<< 「友愛の海」をはねつける中国の主権拡大 古森義久 | main | マードックも首を傾げた中国メディア 宮崎正弘 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | pookmark |







海自に衝撃・中国海軍の実力 古沢襄
総選挙の最中に書かれた谷口智彦氏のコラムだが、今、読み返しても激変する世界情勢を読み解くに相応しい示唆に富む内容である。筆者は記者時代に米プリンストン大学フルブライト客員研究員、上海国際問題研究所客座研究員、米ブルッキングズ研究所招聘給費研究員、ロンドン外国プレス協会会長などを経て、2005年から2008年まで外務省外務副報道官の職にあった。

中国人民解放軍海軍を略称で「PLAN」という。沿岸海軍の域を出なかったPLANが外洋に出ると、激しい波浪にもまれて船酔いする水兵が続出する様は列国海軍の間でももの笑いの種であった。PLAN艦船がハワイにやってきた時の話は軍事アナリストの間にも広く伝わっている。

あれから十年、海賊対策でソマリア沖に姿を現したPLANは、操艦練度で世界でもトップレベルに達していることを証明してみせた。インド洋における自衛艦の給油操艦技術は各国海軍から称賛を浴びているが、アデン湾でPLAN艦艇は、補給艦をサンドイッチにし、その両側に一隻ずつ駆逐艦を走らせ両舷から同時に油を受け取るという”離れ業”をやってのけた。日本の自衛艦が舌をまいただけでなく、各国海軍もPLANがトップレベルの外洋艦隊になったことに刮目(かつもく)せざるを得なかった。

中国はアデン湾からインド洋に至る外洋を中東から石油を輸送するオイル・ラインとして自国の海軍が護らねばならぬ。日本も同じことだが、北沢防衛相はインド洋の自衛艦に撤収命令を出す。オイル・タンカーは独自に自衛せよということだろうか。そんなことを考えさせられる谷口氏のコラムである。

<中国人民解放軍海軍(People’s Liberation Army Navy: PLAN)は昨年12月26日、駆逐艦2隻と補給艦1隻からなる艦隊をアデン湾へ進出させ、国連が促す海賊予防の国際共同行動に加わった。

以来、PLANは艦船ならびに要員の交替を挟みながら、引き続き当該海域でのプレゼンスを維持している。

海賊対策に名を借りた「プレゼンス」の押し出し
この「プレゼンスを維持する」とは、どの国であれ海軍を遠方へ押し出す際、必ず随伴させる政治的意味合いである。中国はPLANを遠くソマリア沖に出すことで、世界に何を示そうとしているか?

石油の海上輸送路・シーレーンに及ぶ支配を、米海軍(と日本の海上自衛隊、ならびにインド海軍)に独占させておくまいとする、その明白な政治的意思である。

遅れて日本の海上自衛隊も今年の3月14日、2隻の護衛艦を送って作戦に加わった。

初めて尽くしのことで、PLANについていろいろな知見を海自にもたらしている。

PLANが長期間、中国沿岸から遠く離れた展開任務に就くのが初めてなら、これと括りとしては同じ作戦に海自が従事し、比較的近くでPLANの仕事ぶりに接するのも、もちろん初めてのことである。

「もしかして、負けてる?」
ここで海自がPLANの能力に初め驚き、やがて「もしかすると実力において負けつつあるか、もう負けたかもしれない」というまだ小さくひそやかだが、ある実感を伴った疑問を持ち始めていることに関心を促したい。

こう記すに当たってはいつ誰から聞いた話なのか、その根拠を引照することができない。しかし日本の安全保障にとって小さくない意味を持つことだから、選挙期間中の今、あえて本コラムで触れておく。

と、いうのも、安全保障論議は予想通りと言おうか文脈抜きのアイテム是非論に矮小化されてしまっているからである。「海賊対策」はやめるか続けるか。「給油」は。「船舶検査」は、といった具合。

海自がいまアラビア海・インド洋とソマリア沖の両海域で都合4隻のフネを出していることが是か非か、民主党の立言はぬらりくらりとつかみようがないけれど、自民党にしても、そこに上述の意味における「プレゼンスの確保」という役割があることに、全く触れようとしない。

まして、日本の安全がかかるシーレーンの安保に関しその変数を大きく変えつつあるPLANの実力と、その発展とが日本にもたらす意味合いなど、誰一人俎上に載せない。

「あいつはチャイナ・カードを切った(対中恐怖を煽ってナショナリズムに訴え、支持を得ようとしている)」と新聞に叩かれるのを恐れてだろう、自民党選挙レトリックの安保論議とはeuphemism(物事の角を取って婉曲に言うこと)に次ぐeuphemismで、そのうち話者たち自身、本質が何だったか分からなくなりそうな雲行きである。

中国は、当座の内政力学に当用できる「カード」などではない。その軍事能力の拡張と近代化が、日本の戦略空間を締め上げつつある当の主体であり、リアリティーだ。しかし日本の言説空間において、それを指摘することは自己規制の対象なのである。

海自を驚かせたPLANの高い錬度
ほんの10年くらい前、米海軍、日本の海自関係者はPLANをまともな相手と見なしていなかった。外洋に出ると船酔いする水兵ばかりで、何がネイビーかと、内心見下す気味合いすらあった。PLAN艦船が遠くハワイまでやってきた時、乗組員たちの様子が見るも哀れだったというような話は、海自で広く伝えられている。

「それに引き換え」と言って、「不朽の自由作戦」(アラビア海・インド洋テロ掃討、予防作戦)に補給艦と護衛艦を出し続けている海自の人々がとりわけ当初、幾分かの誇りを滲ませよく例に引いていたのが、パラレル・リフュエリングにおいて示した海自の高い錬度である。

パラレル云々とは読んで字の如く油を受け取る船にぴったり並列で補給艦を走らせ、洋上給油する作業を言う。両艦は針路を寸分違えず数時間並んで走らなくてはならない。横腹を見せながら低速度で進むから、あり得べき攻撃に対し最も脆弱な態勢となる。

高度な熟練を要する作業で、これをほとんど芸術の域に達しようかという程度まで、海自は見事にこなす。PLANなど錬度の劣る海軍はこれをよくしないから、難易度の低い前後に縦列して給油するやり方しかできないのだ、と、幾度か聞いた覚えがある。

この度PLANは、アデン沖でパラレルをやってのけただけではない。補給艦をサンドイッチにし、その両側に1隻ずつ駆逐艦を走らせ両舷から同時に油を受け取るという、二重のパラレルをして見せた。海自を含む各国海軍は、その熟達に驚く。昨日、今日促成できる技能ではないからだ。

これだけならPLANは再び、その習熟曲線の傾斜が予想を超える急角度であるとして、このところ各国海軍を刮目(かつもく)させている一連のエピソードに収まる話である。

PLAN連続洋上行動の記録的長さ
「かなわないかも」と海自関係者に思わせたのは、124日間というPLANの一作戦期間の長さだった。4カ月を超す期間、2隻のPLAN駆逐艦は補給をすべて洋上でのそれで間に合わせ、1度も、どの港へも、寄らずにやってのけたのである。

これを士気の高さと称すべきか、将卒の人権に対する、甚だしい無視と評すべきか。

恐らくその両方相まってのものであろうけれど、いまどきこんなに長期間、海の上に浮かんだままでいられるネイビーはどの国にもない。「PLANにしかできない」と、そこが衝撃を与えたのである。

そのPLANがいま、中国の言う第1列島線(九州、台湾、フィリピン、ボルネオ島を結ぶ線)をはるかに超え、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至る第2列島線に押し出すことを常態化しつつある。

なりゆきの然らしめるところ、尖閣列島、沖ノ鳥島といった日本の領土であるとともにわが国水域の起点となる先端エリアに対し示威を強めていくことは、近未来に起きる話ではない、今、起きている事態だ。

ウクライナからホバークラフトが中国へ
ウクライナ産業政策大臣ヴォロディミール・ノヴィツキ(Volodymyr Novytsky)氏が政府の新聞(Uryadovy Kuryer)に語ったとして今月(8月)10日、ロシアのインターファクス通信が伝えたところでは、ウクライナは中国海軍に向け、ホバークラフトの製造、輸出をするという。

隻数は4、うち2隻はウクライナの造船所で造り、残り2隻はウクライナ技術者指導の下、中国の造船所が造る。これに対して中国はまずウクライナ側造船所が抱える債務のうち約350万ドルを肩代わりしたうえ、艦船自体の代金としてさらに1億2500万ドルを支払うようだ*1。

中型戦車3台か人員500名を積み、時速60ノット(111キロメートル)以上を出す性能は、日本の海自が6隻備える「エアクッション艇」に比べ、積載量、速度ともざっと倍。これをPLANが手にすることで、アジアの海はまたひとつ波を高くする。

日中彼我海上勢力は既に逆転
1990年以降に就役した艦齢の若い水上艦艇の数にして、日本はこの10年で対中優位を喪失した。98年、日本の13隻に対し中国は6隻だったものが、昨2008年、日本25隻、中国29隻となっている。

同じく90年以降就役の潜水艦保有数で比べても、98年時点で日本が9、中国4だったところ、2008年では日本16に対し中国28。中国はロシアと隻数において肩を並べ、アジア随一の潜水艦大国となっている。

加えて今回、このホバークラフト。日本の安全保障を守るとは、その海を守ることとほぼ同義のはずである。にもかかわらず、トレンドは、放置しておくと日本の対中劣位を非可逆的に定着させかねない。

政策決定を官僚から奪い、政治の手に収めるとは、予算の伸び率を各省一律横並び、ゼロにしようとする類の戦略なき運営を財務省に続けさせず、官邸が差配することなのだとすると、いま伸るか反るかのtipping pointにある防衛予算にこそ、今年以降厚めの配分をしなくてはならない。

社民党との連立を組まざるを得ない民主党にとって、それができるとは到底思えない。米海軍が横須賀や佐世保に維持する勢力と合算し、日米同盟全体で見てこそPLANとのバランスを保てている。その米軍を居辛くさせることばかりが並んだ民主党、社民党の政策項目を見るにつけ、先行きに危惧が募る。>

谷口智彦氏プロフィール=日経ビジネス誌主任編集委員などを経て2005年8月〜2008年7月外務省外務副報道官。記者時代に米プリンストン大学フルブライト客員研究員、上海国際問題研究所客座研究員、米ブルッキングズ研究所招聘給費研究員、ロンドン外国プレス協会会長など歴任。現在慶應義塾大学大学院 SDM研究科特別招聘教授、明治大学国際日本学部客員教授など

杜父魚ブログの全記事・索引リスト
| - | 09:15 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







スポンサーサイト
| - | 09:15 | - | - | pookmark |







コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック

CALENDAR

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
<< February 2020 >>

SEARCH

SELECTED ENTRIES

RECENT COMMENT

CATEGORIES

ARCHIVES

LINKS

PROFILE