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イランがEU向けガス供給ビジネス 宮崎正弘
ガス市場が大混戦、イランがEU向けルート開拓を提言。EUガス供給を寡占するロシアは怒り心頭、陰湿な妨害作戦を開始した。

イランがEU向けガス供給ビジネスに参入するという意味は、世界の資源戦略を考える場合、きわめて大きな戦略性がある。

第一にEU向けガスをほぼ独占しているロシアは商売敵を得る。価格は下がるから、消費国にとっては有り難い。

第二にEUは供給不安や、ロシアの一方的供給中断による値上げという脅威を取り除ける。供給先を多元化することは安全保障のイロハでもある。

第三にトルクメニスタンなどの潜在的競合国家との競合が生まれる。EUというおいしい市場を狙っているのはガス生産国のトルクメニスタンが最大のポテンシャルを持つ。

するともっとも裨益しない国がロシアとなる。

「昨年(2008年)にEU向けガス輸出でロシアは730億ドルを得た。主としてガス代金の値上げを、戦術的にパイプラインを止めるなどしてEU諸国に認めさせたからだ。それが、今年は400億ドル台に急減する見通し」(『ユーラシア・ディリー・モニター』、4月11日)。プーチンの資源戦略は露骨なほど、カネに結びついている。

経緯からみよう。

4月1日、イランの石油相ゴラム・ホセイン・ノザリはシリアの首都ダマスカスで記者会見を行った。衝撃の発言とは「イランは将来、イラク、シリア経由で地中海へのルートを通じて、EUへもガスを輸出する」。

驚いたのはロシアだった。

世界最大のガス供給企業=「ガスプロム」のミラー会長はすぐにトルコへ飛んで、現在進行中の「ブルーストリーム」パイプライン・プロジェクトの第二貯蔵所建設計画を煮詰めた。ガスプロムは周知のようにプーチン系列企業。KGB企業といってもいい。先代社長は現ロシア大統領のメドべージェフだった。

そしてミラーはこういった。「EUへのガス市場の拡大に関して、ロシアの意向を無視することに警告する」。この科白って、半分脅しに近い。

すでにウクライナへのガス供給を巡ってロシアは過去に二回、パイプラインを止めた。

表向きはウクライナが値上げに応じないとしたが、じつはウクライナから先のEU向けにおなじパイプラインが繋がっており、EU向けガスも自動的に止まり、EUが悲鳴を挙げる。

ウクライナの西半分は親EU、親米だから、その政治的勢力への牽制も含まれる。同様な手口でロシアはバルト三国、グルジア、モルドバへのガス供給を止めている。モスクワの意向に逆らうと、資源をやらない、と露骨な政治的脅迫!

一方でロシアは北極海からバルト海の海底にパイプラインを敷設し、ポーランドを越えて、いきなりドイツへ供給する大プロジェクト(「ノルド・ストリーム」という)をドイツとともに進行中。このドイツ側の利権代表はシュレーダー前首相だ。

▲プーチン発言がまたまた状況を変えた
ところが状況をひっくり返す発言がプーチン首相から飛び出した(08年11月)。「ノルド・ストリーム構想を中止して、バルト海沿岸サンクトペテルブルグ近郊の港にLNG基地をつくり、LNGタンカーでEUのみならず世界に輸出する

実際、北欧諸国はバルト海が汚染されると大反対。通過されるポーランドもむくれていた。

そして新たなる挑戦者が出現した。「ペルシア・ルート」を新たに提唱して、EU向けガス輸出構想をぶち挙げたイラン。

タイミングも良かった。

オバマがNATO会議直前に「イランとも話し合いを持つ用意がある」と言えば、イランは「変化は歓迎。我々はいつでも門戸を開けている」と。

ロシアとイランの関係はつかず離れずだが、イデオロギー的に反米だけは共通。イランは世界全体のガス埋蔵の16%、

4月3日付け『人民日報』に奇妙に正鵠を得た解説記事がでた。

「ロシアが横やりを入れる理由は、ペルシア・ルートもロシア経由にすれば、運搬ルートを独占しているロシアが有利であり、イランに対してそういう政治的圧力をかけているのではないのか」と。

その中国、隣国カザフスタンからパイプラインをつなげているが、そのうんと先のトルクメニスタンからもガスを輸入するパイプライン工事を進めており、ロシアが不安気に警戒している。

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