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缶詰はナポレオン命令 渡部亮次郎
1795年フランス革命の最中に,ナポレオンはヨーロッパ戦線を東奔西走していた。当時のヨーロッパは新鮮な食物が不足し,一般市民に栄養不良による病気が流行していた。

その時代の食品の保存法は昔ながらの乾燥,塩蔵および薫製によってなされていたが,長い航海をする船員は塩蔵肉や乾パンで我慢しなければならなかったため,海軍部内には壊血病(ビタミンC不足)が蔓延していた。

ナポレオンは軍隊の士気を高め戦闘力を維持するためには,栄養豊富で新鮮美味な食糧を大量に供給する必要性を痛感し,従来の方法によらない食品貯蔵法を懸賞金つきで募集することを政府に命じた。

遠征における食料補給の問題に悩まされていたナポレオン・ボナパルトによる懸賞にこたえ、1804年にフランスのニコラ・アペールにより長期保存可能な瓶詰めが発明され賞金1万2000フランを与えられた。

たが、ガラス瓶は重くて破損しやすいという欠点があった事から、1810年にイギリスのピーター・デュランド(Peter Durand)が、金属製容器に食品を入れる缶詰を発明した。これにより、食品を長期間保存・携行することが容易になった。

ただし、初期のものは殺菌の方法に問題があり、たびたび中身が発酵して缶が破裂するという事故を起こした。これはのちに改良された。

また、1833年にはフランスのアンシルベールによって、缶のふたの回りをはんだ付けし、熱で溶かして缶を開ける方式が考案された。その後、1860年代にブリキが発明されてからは、缶切りが登場するようになった。

当初、缶切りは発明されず、開封は金鎚と鑿を用いる非常に手間のかかるものだった。戦場では缶を銃で撃って開けることもあったが、撃たれた衝撃で中身が飛び散ってしまい使い物にならなくなることも多々あったという。

このため内容物が固形物に限られ、液状のドリンク類は入れられなかった。缶切りが発明されると液体なども入れられるようになり、内容物のバリエーションが広がった。さらに缶切りが無くても開けられる様にプルトップ(イージーオープン缶)が発明された。

缶詰は、初期には主に軍用食として活用された。特に、アメリカ合衆国の南北戦争で多く利用された。のちに一般向けにも製造されるようになり、現在では、災害対策用の備蓄用食品(非常食)としても利用されている。

現在作られている缶詰は日本で約800種類,世界では約1200種類といわれている。原料の種類別では魚介類,果実類,野菜類,畜肉類に大別される。

加工調理方法の別では魚介類は水煮・塩水漬・油漬・味付け・みそ煮・蒲焼き・薫製油漬・トマト漬・香辛料漬・その他の調味料漬が,果実類はシロップ漬・水煮(固形詰)・ジャム・ゼリーなどがある。

果実類として大きな地位を占めるのは果汁である。野菜類としては料理の原材料となる水煮が主体であるが,味付け,漬物などもある。畜肉類は水煮,味付け,ハム,ベーコン,ソーセージや各種の調理食品がある。

特殊に入るものとしては,各種の調理食品,米飯類,ソース,めん類のかけ汁,しるこ,甘酒などの飲物などがある。食品缶詰の規定には当てはまらないが,コーヒー,紅茶,緑茶の真空パックや不活性ガス(おもに窒素ガス)を充てんし,香りや味を保持させるための缶詰もある。

ペット用のペットフード缶詰の生産も多い。そのほか食品ではないが培養土に種子を入れ,開缶後水をやれば花の咲く缶詰,おもちゃの缶詰,下着類の缶詰も作られている。

1812年にイギリスのドンキンにより缶詰製造は企業化されたが,その後イギリス,アメリカなどで企業化が進んだ。1890年には自動製缶機械に一大進歩をみたことにより,1901年に容器のみを作るアメリカン・キャン社が設立され,缶詰製造業界に一紀元を画した。

製造量は南北戦争後の1870年で約4000万函といわれているが,第1次・第2次世界大戦の軍用食としての需要の増大により,缶詰産業も各種の技術革新とともに発展をとげた。

国別の生産量では,1970年ころまではアメリカが全世界の70〜75%を占めていたが,80年には世界の総生産量(約20億函)の40%を占めるだけとなった。

またイギリスが主要生産国から脱落し,発展途上国の進出が目だってきている。この主な理由としては,作業員の人件費の高騰,原料確保の困難(漁業の200カイリ問題など)などがあげられる。なお,アメリカに次ぐ生産国はドイツ,フランス,イタリア,日本などの先進諸国である。資料:世界大百科事典(C)株式会社日立システムアンドサービスおよび『ウィキペディア』 

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