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政治を遊んだ大阪 渡部亮次郎
大阪出身の作家司馬遼太郎によると、徳川時代の二百数十年間、大阪詰めの江戸派遣武士は毎年多くても300人ぐらいであった。少なすぎて存在感が無かったし、今で言う徴税(税務署)員みたいなものだったから軽蔑されるだけだった。

まして大阪人にしてみれば太閤さんを潰してもうた憎っき家康。おまんらの言いなりになって堪まるか、という反抗心のこりかたまり。
大阪人の反東京感覚はここに端を発する。

武士の成れの果てが公務員と言う名の役人だが、彼ら行政官は政府(東京)や政治家(国会議員、知事、市長、府会議員,市議会議員)といった権力者に対して、元々強い反抗心と不信感を持っている。

そこが東京と根本的に異なる点である。東京は何十年経っても「サムライ」の街。「お上」という名の「権力」に対する抵抗力が元々無い。ただ「従う」だけ。尽くすは嘆願、陳情あるのみ。

そこへ行くと大阪。伊丹空港騒音公害訴訟、新幹線騒音公害訴訟、数々の大気汚染訴訟。「お上」のなさる事に徹底的に逆らう。恐れない。東京とまるっきり違う。お上や政治家を信用せず、勝手に行政を行なう気風がある。隠し財源の根っこがここにある。

なるほど明治維新で権力の中枢は江戸(東京)に移ったかもしれない。天皇様も江戸へ「出張」したまま,何代たっても京都めお戻りでない。だが「出張」のままであって「遷都」を宣言されていないでは無いか。なにさ。

江戸が政(まつりごと)でいくんなら、いけ、それがなんぼのもんじゃ。わいらは商売でいきまっさ。煙もうもう京阪工業地帯。煙の多さが大阪の繁栄をうたっとるやないか。煙の都、八百八橋の水の都や。

新聞社かて放送局かて始まりは大阪や。世界に冠たる総合商社も大阪が始まり、銀行かてそうやないか。東京で始まったもん、あるけ。
政府とやらだけやないか。

大阪はこうして「政治」を貶し、商売に没頭していた。それが証拠に知事に共産主義者の大学教授をしてみたり、テレビ漫才師を知事にしてみたりしてきた。自分たちが世界的変革の嵐に曝されていることに気付かなかった。「政治を遊んで」いた。

昭和40年代の経済大成長とは変革の嵐だった。エネルギーが石炭から石油へと変わって産業構造が変わった。九州と大阪の縁が切れた。得意としてきた繊維産業は素材産業ではなくデザイン産業に変わっていた。「感覚産業」など想像もしていなかった。もはや追いつける産業は無い。

それを大阪「財界」は1970年の万国博覧会による景気刺激策で凌ごうとしたが、万博は大阪に何も齎さなかった。刺激しても動ける産業は既に無かった。千里ニュータウンが残っただけだ。

しかも経済活動は通産官僚という名の現代武士に「規制」され、彼らの足元にひれ伏さなければ「情報」は取れなくなってしまっていた。だから銀行も商社も「霞ヶ関」に引っ越してしまった。

このとき大阪は未だ共産党知事を戴きながら、役人という名の下級武士たちは「裏金予算」で知事、市長ら政治家を欺いていた。徳川時代からの「必要悪」と断じて、平然としてきた。それはそうだろう、裏予算で生きられるのだから知事が共産党であろうが漫才師であろうが「関係ない」。

こうした「下級武士」の感覚は、感覚である以上,一朝一夕に今更、治るものではない。ところが府民がやっと目覚めたので、まともな知事が出現し、まともな政治をやりだしたから、下級武士(小役人)たちの勝手の違ったのが昨今の大阪では無いか。

大阪府民も市民も「政治」を軽蔑し、油断しているうちに、賢明な若者はどんどん江戸を目指すようになった。昭和50年頃からである。前後していわゆる「情報化」の時代、IT産業が始まるが、まともな政治家を育成していなかった大阪はITにも取り残された。

すでに「財界」と言えるほどの財「界」は存在しない。空疎なゼッケンだけだ。法人税,法人所得税は日に日に減ってゆく。人口も減ってゆく。大阪は既に第二首都とは言えなくなった。そのことを一番知りたくないのが大阪府民では無いか。

大阪人は政治家を軽んじ、無関心を決め込み、人気投票さながらに選挙をふざけてきたが、この間、本当に必要としたのは大阪の将来を握る政治家だったのである。指導者を失った大阪。馬鹿にした分だけ政治家が必要な時に政治家はいない。

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