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生還後は「お釣の人生」 渡部亮次郎
わが師、故園田直(そのだ すなお)は「8月17日」が命日になルべきところ、2日まえに敗戦となったため生き残った。昭和20(1945)年のこと。「特攻隊」として死ぬはずだったのだ。

「31歳。残りの人生はお釣のようなもの。何が起きても怖いことはなくなっていたね」とよく述懐していた。復員後は郷里・天草で役場の助役。代議士に立候補したが落選。次の選挙から死ぬまで当選を続けた。

政治の隙間に剣道、居合道、合気道に精進した。結婚3度。衆院副議長を経て初入閣したのは既に9年生だった。これは日米安保条約は再軍備を阻害するものだと、保守党にありながら反対票を投じていわば長い事党の幹部に忌避されたため。

そのご官房長官、外務大臣3期、厚生大臣2回をつとめ、糖尿病に伴う腎不全で死んだ。70歳。インスリンの注射を痛がって逃げ回ったツケだった。

実は8月13日に「天雷特別攻撃隊長」として沖縄海戦に燃料片道で出動、アメリカ艦に体当たりして果てるよう指令が下っていた。だが、当日は天候不良により、出撃中止。次は17日出撃が予定された。

「死」を覚悟すると、人間は如何なる状態になるか。「生」への飽くなき執着を絶つために不思議な行動に走った。誰かが道端に捨てた鼻紙を拾って広げ、自分の頬を押し当ててこすった。

かつて中国でスパイとして逮捕されそうになったとき、目前に落ちていた牛の糞を口に突っ込んだ。狂人のふりをして難を逃れたことがある。あれは生き延びるための芝居だったが、こんどは生への執着を絶ち切るための行動。芝居ではない。

だが、如何に努力をしても生存している限り、生への執着は絶てるものではない。体中に爆雷を巻き、盲滅法、最後は目を確り開けて敵艦に体当たりする以外にないだろう。

そう決意して爆撃機に隊員たちと搭乗したのに、出撃直前に悪天中止。気落ちして腰が抜けたようになって17日を待った。

だが運命は狂った。2日前の15日に「敗戦」万事休す。今度は本当に腰が抜けた。一旦決意した以上、自分は生きていても心は既に死んでいた。だから死から強制的に生還させられたようなものだった。

「死ぬはずが生きているというのは変なものだよ」とよく言っていた。

園田は昭和13(1938)年9月10日、血書志願して歩兵第13連隊に入隊。26歳で中尉に昇進したが日本陸軍初の落下傘部隊員となる。危険だからと長男は除外されるべきところを、特に願い出て許可された。

さらに進んでパイロットとなり、昭和20年7月20日には特攻隊員となり,第1「剣」部隊創設「天雷」特別攻撃隊の隊長に任じられていたのである。

大東亜戦争時、日本には「空軍」はなく陸軍と海軍それぞれに飛行隊が存在した。アメリカは初めから飛行機を先頭にした海軍なのに、わが軍は軍艦の大型化で対抗しようとして最後は「特攻隊」の体当たり爆死しかなくなって敗れた。

血書志願といい、落下傘部隊といい、パイロットと言い、最後には必ず死ぬべき特攻隊への志願。すべて「生」よりも「死」を志願して結局、生き残ったわけである。

晩年、外務大臣を福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸の3内閣で勤めた。酒を全く嗜まなかったが、外遊すると夜、外へ出たがる秘書官の私にウイスキーの水割りを作ってくれながら、時折、戦争の話や得意の武道の真髄を聞かせてくれた。

その内容はおそらく子どもたちにも語った事はなかったはずだ。

戦場では当然、弾丸は怖い。「だが、変なものだ。タマは逃げれば当る。こっちからタマに向かっていけば当らない」。「危険は回避しようとすれば襲いかかってくる。積極的に挑戦して行けば危険のほうが逃げて行くよ」

園田の命日は4月2日である。エイプリル・フールの翌日。園田に実に相応しいと独り心地ている。

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