはならない(『アメリカの戦争』田久保忠衛、恒文社21)

■事実無根の主張

このような偏見と差別思想の報道に世論は刺激され、事態は緊迫した。それがオレンジ計画策定へと米海軍大学の背中を押したと、当の海軍大学資料に書かれている。

それから35年後の日米開戦の原因をNYTの報道に求めるつもりはないが、同紙の報道が日米関係悪化のひとつの要因となったのは確かだろう。さて、その同じ新聞が、今も不条理な対日非難を展開しているのだ。

12月2日、マーティン・ファクラー東京支局長が「戦争の書き直し、日本の右翼が新聞社を攻撃」と題して、一方的な日本叩きを展開した。慰安婦問題での日本国内の朝日新聞批判を「右翼」「超国家主義者」の行動と断定し、植村隆氏を犠牲者として描いた。ファクラー氏は「植村隆が記者として世に出た記事を書いたのは33歳の時だった」「ジャーナリズムから引退し、56歳のいま、彼は右翼政治勢力のターゲットになっている」と同情するのだ。

その上で、「安倍首相とその政治的仲間は朝日の悲劇を待ちに待った好機ととらえ、数万人の韓国などの国々の女性たちを日本軍の性奴隷として強制したという国際社会の定説(の否定)を狙っている」とも主張する。

続いて4日、同紙は朝日批判に対する批判を社説に格上げした。「日本における歴史のごまかし」と題し、「日本の右翼政治勢力が安倍政権に奨励されて」「第二次世界大戦時の恥ずべき歴史を否定する脅迫キャンペーンを展開中」と非難し、安倍首相と日本の右翼が歴史修正を目論んでいると言及した。

NYTは、植村氏が金学順氏の物語を捏造したことも、慰安婦とされる女性たちの証言が根拠を欠いていることも指摘しない。同紙によるこの種の一方的な報道は慰安婦問題に限らない。9月29日に掲載された、アメリカの歴史学者ハーバート・ビックス氏の「ヒロヒトは操り人形ではなく黒幕だ」の記事も同様だ。

ビックス氏の昭和天皇と日本、さらには安倍政権への非難は、如何にしてこれほど偏向し得るのかと思うほど知的公正さを欠いている。氏は「ヒロヒト」と呼び捨てにし、政策決定に天皇が介入する制度やイデオロギーを昭和天皇が体現していたと主張し、「戦後、アメリカ型の憲法が彼の統治権を剥奪したあとでさえも、政治に干渉し続けた」と甚だしい事実無根の主張を展開する。

「ヒロヒトは臆病な日和見主義者で、何よりも皇室の維持に熱心だった」とも書いているが、根拠は全く示していない。昭和天皇が立憲君主として憲法を守り、政治介入をどれほど誠実に回避したかなど、全く見ていない。研究者の風上にも置けない誹謗中傷を書いて、氏は恥じない。その主張を載せてNYTも恥じない。


■親中的姿勢と背中合わせ

同紙はなぜ悪質な言説を繰り返すのか。彼らの日本批判が、アメリカの対日観の一部であるとはいえ、今も根強く存在する日本蔑視の主張の反映であることを歴史は物語っている。

前述のようにオレンジ計画は、それまで弱小国だと見做していた日本が日露戦争で勝利し、日本人がアメリカに移住し始めたとき、彼らの強い警戒心として形になった。対日警戒心は、1922年のワシントン会議で日英同盟を破棄に追い込み、日本を孤立させる原動力ともなった。

無論、私は日米関係の悪化がアメリカだけの責任だとは思わない。1915年に日本が中国に突きつけた21か条の要求はアメリカの猜疑心を深め、アメリカに元々存在した親中反日の気運を大いに強めたと思う。

それでも、当時のアメリカの空気は必要以上に日本に厳しかった。戦略家、ジョージ・ケナンも「(米国の)外交活動の大半は、他の諸国ことに日本が、我々の好まない特定の行動を追求するのを阻止しようという狙いをもっていた」と書いたほどだ。


そして大東亜戦争に敗れた日本に、アメリカはどう対処したか。現行憲法に明らかなように、日本を自主独立の、強い国には二度とさせないという連合国軍総司令部(GHQ)民政局に代表される思想で、徹底的に変えようとした。

彼らは日本が少しでも気概を取り戻そうとしたり、英霊に敬意を払おうとしたりすると非難する。慰安婦、天皇、靖国参拝や憲法改正への非難はすべて同根なのだ。

日本を、自主独立の気概なき弱い国のままにするメカニズムとして現行憲法を作った人々の考え方は、現在も政界、学界、言論界、経済界に至るまで広範囲に存在する。彼らの対日姿勢はまた、過度と思えるほどの親中的姿勢と背中合わせである。日本は、この複雑な世界を賢い戦略で生きのびなければならない。(週刊新潮)

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| 桜井よしこ | 00:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







膨張「中国」への戦略こそ選挙の争点     桜井よしこ
12月14日の衆議院議員選挙に向けて、アベノミクス議論が盛んである。経済成長を確かなものにすることは無論大事だ。しかし、もうひとつの国家の基本、国防力についての議論が殆どないことに、私は大きな危機感を抱いている。とりわけ中国の動きを見ると背筋が寒くなる。

過日、北京でのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議では、軍事力を恒常的に強化し、経済と金融の力で周辺諸国のみならず世界を搦めとろうと攻勢に出始めた習近平主席が、アメリカのオバマ大統領を圧倒する存在感を示した。

11月28、29日の両日、北京で開かれた中央外事工作会議での演説で、習主席が遂に本音と思われる大胆な発言をした。世界の秩序は中国が創ると、事実上、宣言したのである。

中央政治局常務委員会(日本の内閣に相当)の全員と党、軍の幹部らを前に行ったこの演説は、中国国営テレビ局のCCTVによって報道された。その中で習主席は2012年の第18回全人代以降、中国は着実に発展を遂げてきたとして、「我々は新型大国関係の構築に努力した」と胸を張った。

アメリカとの新型大国関係を築き上げたと明言したのに続いて、習主席は「多極化へと向かう(国際社会の)流れは変わらないと認識すべきである」と語ったのだ。

アメリカによる超大国一国体制が終わりに近づいており、その流れはもはや変えられない、新しい超大国は中国であるとの自負を示した発言である。

演説の中で習主席は「近隣外交では友好、誠実、相互利益と開放性を実行した」と語ったが、以下の部分は日本を念頭に置いたものと考えてよい。

「近隣諸国との関係における不安定要因を我々は十分認識すべきである」「変化における中国の最大の好機は、着実な(経済)発展と軍事力の強化によってもたらされる」

■朝貢が寛容な制度?

尖閣問題への対応をはじめ、安倍政権の積極平和主義と呼ばれる対中外交は、中国にとっては大いなる脅威でもあり、不安定要因でもあるのだろう。そのような安倍首相の外交に対して、経済と軍事力で中国の道を貫くと言っているのか。習主席は中国は「偉大なる中華民族の復興期に入った」、「大国としての役割に基づいて明確な外交を打ち立てる」と強調し、「我々は平和的発展を求めるが、正当な権利と権益は放棄しない。

中国の核心的利益が損なわれるのは許さない」と、その目指すところを明らかにしている。有り体にいえば、中国は要求を取り下げない、主張を取り下げるべきは周辺諸国だという勝手な主張である。

習演説では強面と微笑が交互に出現する。「中国の領土の主権、海洋権益と国家の統一を断固として守り、領土及び島嶼の紛争を適切に処理する」と強い調子で語る一方で、他国との友好、誠実、相互利益、包容性が大事だと繰り返す。

「中国のソフトパワーを強化し、中国の善き物語を伝える」「近隣外交では中国と近隣地域を運命共同体とする」などの表現は、大中華圏の盟主のような発言にも聞こえる。

ちなみに、中国では、かつて近隣諸国に強要した朝貢や冊封体制は決して残虐な力による支配ではなく、朝貢国の貢ぎ物に数倍する富や財を下賜する穏やかで寛容な制度だったとする研究が始まっている。中国に屈服し、従属し、その支配さえ受け入れれば、中国は寛容な態度で接してやるという宣伝のための研究であろうか。

習主席が強調するウィンウィンの関係、友好、誠実、包容性などの美しい言葉は21世紀の中華大帝国を実現するための方便であり、それを「新型国際関係」と表現する。

新型国際関係の原則は、「内政不干渉」「発展の形態、社会制度の在り方については各国毎の選択があるべきだ」というものだ。アメリカをはじめ中国と異なる価値観を有する国の干渉は、断固排除するということだ。

だが、恐るべきは中国共産党政権の一貫性である。彼らの外交の基本路線は、目標に向かって見事といってよいほど、ぶれない。彼らが核心的利益と主張する東シナ海のわが国の尖閣諸島に関する主張と行動がそのよい例である。

中国は、尖閣諸島周辺に豊富な資源が埋蔵されている可能性を国連のアジア極東経済委員会(ECAFE)が指摘すると、71年に初めて領有権を主張した。78年に小平が日中平和友好条約批准書の交換のために来日して、記者会見で尖閣問題は「10年棚上げしても構わない」と語ったが、日本側との棚上げの合意は実際にはなかった。14年後の92年、中国は国内法として「領海及び接続水域法」を一方的に制定した。同法には、尖閣諸島は中国領土であると明記されていた。

その都度、日本が抗議しても、または親善友好の精神に基づいて多額のODAを与えても、中国は一向に主張を変えないのである。日本の抗議も友好も、彼らの心には響かないのだ。

■国防動員法を施行

そして2010年3月、中国は海島保護法を施行した。同法は大陸沿岸付近の島嶼の乱開発を制限し、生態系を守り、国家海洋権益を保護するという美しい目的を掲げた法だが、無人島や周辺海域の資源を統一管理することで中国の海洋強国としての地位を強めるという野心も透けて見える。

野心を裏づけるように、中国は同法施行からわずか4か月後、今度は国防動員法を施行した。国防上の危機が発生して動員令が発令されれば、海外にいる中国籍の者を含め、中国人はそれに従って国防の義務を果たさなければならない。日本に住む70万人近くの中国人は中国共産党政府の命令に従って、日本国内で立ち上がるということだ。有事の際は70万人が日本に対抗して行動を起こしかねない、恐ろしい法律が現存するのである。

こうした流れの延長線上に、今回の中央外事工作会議がある。習主席の演説の最大の重要点は、中国は新しい超大国で、世界は中国の偉大なる民族の復興の夢を理解し、受け入れるべきだということだ。これは、まさに世界史的な大変化を起こすものである。

中華主義剥き出しのその大戦略で、最も敵視されているのが日本である。彼らの対日敵視政策は、単に尖閣諸島や沖縄を奪うことにとどまらない。歴史問題を利用して日本を貶め、日本人の心を打ち砕き、屈服させ、従属させようというものである。

そのような国が隣にいることを忘れてはならない。選挙の争点は、こうした中国に対処する力を如何にして強めるかということだ。集団的自衛権及び憲法問題を横に置くことは無責任にすぎるのである。(週刊新潮)

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| 桜井よしこ | 15:44 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







憲法改正、今が最後のチャンスだ     桜井よしこ
12月14日の衆議院議員選挙に向けて、「朝日新聞」が空論を展開中だ。

安倍晋三首相がアベノミクスを選挙の争点に掲げたことに疑義を唱え、11月22日の社説で「首相が長期政権を確保したうえで見据えているのが、憲法の明文改正だ」と書いた。翌日の「天声人語」は、「(争点は)本当に『アベノミクス』なのか、実は憲法への姿勢ではないのか」と書いて、争点を疑えと読者を叱咤した。

選挙でどの政策を目玉として訴えるかは政党の戦略・戦術であり、また有権者が政権の政策全体を見詰めるのも当然で、ここには憲法改正も入る。他方、朝日が憲法問題を争点として論ずるなら、自民党が憲法改正を目論んでいると非難がましく推測するより、各党の公約をきちんと論評することが大事ではないか。

自民党の政権公約には、改正原案を国会に提出すると、きちんと書いてある。前回の選挙でも憲法改正は自民党の公約だった。憲法改正を目指していることを明確にしているのであり、それ自体、何ら問題はない。

問題があるのは、むしろ民主党のほうだ。政権政党だったときも現在も、民主党は何ら明確な政策を打ち出していない。「未来志向の憲法を構想する」と書いているが、党内意見がバラバラで党の案をまとめることもできなかった。憲法については誤魔化すしかない民主党にこそ、疑問をぶつけるべきだ。

公平な批判も公正な論評もできない朝日に読ませたい本がある。田久保忠衛氏の『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』(並木書房)である。本書を読めば、憲法改正を目指すことが重大な懸念だと眉をひそめる朝日の考えが、海にも空にも脅威が満ちている現在の世界で、どれほど非常識な、周回遅れの認識であるかがわかる。

■噴飯物の幼稚さ

11月20日、アメリカの共和、民主両党で構成する「米中経済安全保障調査委員会」が年次報告書を発表した。中国の軍事力増強に強く警鐘を鳴らした同報告書は、「習近平主席に高いレベルの緊張を引き起こす意思があるのは明らか」と非難した。紛争、或いは戦争を引き起こす可能性が濃厚と断じられた習主席の下で、中国海軍の潜水艦及びミサイル搭載水上艦の数は2020年までに351隻に達する。戦力増強が中国に外交上の優位を許し、アメリカの対中抑止力、とりわけ日本に対する抑止力を低下させる、と明記されている。アメリカの日本防衛能力は下がり続けるというわけだ。

オバマ大統領は中国に位負けしたのか、安全保障においても金融・経済戦略においても対中消極姿勢が目立つ。それが中国の膨張政策に拍車をかける。11月25日、尖閣諸島周辺の日本の領海に中国の公船3隻が入り、また接続水域には6日連続で侵入している。小笠原、伊豆両諸島海域に展開した220隻余りの中国漁船の内、居残っている船は海上保安庁の取締りにも拘らずサンゴ密漁を続行中だ。小笠原の海から大島近海まで北上した中国漁船もある。南に下った硫黄島周辺の海で漁をする中国漁船群を、小笠原村の漁船が見掛けてもいる。

この事態に、海保も海上自衛隊も有効な手を打てていない。外国勢力の領海や接続水域への侵入は、普通の国の場合、コーストガードや海軍に直ちに阻止され、拿捕され、悪質な場合は攻撃を受ける。

しかし、海保は中国船が攻撃をしてこない限り、基本的に手を出せない。武力攻撃に至らないグレーゾーンと呼ばれる事態には全く対応できないのである。この種の安全保障体制の大きな穴を埋めるべく、安倍政権は努力してきた。その一部が集団的自衛権行使容認の閣議決定だ。

朝日は11月22日の社説で同閣議決定を非難した。民主党はこの閣議決定を撤回するとの公約を掲げた。では、朝日は、サンゴ密漁船にどう対応すべきだと言うのか。11月6日の社説にはこう書いている。

「違法行為をさせない責任はまず中国側にある」「尖閣諸島沖に中国漁船が増えているのも気になるところだ」「漁船は自在に境界を越え、ときに外交問題化してしまう。トラブルが拡大したり繰り返されたりせぬよう、中国側は考えなくてはならない」

噴飯物の幼稚さである。中国はすでに何十年間も漁船、公船、軍艦を巧みに使い分け、他国の海や島々をサラミを切り取るように少しずつ奪ってきた。中国の狡猾な戦略、戦術、侵略の実態を、朝日社説子は研究していない。


「トラブルが拡大したり繰り返されたりせぬよう、中国側は考えなくてはならない」などと、どこにも通用しない社説を掲げる新聞だから、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回するという民主党の公約を疑問視することもないのだろう。

鳩山由紀夫氏を連想させるこの種の社説はなぜ生まれるのか。田久保氏は前述の『憲法改正〜』の中で「日本のマスメディアには国際情勢は眼中になく、島国の中での反安倍キャンペーンにうつつを抜かしているところが少なくない」と喝破した。

■「吉田ドクトリン」への誤解

なぜ、朝日は島国の視野に取り憑かれ、うつつを抜かすのか。半世紀以上、国際戦略を研究し、日本の立ち位置と日本国憲法の異常を指摘し続けてきた田久保氏の説には説得力がある。氏は書いている。

戦後の日本社会に浸透したのが憲法9条への盲信であり、「できれば軍事力なしで、必要なら最小限度の軽武装に徹して、ひたすら経済繁栄を目指すという『軽武装・経済大国の道』を選んだこと」が、日本を異常の世界に安住させてきた価値観だ。このような考え方を「吉田ドクトリン」と呼んで後生大事にしたのが日本だと指摘する。

吉田茂・元首相は戦後の貧しい日本には軽武装による経済繁栄が必要と考えたが、時が来たら再軍備し、軍国主義にならない民主的な軍隊を持つことをマッカーサーと合意していたと、田久保氏は、吉田氏の私的顧問を務めた辰巳栄一元陸軍中将の言葉として伝えている。永遠に軽武装で経済のみを追い求める吉田ドクトリンなど、存在しなかった。にも拘らず、日本社会はこの言葉が撒き散らした非戦主義の惰眠を貪った。

氏は、日本には戦後3回、憲法改正の好機があったと指摘する。だが、その度に日本全体が朝日のように、見るべき事実を見ず、察知すべき危機を察知せず、好機を逃した。

いま、私たちは、アメリカの外交、安全保障政策の後退、中国やロシアの膨張主義と力による支配の強化に直面している。大きく変化する世界情勢に適応できない国は衰退する。この危機は、日本にとって憲法改正の4回目の好機なのだ。なぜ、憲法改正が必要か。現行憲法の屈辱的な成り立ちから、一気に読ませるこの書で明らかになる。私はこれを、とりわけ朝日の社説子、天声人語子らに読んでほしいと思う。(週刊新潮)

杜父魚文庫
| 桜井よしこ | 14:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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