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「市民感覚」がまかり通る怖さ 花岡信昭
小沢一郎氏を強制起訴に持ち込む東京第5検察審査会の議決書を見ると、なかなか興味深い。あれこれ考えさせられるものがある。

で、議決書は冒頭でこんなことが書いてある。

 議決 平成22年9月14日
 議決書作成 平成22年10月4日

審査申立人 甲
被疑者 小沢一郎こと小澤一郎
不起訴処分をした検察官  東京地方検察庁検察官検事 齋藤隆博
議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 吉田繁実

このあと、議決の要旨として「別紙犯罪事実につき、起訴すべきである」となっている。この吉田繁実という弁護士について、ネットの世界ではあれこれの論評が飛び交っている。ひとことでいえば、「市民派・人権派」弁護士らしい。

第2東京弁護士会の所属だ。東京には、東京弁護士会、第1東京弁護士会、それにこの第2東京弁護士会の三つがある。

第2東京弁護士会のサイトにはこうある。

http://niben.jp/

<わたしたち、第二東京弁護士会(略称「二弁」)は、東京で一番若い弁護士会として、自由闊達な気風を誇りとし、社会の新しい動きを積極的に取り入れ、多くの分野で意欲的に活動しています。

東京には、第二東京弁護士会のほか、東京弁護士会、第一東京弁護士会があり、この三弁護士会、および三会に所属する弁護士はすべて日本弁護士連合会(日弁連)の会員です。三会には、気風の違いというようなものはあるかもしれませんが、上下関係や地域割りがあるといったことは全くありません。現在、三つの弁護士会があることがみなさまの不便にならぬよう、三会は相互に協力し合いながら、活動しています。

第二東京弁護士会では、市民の権利を実現するための活動に特に力を入れています。例えば、法律相談センターの設置、手ごろな費用で迅速な解決をはかる仲裁センターの設置、逮捕された人のもとに接見に駆けつける当番弁護士制度を運営しています。民事介入暴力、セクシュアル・ハラスメント、各種の消費者問題のほか、外国人の人権問題にも迅速に対応しています。

また、第二東京弁護士会は、市民に最も身近な法律家の団体として、市民の権利を守り、社会正義を実現するために提言をします。司法制度の改善のために裁判所や法務省と話し合います。もちろん、一人ひとりの弁護士の仕事をバックアップし、資質や能力を高めるために研究会や研修も積極的に行っています。弁護士自治を実践し会員の規律を保つなど、自らの襟も正します。

第二東京弁護士会は、毎日の活動をとおして、時代と社会を見つめています。>

これを読んでも市民派・人権派の雰囲気がにじみ出る。

議決書に戻ろう。議決から発表まで3週間のブランクがあったことが疑問を生んだ。議決日の9月14日は民主党代表選の当日だったことも疑問のひとつだったが、火曜日が定例会合の開催日に当たっていたということだ。
申立人は「甲」となっていて、これがだれなのか分からない。市民団体ともいわれているが、どういうたぐいの、どんな政治的背景がある人なのか、といったことはまったく知らされていない。

被疑者「小沢一郎こと小澤一郎」と書いてあるのは、問題の土地は陸山会の所有であるという確認書(小沢氏が記者会見で明らかにした)で、「小沢、小澤」と書き分けてあったことを転用したのだろう。

いってみれば、こういうことになる。

検察審査会というのはくじで選ばれた素人の人たちだ。裁判員制度の趣旨と同様に、市民的感覚を持ち込もうということだろう。朝日新聞5日付1面の解説には「法廷決着 市民が選択」とあった。

市民参加という「美名」の前には、すべてが従わなければならないという昨今の社会風潮を反映しているようにも見える。当方にはそこがなんともうさんくさく映る。

つまりは、素人たちがあつまって、この吉田さんという弁護士が法的なことをレクチャーしながら議論を進め、9月14日に「起訴すべきだ」と結論を出した。

それを踏まえて、吉田さんが法的解釈もまじえながら、議決書という文章を作成するのに3週間かかった、ということらしい。

裁判員制度では、裁判員のうち何人かがそれぞれの判断で判決後に記者会見に応じる。顔も出して応じる人もいる。裁判員の間でどういう葛藤があったかといったことが分かる。

それに比べ、この検察審査会のシステムは、だれが申し立てたのかも分からず、審査員はどこのだれか、まったく不明だ。

メディアの中に、なんとか1人でもいいから探し出して、実際にどういうやりとりがあって、こういう結論に至ったのか、率直に話を引き出すことをやってのける猛者はいないのか。

ここに出てくる齋藤隆博検事も審査会で説明する機会があったらしい。起訴できなかった理由をどういう風に解説したのか、そこも不透明だ。

こう見てくると、初めて政治家が強制起訴されるという歴史的事態となった「起訴議決」なのだが、実態としては、「幽霊・甲」が申し立てを行い、別の「幽霊・11人」が密室で協議し、これを、法に精通する弁護士がリードしていった・・・という光景が浮かぶ。

筆者としては、この裁判は「無罪」だろうと思っている。新たな証拠でも出てくれば別だが、検察当局が立証できなかったものを「市民感覚」でひっくり返せるはずがない。

むしろ、「市民感覚」といった情緒的次元でひっくり返るのだったら、そのほうがはるかに怖い。日本は中国のような「人治」の国ではなく「法治国家」なのだ。

杜父魚文庫
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コメント
そもそも、1億2千万の日本人の内には、色々な考えの人達が存在する。その中から、たった11人を選び出して、その人達が、「市民感覚なるもの」を代表していると考えること自体が、チャンチャラおかしい。

裁判で高い確率で犯罪行為が認定されるという蓋然性がある場合にのみ、起訴されるべきであり、無罪の確率が非常に高い人物を、無理やり起訴するのは「起訴権の乱用」としか言いようがない。

「市民感覚なるもの」で無理やり起訴することによって、徒に冤罪被害者が生み出されることを真に危惧する。
| 一市民 | 2010/10/07 11:52 AM |
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