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終焉を迎えたユーロが明らか  宮崎正弘
週末にギリシア救済案がEU主要会議でまとまっても、結論は十一月のG20。ユーロの終焉はいまや明らか。問題はギリシアが何時、離脱するか、だ!

事態は三年前のリーマンショックより、はるかに深刻である。

第一にドイツは国内事情により、メルケル連立政権の基盤が揺らぎ大胆なギリシア救済手段を執れない。メルケル首相の指導力は急速に陰ってきた。

第二に米国は自国のリセッションで欧米協調路線に亀裂が生じており、ガイトナーがユーロ加盟国会議へ出席しても「批判する前にてめえ(米国)の経済安定が先だろう」と言われる始末。米国の失業は深刻であり、他人の難題に関心がなく、ティーパーティは、ややもすればやけくその孤立主義路線だ。

第三に独仏蜜月といわれたフランスでもサルコジ与党は選挙に連敗中。サルコジのエリート主義的政治には限界が見えている。

第四にいつもアテにされていた財布=ニッポンにはカネもなく政治的決断ができる境遇は皆無。中国は最近「ユーロ債購入はない」と否定的だ。

第五に世界第四位の外貨準備を誇るロシアは、ユーロ救済にまるで関心がない。BRICksのほかの加盟国とてインドは外貨準備不足、ブラジルは金利高に悲鳴を上げ、要するに救済の主役にも脇役にもなりえない。

つまりユーロは終焉を迎えたのだ。

「蟹の横ばいのようにユーロは週末に向かって緩慢に歩いている」(エコノミストのケン・コーティス<TIME、10月3日号>)。

▲IMF政治も終わりの始まり?

ラガルドは人気があるが政治力がない。ラガルドは女性初のIMF専務理事。フランス人。IMFがギリシア救済の主役ではないが、欧州会議との共演者。これからも重要な役目を果たす。

IMFへの発言力を急激に強めた中国は「ユーロ債購入により協調する」と温家宝首相が発言したが、人民銀行副総裁は「もうユーロ債購入はない」と否定した(9月25日)。意見のまとまりがないようである。

「ユーロは死への旅立ち」と不吉な予告を平然と口にするのはポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞)だ。

「そもそもユーロの発足時にドイツの債務レートもギリシアもスペインも同レベルになると錯覚したのが投資家の間違い。ドイツがインフレになれば、他の国はデフレに悩むうえ、欧州中央銀行は金利政策のタイミングをつねに読み違える」(9月26日、ヘラルドトリビューン)。

「ユーロ加盟国で基盤の弱い国が投機の対象となり、財政金融政策の強化、救済協調の整合性がないと、いずれユーロは崩壊し、それは世界経済に巨大な悪影響をもたらすであろう。ユーロの動きには本当にびくびくだ」とクルーグマンは辛辣に続けた。

もっとはっきりとドイツの離脱を薦めるノーベル経済学賞受賞者は、米コロンビア大学教授(経済学)のジョゼフ・スティグリッツだ。

かれは言う。「欧州単一通貨ユーロが破綻する際は、ドイツがユーロ圏を離脱する方が、脆弱(ぜいじゃく)な高債務国が離脱するよりも事態収拾は容易だ」

スティグリッツ教授は続けて、「ギリシャがユーロから離脱すれば、同国通貨(ドロクマ)の価値は低下するが、ドイツが離脱する場合、価値が高騰するであろうドイツ・マルクで債務を支払えばよく、対応は非常に楽になる。ユーロが最期を迎えるとすれば、欧州の人々への影響を最小限に抑えつつ、どのようにそれを成し遂げるかが問題だろう」

▲いずれにせよ、当面の難題はユーロの行く末

『タイム』最新号(10月3日号)はユーロ危機、最悪のシナリオと危機回避のシナリオを描いて次のように言う。

A ユーロ崩壊のシナリオ

ギリシア債務不履行(デフォルト) → 社会不安 → ギリシアがユーロから離脱→ ギリシア債権を保有する銀行に取り付け騒ぎなど、新規貸し出し不能 → 信用不安→ 金利高、失業増大 → 資金逃避(金暴騰、円さらに独歩高) → 市場崩壊 → 世界恐慌の危険性が高まる

B ユーロ危機回避のシナリオ

ギリシアがユーロから離脱 → 同時に通貨ドロクマ回帰、為替レートを格安にする → 輸出競争力がうまれ、ギリシア経済が回復 → ギリシア金融システム再建のため追加融資 → ドイツがEU全体の金融システム正常化に最大の努力 → イタリア、スペインに追加融資 → ドイツさらなる安定化のためユーロ圏経済の協力体制を強化 → 市場安定 → 世界経済安定化へ

ともあれ世界経済は極めて深刻で、80年ぶりの世界恐慌の入り口に立っている。このような時にも、日本はなぜか、オザワとかフクシマとか、リアルな状況から乖離した非現実的論議が続くようである。

杜父魚文庫
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