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鳩山さん「無私・頑固・無鉄砲」に 岩見隆夫
「日本が変わる」と鳩山由紀夫さんは言い続けたが、それはまだ早い。変わるでなく、日本を変えろ、と国民は半世紀ぶりに本気で叫び声をあげた。変えようじゃないか、と確認し合ったのである。これが、民主大勝・自民大敗の衆院選結果が示した民意だった。

だれが変えるための牽引をするのか。自民党という機関車はいささか老朽化したのでお引き取り願い、修理工場に入ってもらう。あとは、待機している新造機関車の民主党に、とりあえず任せてみるしかない。ほかに用意がないのだから。

しかし、この新造、走行テストをまだしていない。走るレールも不確かだ。うまく引っ張れるかどうか、不安が先行しているが、無理だとなれば、そこで次の道を考えるしかないだろう。

とにかく、走り出してもらう。変わる、と演説ばかり繰り返す段階は終わった。変えるための手立てを一つずつ見せてもらいたい。機関車の運転士は、これもとりあえずだが、代表の鳩山由紀夫さんが務めることになる。重たい客車を引きずって、鳩山さんは急坂を上らなければならないのだ。

国難的な時期のトップリーダーとして、鳩山さんが器量と識見を備えているか、実は国民はまだわからない。イメージがぼんやりしている。このところ、リーダーに幻滅ばかりしていることも、簡単に信用できない理由の一つと言っていい。

鳩山さんについてはっきりわかっていることは、自民党を創立した鳩山一郎元首相のお孫さん(本人は最近、なぜか「世襲政治家じゃない」と言い張っているが、まぎれもない四世議員だ)、大変な資産家、〈友愛〉がモットー、政治献金の虚偽記載で窮地に立った、の四つぐらいだ。

〈血筋はいいが、金にだらしないお坊ちゃん政治家〉というイメージになる。だから、早々から野党が金銭スキャンダルを攻めるのは必至で、

「鳩山では国会がもたない」という声が、首相就任前から永田町に飛び交った。無理もない。だが、それでも私は鳩山さんに期待をつなぐ。理由は次の言葉が強く印象に残っているからだ。

まず、かつて鳩山さんの写真集を出版したカメラマン、蛭田有一さんのインタビューのなかで語られた。二〇〇〇年九月、民主党代表に再選された時である。代表として民主党議員に一番強調したいことは、と問われて、鳩山さんはこう答えたのだ。

「一番強く望みたいのは、己を捨ててほしいということです。私欲のままに行動する政治家が多いなか、私欲が国を滅ぼしてきたんだという痛烈な自己批判のもとで、己を捨てて無私の姿勢で臨むということを常に強調してきたつもりだし、それが覚悟だと私は思っています。覚悟というのは、自分自身を無にすることだと理解していただきたい。

私が西郷隆盛の『命もいらず名もいらず、官位も金も望まざる者ほど御し難き者は無し』という遺訓をことあるごとに党員の皆さんに説くのも、そこにあるんです。そういう気持ちが自民党型政治の対極にくるもので、自民党との違いはイデオロギーでなく体質なんだ、というところを際立たせていくことが大事だと思っているんです」

蛭田さんは、さらに、鳩山さんの外見的イメージは弱々しいとか、リーダーシップを感じさせないと言う人がいるが、と突っ込んでいる。鳩山さんは、

「頼りなさが外見的なものだとすれば、これは変えようがないんです。しかし、内面的な部分では、政治家は相当頑固でないとできませんし、なよなよした発想ではもたないです。その意味での頑固さは、私は結構強いものがあると思います」

と自負した。無私にして頑固、鳩山さんの言葉を額面通り信じれば、これほどリーダーとして心強いものはない。

◇〈無駄なくす〉の公約 「エイヤッ!」で断行
いま一つは、長年の相棒であり、ライバルでもある菅直人代表代行(本号発売のころは新ポストが決まっているかもしれないが)の鳩山論である。

「私はよく鳩山さんを『真っ暗闇の崖っぷちの下に、岩があるのか水があるのかわからなくても、平気で飛び込む人だ』と評しているんです。そんな勇気の持ち主ですね。育ちのよさ故の怖さ知らず、ある段階になると躊躇することなく『エイヤッ!』とやっちゃうんです」

この話もイメージと違う。しかし、もっとも密接にかかわってきた菅さんの批評だから、確かなのだろう。崖の下が岩か水かわからないのに飛び込むのは、勇気というよりむしろ無鉄砲だ。

乱世と転機のなか、無鉄砲はリーダーにとって貴重な資質かもしれない。躊躇、逡巡していたら、何もできないからだ。先日、こんな秘話を聞いた。

九三年に首相に就いたリベラリストの細川護熙さんは、新方針のなかに、〈防衛費を(前年度比で)マイナスにする〉という思い切った削減案を盛り込んだ。さっそく大蔵省(当時)幹部を呼んで指示したが、幹部は、
「急に言われても、とてもできない。せいぜい上げ幅を縮めるぐらいだ」
と拒み応酬になる。結局、細川さんが、

「それでもいいから」と折れた。幹部が政権の実力者だった小沢一郎新生党代表幹事に連絡してみると、小沢さんは、

「そんなことはできんだろ。総理に言われたからってやることはない」と言ったという。

 同じような場面に鳩山さんも直面する。真っ先に手がけるべきことは、

〈無駄をなくす〉という公約だ。予算を削らなければならないが、抵抗は計り知れない。鳩山さんは無私にして頑固、無鉄砲に、職を?す。

「エイヤーッ!」と気合をかけて断行することだ。一点を突破すれば、次がひらけてくる。(サンデー毎日)
 
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