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温家宝首相の中東訪問は「資源外交」だけだったのか? 宮崎正弘
人民元基軸通貨戦略の中東版は原油、ガスとインフラ建設の通貨スワップ。かつて米国がサダムフセインを倒した理由のひとつはイラクがユーロによる決済をしはじめて、それが中東諸国の金融システムに伝播したからだとされた。

こんにちでは中東の資源決済の一部は明らかにユーロである。ロシアと西欧諸国とのガス貿易決済はユーロである。

旧正月を前にして中国の温家宝首相の中東訪問が注目された。一般的報道ではサウジ、カタール,UEAで資源外交を展開したという分析しかなされなかった。

同首相は1月14日から六日間の日程で中東三ケ国を回った。しかし表面的報道の舞台裏で何があったか?

サウジアラビアで温家宝首相はナエフ皇太子と会談した。ナエフは次期国王に最有力の位置にいるサウジ最大の政治的実力者。

中国の輸入石油の筆頭はサウジである。二位はイラン。両国は具体的な経済協力の詳細を詰め、とくに具体的案件として、中国がサウジアラビアの鉄道建設などインフラ整備プロジェクトへの参入を表明し、就中、合弁の精油所建設で合意したことは注目される。
 
温家宝首相はその後、カタールを訪問した。カタールはリビア、シリア問題では中国の態度とは反対の立場を取るが、政経分離、それはそれ、ビジネスはビジネスと割り切ってプロジェクトの具体策を話し合った。

欧米を驚かせる合意内容が飛び出した。中国はインフラ整備への投資のほか、浙江省泰州に建設する石油製油施設をカタールとの合弁事業とする。

石油産業の下流インフラ建設に中国が積極的協力をする。カタールの原油輸入に関しては長期的取り決めを締結する。
 
▼長期戦略は中東からの資源輸入決済を人民元でおこなうことだ

そして。これらの決済の一部を人民元とカタールの通貨でおこなう。つまり通貨スワップである。通貨スワップは一定の枠内で、従来の決済通貨である米ドルを経由しないうえ、特別の為替レートを採択する。

直前のUAE訪問でも、中国はアラブ首長国連邦とのあいだに55億ドルの枠を設けて、通貨スワップの合意をなした(アジアタイムズ、1月24日)。

湾岸諸国協力会議(GCC)加盟国は、ちなみにサウジアラビア、UAE、クエート、バーレーン、カタールである。これらの国々はいずれもイスラム国家だがスンニ派の穏健派であり、シーア派のイランとは政治的に対立する。

にもかかわらず双方いずれもが政治的立場を度外視してビジネスを優先している実態が浮かび上がった上、中国の原油戦略と通貨戦略が深く絡み合った湾岸外交のしたたかさが顕著になったのである。
 
欧米の対イラン制裁にこれほどあからさまに反対し、かつ対イラン敵対関係のGCC諸国と綱渡り的な資源と通貨スワップを結ぶという早業と老獪さ、日本の政治家と外務官僚にこの中国の芸当が出来るかな。

この稿を書き終えて、さて臨時ニュースはといえば、二月十四日、習近平の訪米を伝えた。習は公式訪問、ワシントンでオバマ大統領と会談するほか、アイオア州、カリフォルニア州を訪問する。

この時期にオバマ政権が習訪米を促したのは台湾総統選で現状維持候補が当選し、当面東アジアにおける危機は北朝鮮の暴走くらいになったとの判断、十八回党大会で総書記内定という前の段階で、米国が習の次期主席をエンドーズしたかたちとなる。

杜父魚文庫
| 宮崎正弘 | 13:21 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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