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高速道路無料化を根本的に見直せ  桜井よしこ
国交省は2月9日、新たな高速道路無料化の社会実験区間を発表した。昨年度の区間を継続する一方で、6月から時間帯や車種を問わない無料化区間を329キロ延ばして計1,981キロ、全高速道路の22%に増やす。一方、トラックやバスなど中型車以上の夜間無料化区間を、北海道、東北、北陸日本海側、九州西岸などを中心に1,493キロ設けるという。

反対に、沖縄では無料化による渋滞緩和のため、6月以降の平日、従来料金の半額を徴収するそうだ。

一連の予算として、2010年度の1,000億円に続いて、2011年度用に1,200億円が計上された。が、社会実験には展望が見えない。国の施策として最終的に高速道路を無料化するのであれば、必要な税負担や財政的裏付けの議論が欠かせない。にも拘わらず、この一番重要な軸が民主党にはないのだ。無料化がよいことか否かを議論もせず、漫然と社会実験を続けるのは税の無駄使いであり、これこそ、事業仕分けすべき事柄である。

高速道路料金の割引は自民党麻生内閣のとき、休日は1,000円で走り放題という形で一挙に拡大した。対して民主党は、バラ撒きだと批判した。

麻生政権の施策は、特別会計を一般会計に切り換えると決定した2008年当時、特定財源として毎年自動的に入っていた5兆円を超えるお金を、道路局が差配出来る範囲内に何とかとどめておきたいという局益志向から生まれたものだった。予算分捕りの中で、道路局は高速道路の利便増進という理屈をつけて、10年間分で2・5兆円を確保するのに成功した。更に09年には「埋蔵金」のうちから5,000億円を高速道路に充て、休日1,000円を2年間実施することになった。それが、麻生内閣の実態だった。

バラ撒きだとの民主党の非難には、それなりの正当な理由があったのだが、敢えていえば、そこには非常に勝手な理屈ではあっても国交省なりの法律及び財源上の対策が講じられていた。

完全なバラ撒き

民営化で生まれた6つの高速道路会社を束ねる保有・債務返済機構(以下機構)は、各社から高速道路のリース料金を徴収して、それを当初40兆円あった借金返済に充て、2050年までに完済しなければならないと、法律で定められている。各社は高速道路利用者から徴収する料金からリース料を払う。従って、国の政策で料金を割り引くなら、その分を政府が税負担するというのが、麻生内閣の理屈だった。

小泉政権のときの高速道路民営化委員会では、高速道路会社に税金を投入するか否かが激しく議論され、税金投入なしで決着した経緯がある。だが、麻生政権が考えた1,000円への割引は税金投入が大前提だ。高速道路への税金投入はなしという大前提は、その時点で崩れたのだ。

実際にどんな手続きがとられたのか。国が出す3兆円を機構は借金返済に充て、償還表(借金返済計画)を3兆円減で組み替えた。それに基づいて、各社に請求するリース代を割り引き、各社はリース料が減った分、通行料金を割り引いた。このように、一応の理屈と形は整えた。が、税金非投入の大原則は破った。その意味で自民党の手法は秩序ある無秩序だった。

一方、民主党の高速道路行政は二転三転した。結論からいえば、09年、小沢一郎幹事長ら党側の要望で、新たな高速道路建設の財源として料金割引財源の残り2・5兆円の一部を使うことさえ考えられた。結果的にはこの構想は根拠法の改正が出来ずに頓挫したが、民主党はここで、採算のとれない新たな高速道路は作らないというもうひとつの大原則を根本から崩そうとしたのだ。

また民主党は10年6月から始めた高速道路無料化の社会実験に当たって、無料化や部分無料化にかかる費用、1,000億円を直接、個々の道路会社に投入する手法をとった。これはどう考えてもおかしい。会社は民間会社である。そこに直接、税金を注入する理由は何か。国民にどう説明出来るのか。文字どおりメチャクチャなはなしである。

麻生内閣の「秩序あるバラ撒き」は、民主党に至って単なる完全なバラ撒きへと一層劣化したのである。

民主党が行う社会実験の意味するものは何だろうか。第一に、弱い者苛めの政策だといえる。すでに指摘したように無料化は税金注入で支えられている。高速道路を使わない人、それは主に高齢者層や女性たちであろうが、その人々も一様に負担する。

彼らを弱者といえば批判を浴びるかもしれないが、民主党の社会実験が受益者負担の原則から大きく外れて、高速道路を余り利用しない人々が、利用する人々を支える形であるのは確かだ。民主党の社会実験はこの点で不公平である。

歪んだ高速道路行政

社会実験について、大畠章宏国交大臣は「社会実験の結果をよく検証して、この2、3年の間に将来のやり方を決める」(「読売新聞」1月22日朝刊)と述べている。

だが、民主党の公約である原則無料化は無理だと認めるのか認めないのかをまず最初に明らかにすることなしには、如何なる検証も実験も意味がない。第一、財源を考えれば、これからまだ2年も3年も社会実験を続けるのは非常に困難であろう。麻生政権が曲がりなりにも10年間の財源を担保したうえで割り引いたのとは対照的に、民主党は財源の手当も考えず、単年度毎に掻き集める手法をとった。この手法で国家のインフラの根幹である高速道路政策をやり遂げられるとは思えない。

いま民主党がすべきことは、展望なき究極のバラ撒きとなった社会実験を中止して、もう一度、高速道路政策を根幹から見直すことだ。元々、現在の問題は小泉政権の道路民営化委員会で現東京都副知事の猪瀬直樹氏らが偽りの民営化政策を打ち出したことに原因がある。根本から誤った路線上にどんな改善策を打ち立てても、虚構は虚構にすぎないのだ。

2月14日、私も一員の「高速道路問題を考える会」が、社会実験を中止し、根本的解決策を再度検討すべきだとする提言を発表し、国交省に申し入れた。応対した政務官の小泉俊明氏は、活力ある日本再生のために全ての可能性を検討すると明言した。氏が強調したのは、大畠国交相以下政務三役は高速道路問題について予断なしに考え、検討したいという点だった。この提言が、歪んだ高速道路行政の改善と合理的政策形成への第一歩となってほしいものだ。

最後に、現在の道路民営化のいかがわしさを知るために、朝日新聞経済部の星野眞三雄氏が書いた『道路独裁』(講談社)を勧めたい。併せて拙著『権力の道化』(PHP研究所)をお読み頂ければ幸いである。(週刊新潮)

杜父魚文庫
| 桜井よしこ | 16:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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