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日本国憲法を書いたアメリカ人とは 古森義久
私の日米同盟についての連載の続きです。今回は日本の憲法の出発点に関しての報告です。

■「戦争の放棄」は修正
「日本の憲法は米国が書き、押しつけてきたのです。内容がもう時代に合わない以上、その改正には米国側も協力すべきです」

江藤淳氏が熱をこめて語った。米国人のほとんどの聴衆は黙ったままだった。1980年3月、ワシントンのウッドロー・ウィルソン国際学術センターでの研究発表会だった。この国際問題の大手研究所に研究員として来ていた江藤氏は改憲の勧めを米側にまでぶつけるのだった。当時としては非常に大胆な主張だった。

著名な文芸評論家の江藤氏については私は「アメリカと私」という彼の著書などを読んでいたが、私が新聞に書いた一文を彼が週刊誌の自分の連載コラムに細かく取り上げてくれたことから知己を得た。

「最も左の共産主義のソ連や中国が防衛増強に最も熱心なのに、日本で防衛強化を説くとなぜ右寄りとか右翼というレッテルを貼(は)られるのか」というのが私の風刺文だった。

同学術センターで日本の米軍占領下の検閲や憲法起草についての研究をするためワシントンに滞在するようになった江藤氏とときおり会って、話を聞くようになった。私も日本の防衛を真剣に考えると、必ず憲法の制約にぶつかることを実感するようになっていたので、江藤氏の憲法観には強く関心を引かれた。

翌81年、私がカーネギー国際平和財団の研究員となり、日本の防衛や日米の安保の諸問題に取り組み始めると、江藤氏からチャールズ・ケーディス氏に会うことを勧められた。会って、日本国憲法の草案づくりの実情を詳しく聞くべきだというのである。ケーディス氏は連合国軍総司令部(GHQ)の民政局次長として日本国憲法起草グループの実務責任者となったことで知られていた。まだ当時、健在だったのだ。実は江藤氏の研究発表にも出席し、黙って耳を傾けていたのだという。

私は81年4月、ニューヨークのウォール街の古い法律事務所にケーディス氏を訪ねた。受付で出迎えてくれた同氏は血色のよい温和そうな白髪の紳士だった。弁護士の彼はもう75歳になっていたがこの事務所の顧問として週に2回ほど出勤するのだという。

それから3時間以上、ケーディス氏は日本国憲法起草の状況についてどんな質問にも応じ、細かに話してくれた。35年前の体験をよく覚えていて、よどみなく語った。

日米開戦の10年前に弁護士となっていた同氏は連邦政府の法務部門で働き、第二次大戦とともに陸軍に入った。最初は参謀本部、次に欧州戦線で軍務に就き、日本には終戦直後にマッカーサー司令官の幕僚として赴任した。民政局長のホイットニー准将の下で次長となり、1946年の2月の10日間、日本の憲法の起草にあたったのだ。

「憲法第9条の戦争の放棄などは私自身が書きました。ホイットニー局長から渡された黄色い用紙に3、4の要点の指示が書かれていました。同局長がマッカーサー司令官の口述を記録したノートのようだと思っていました。そこには『自国の安全保障のためでも戦争は放棄する』という記述がありました。しかし、どの国にも固有の自衛の権利はある。だから私はその記述は理に合わないと思い、自分の一存で削除しました」

ケーディス氏はこんなことを淡々と語り続けるのだった。黄色い用紙とは、いわゆるマッカーサー・ノートと呼ばれる憲法草案の大まかな内容の指示だった。

草案は米国の陸海軍と国務省の連合組織が大枠を決めてはいたが、具体的な部分は当時39歳の同氏のような現場の法律実務家たちに任されていたというのだ。「戦力の不保持」や「交戦権の否認」も黄色い用紙の指示どおりだったが、ケーディス氏自身、「交戦権」という用語の意味がよくわからず、もし日本側から求められれば、削除してしまうつもりだった、とも打ち明けた。

「この憲法の意図は当初は日本を永遠に武装解除されたままにしておくことでした。だが米国の対日外交の手をしばる効果をもたらし、米国としては賢明ではない状態が生まれてしまったといえます」

このように異端だらけの日本の憲法は日米同盟をも異色の形で縛りつける効力を発揮していくのだった。

杜父魚文庫
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