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暗殺されたブッド元首相の夫が優勢 宮崎正弘
パキスタン大統領選挙、ザルダリ(ブッド元首相の夫)が優勢。ムシャラフ前大統領は事実上の禁足状態、イスラマバードで事態を静観。

ムシャラフ前大統領は「大統領弾劾」を回避するために大統領職を辞任した。国民の辞任要求圧力による、というより欧米がムシャラフ前大統領を見放したのだ。

ムシャラフ前大統領は米国のアフガニスタン空爆で空軍基地を貸与し、イスラム過激派から常にテロの標的とされた。

また軍の情報部はムシャラフに忠誠を誓わず、情報が時としてタリバンへ漏れた。ムシャラフはインド生まれで、パキスタン主流のパシュトン族出身ではなかった。

辞任へ追い込んだのはPPP(パキスタン人民党=ブッド派)とPML−N(イスラム教徒連盟シャリフ派)の連立作戦だった。

大統領弾劾要請は司法界への政治介入、とくに最高裁裁判官を罷免したことは独裁であるとする批判からだった。

ところが二大野党は、大統領辞任を獲得するや、連立を解消し、分裂選挙となった。

PPPはブッド元首相の夫であるザルダリが暫定党首となり、大統領へ立候補、かれはその昔「ミスター10%」と呼ばれたほどに汚職の噂が絶えず、ムシャラフ前大統領によって起訴収監された。

監獄に合計十一年間を過ごし、拷問で精神状態が異常を来したとの評判があった。

シャリフ元首相は、99年無血クーデタにより、パキスタンを追われ、ドバイ、サウジアラビアなどを転々としていた。

混乱する政治情勢に欧米のつよい圧力で民主選挙を強いられ、ムシャラフは渋々、シャリフの帰国を許した。

同時にブッドも帰国して昨年師走にカラチを遊説中に暗殺された。
 
シャリフ率いるPML−N(イスラム教徒連盟シャリフ派)は、その元最高裁判所長官のシデグィを大統領候補に立てた。

ムシャラフ前大統領は辞任に際してドゴールの言葉を引用し「世界の墓場には避けることのできない人々で満たされている」と言い残し、サウジアラビアか米国へ亡命すると見られたが、野党が分裂したことによって、プール付きのイスラマバード豪邸にとどまっている。

選挙後、米国へ出国するだろう、という噂が絶えないが。またムシャラフ派からは党首が大統領選に立候補しているが、当選の圏外にある。

▲米国は静かにザルダリPPP支援の様相だが・・・
さて、米国は漫然とザルダリを支援している風情がある。

とくにザルダリと親しい米国国連大使は個人的にザルダリに肩入れしており、国務省から「中立であるべき」と忠告を受けているという(ヘラルドトリビューン)。

米国のスタンスはブッド元首相支援の延長であり、欧米理解派とならば、アフガニスタン作戦の継続が可能と踏んでいるからだろう。

ザルダリの問題は精神障害が完治したのか、どうか。

ワシントンタイムズのボルシェグレィブ編集局長は「フィナンシャルタイムズの精神医療専門ライターが、裁判記録を取り寄せての陳述記録を精密に検査した結果、とくに再発のおそれは低いと結論しているようだ」と書いた(同ワシントンタイムズ、8月29日付け)。

投票は九月六日、土曜日。世界が注目している。

日本の首相が誰になろうと外交政策も経済政策も変更はないが、パキスタンの結果は米国やNATO加盟諸国を揺らす。安全保障と地政学に立脚すれば、日本の政局報道より遙かに重要である。

八個の核爆弾を保有する軍事大国でもあるからだ。

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