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小沢氏は「天皇よりもエライ」のか 花岡信昭
天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見(12月15日)をめぐる一連の経緯は、鳩山政権の基本的体質を浮き彫りにした。「天皇の政治利用」にかかわる深刻な問題なのだが、鳩山首相にその認識は薄いようだ。浮かび上がったのは、最高実力者の地位を占めるに至った民主党の小沢幹事長の強権ぶりである。

これと時を同じくして、米軍普天間基地の移設問題について、政府は先送りを決めた。社民党、国民新党との連立維持という政局上の事情を日米同盟よりも優先させたことになる。小沢氏が民主党議員140人を引き連れて訪中したことも合わせ、この政権の米国軽視、中国傾斜の姿勢が明確になった。

それにしても、小沢氏の14日の記者会見は異様だった。小沢氏の言動を以前から見てきたものとしては、「やんちゃぶりは変わっていないなあ」と思わせたのだが、テレビで見た国民は総選挙中のえらく愛想のよかった小沢氏との落差を見せつけられて愕然としたに違いない。

産経新聞が小沢氏の会見のもようを忠実に再現して報じていたので、さわりの部分を紹介しよう。一カ月前に文書で申請する「30日ルール」にのっとらないで天皇との会見が行われることになった経緯についての質問からはじまる。以下を読んでいただければ、小沢氏のものの言い方がよくわかる。

天皇陛下は小沢氏の使い走りか?

「30日ルールって誰がつくったの? 知らないんだろ、君は。法律で決まっているわけでも何でもないんでしょ、んなもの。君は日本国憲法を読んでるかね」

「国事行為は内閣の助言と承認で行われるんだよ。天皇陛下の行為は、国民が選んだ内閣の助言と承認で行われるんだ、すべて。それが日本国憲法の理念であり、本旨なんだ」

「なんとかという宮内庁の役人(羽毛田信吾宮内庁長官)が、どうだこうだいったそうだけども、日本国憲法、民主主義というものを理解していない人間の発言としか思えない。ちょっと私には信じられない」

「しかも内閣の一部局じゃないですか、政府の。・・・もしどうしても反対なら、辞表を提出した後に言うべきだ。当たり前でしょ、役人なんだもん」

「天皇陛下のお身体がすぐれない、体調がすぐれないというならば、それよりも優位性の低い行事はお休みになればいいことじゃないですか。そうでしょう? わかった?」

「天皇陛下はご自身に聞いてみたら『それは手違いで遅れたかもしれないけれども会いましょう』と、必ずそうおっしゃると思うよ。わかった?」

といった調子なのだが、こうしたやりとりからいくつかのポイントが浮かび上がる。

■中国との関係強化のため、鳩山政権が「ごり押し」
ひとつは、習近平副主席との会見が国事行為であったのかどうか、ということだ。憲法第3条には「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う」とある。これを受けて、第7条で国事行為として10項目が記載されている。

その中には「外国の大使及び公使を接受すること」はあるが、外国要人との会見は含まれていない。外国要人との会見はこの3条、7条の国事行為ではなく、象徴的な地位に基づき公的な立場で行う「公的行為」として位置づけられている。

宮内庁は外国要人との会見が政治的に利用されないよう、周到に配慮し、天皇と政治との距離を保つことに腐心してきた。30日ルールは、天皇の公務が過多にならないよう体調管理の側面から打ち出されたものだが、宮内庁にとっては、政治利用のそしりを受けないように検討するための準備期間ともいえた。

今回のケースは習金平氏が次期国家主席に間違いないとされるため、中国との関係強化をはかりたい鳩山首相側が、中国側の強い求めに応じ、30日ルールを破って宮内庁に要請したものだ。「ごり押し」と取られても仕方あるまい。

会見が実現したことで、中国側は満足し、小沢氏は中国側から見れば「小沢氏に頼めばなんでもやってくれる最強実力者」として認識されることになる。ルールを無視し、政治的に重要だからとして、一カ国だけの要請を受け入れれば、そこに政治的意味が生ずる。これはどう見ても「政治利用」ではないか。

■宮内庁長官の対応は、天皇の政治的中立性を守るうえで当然
羽毛田長官は小沢氏の「辞任すべきだ」発言を受けて、「陛下の政治的中立性を守るのが私の役回り」として、辞任の考えはないことを表明した。当然といえば当然だ。羽毛田氏を更迭するような事態になったら、鳩山政権はいよいよ「天皇の政治利用」を認めたことになってしまう。

小沢氏は宮内庁長官を「一役人」と切って捨てたが、宮内庁長官というポストは皇室のありようを担保していくという意味で、ほかとは違う重要性をもつ。羽毛田氏は厚生事務次官出身だ。厚生事務次官は事務の官房副長官になるケースが多かったことでも知られるが、旧内務省の中軸官庁としての伝統意識がある。

羽毛田氏が天皇の政治的中立性を保とうと配慮してきたことは十分に分かる。平野官房長官が「総理の意思」として再三にわたって会見設定を求めてきたとき、「私のクビを取ってからやってくれ」と拒否していたら、もっとよかったとも思うが、まあ、重要な問題提起をしたのだから、これでいい。

■「政治主導」の意味を履き違えていないか
小沢氏は「優位性の低い行事はお休みになれば」と天皇のスケジュールの内容に踏み込んだり、天皇ご自身は「お会いしよう」というはずだと述べたりした。これはいかにもまずい。天皇のご心中を忖度してはいけない。これがまかり通ると、天皇よりもときの政権の意思を上位におくことになってしまう。

民主党の主張してきた「政治主導」「脱官僚」とは、こういうことだったのだろうか。そういう観点から見ても、今回のケースは重要だ。そこのけそこのけで、何でも思うがままというのが政治主導だというのであれば、これは壮大な勘違いという以外にない。

天皇を国家の中心におくという2000数百年にわたるシステムは、国家の統治構造からみても、世界に稀有なものであるし、すぐれた統治形態といっていいのではないか。武家が「内乱」を起こし、国の覇権を争った時代でも、朝廷は超然として存在し続けた。

国家の中心に「空」としての存在である天皇を位置づけているがゆえに、国のまとまりを担保し続けることが可能になった。つまり、政治的中立性を常に保ってきた存在だ。これが現在の象徴天皇に引き継がれており、国家、国民のアイデンティティーを形成している。あのGHQ(占領国軍総司令部)も、天皇を中心としたこの国の体制(国体)を認めざるを得なかった。

これを維持していくためには、政治指導者の周到な配慮が求められるのは当然だ。鳩山政権は、いとも簡単に重要な一線を越えてしまったようにも見受けられる。そこになんともいえないこの政権のあやうさがついてまわる。

岡田克也外相が国会開会式での天皇の「お言葉」について、表現を変えてはどうかといった発言をした。これも受け取り方によっては、政治利用につながりかねない。今回の臨時国会で、天皇がこれまでとは違う表現を使ったら、政権交代を支持していると受け取られかねないのだ。

■中国への気づかいの一方で、日米関係はどうするのか
さて、中国が大満足する一方で、日米関係はがたがたである。鳩山首相は普天間の移設問題を先送りした。来年5月までに決めたいという意向のようだが、これは予算を成立させるまでは、社民党を連立政権に抱え込んでおく必要があるためだ。社民党が離れると参院での過半数維持が難しくなるのである。

そういう政局の事情をアメリカ側に理解するゆとりなどないのではないか。アフガン問題で行き詰まり、国内には医療保険問題などに直面して、オバマ政権の支持率はガタ落ちだ。日本にかまってはいられないというのが本音だろう。

普天間移設はもともと日本側の要請である。10数年かけて名護市のキャンプ・シュワブへの移設が決まった。日米間の国家同士の合意を、政権が変わったからといってホゴにしてしまっていいとは思えない。

民主党には「日米中正三角形」を説く人が多いが、確固たる日米同盟があって、その上に立って対中関係を構築するというのが筋であることは、いうまでもない。

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