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福田「旧態依然」改造内閣雑感 阿比留瑠比
福田改造内閣が組閣されたわけで、一応、政治記者をやっている身としては何か触れなければいけないのでしょうが、一つひとつ突っ込んだり、分析したりしていたら、膨大な分量になりそうですし、またさんざんアレコレ書いたあげくの結論がただ「つまらない」というものになるのも見えているようで、ちょっと躊躇する気持ちがあります。そこで本日は「手抜き」のような感もありますが、箇条書きで簡単にいくつか感想を記しておこうと思います。

・まず新内閣全体を見れば、各派閥に配慮を示した派閥均衡型の人事と言えるでしょうね。私が何度も書いてきた通り、福田氏は党内にろくに友人・知己はいませんし、どの議員がどんな経歴と思想を持つどういう人物であるかについての知識は極めて低いでしょうから、これは森元首相の助言と、各派閥からの推薦リストとをもとに考えたのだろうなと思います。町村官房長官の留任も、派閥事情を考えた森氏の要請でしょうし。結果、内閣から受けるイメージは「旧態依然」というものですね。小泉、安倍両氏流の一本釣りスタイルは廃れ、自民党は昔の姿にどんどん戻っていきます。自民党は、これは昨年の参院選の国民の審判を受けてのことだとしていますが、国民は本当にそんなことを望んだのかと、私は強い疑問を持っています。

まあ、閣僚に党4役からの横滑りが多いのも、われわれがはっとするような人物の抜擢がないのも、何だかんだ言って留任が多いのも、福田氏がいかに他の人を知らないか、ということを表す一つの証左だろうと考えています。保岡興治元法相を再び法相に起用するこの新鮮味のなさこそが、福田氏の真骨頂なのでしょう。だから、仕方がないというか、予想通りだとは言えますが。

・保利耕輔氏の政調会長就任と、野田聖子氏の消費者行政担当相就任は、小泉元首相にとってはさぞや面白くないことでしょうね。二人とも郵政造反組であり、彼らの重用は、イコール小泉構造改革路線からの決別表明だともとれますから。小泉氏は、野田氏と選挙区の候補争いで負けた佐藤ゆかり氏の応援演説にもわざわざ行っていますし。

小泉氏はもともと福田氏のことを好きではないにもかかわらず、昨年の自民党総裁選以降、福田氏を支える姿勢をとってきただけになおさらです。執念深い小泉氏が、表面と裏のそれぞれで、今後、福田政権とどういう距離をとっていくのか注目です。安倍前首相が造反組を復党させたときは、あれほど国民への裏切りだなどとたたいたマスコミは、おそらく今回は特に批判はしないだろうと思いますが。

・拉致問題担当首相補佐官だった中山恭子氏の閣僚起用については、一部で歓迎する向きがありますが、私はこれは非常に危ういと思っています。というのは、中山氏は拉致問題担当相のほか、少子化問題担当、男女共同参画担当、公文書管理担当と三つの担当を押しつけられているからです。この三つはいずれも福田氏が好み、重視するテーマであり、中山氏はこっちで忙殺される可能性があります。

私はこの人事を見て、すぐ、ああ福田氏サイドは中山氏に「あんまり拉致問題ばっかりやらなくていいから」ということを言いたいのだな、と感じました。中山氏を閣僚で処遇することで、一見、福田内閣が拉致問題を重視するポーズをとり、拉致被害者家族や世論をごまかしつつ、その実は外したいのだと。福田氏は官房長官時代には、拉致問題で原則論を崩さない中山氏(当時・内閣官房参与)が目障りになり、群馬県知事選に出るよう盛んに勧めたとも聞いています。このときは、中山氏が断ったため実現しませんでしたが。

実際、福田内閣発足後、これまでも中山氏は拉致問題や日朝関係をめぐる重要な局面でラインから外されているわけで、それを何をいまさら拉致問題担当相だ、という印象を受けました。もちろん、これからの中山氏の頑張り次第でもあるのですが…。

・二階俊博氏の二度目の経産相就任にもため息が出ました。この人は前の経産相時代、前任の中川昭一氏が許可していた東シナ海のガス田試掘にストップをかけた人物ですね。6月に一応の合意を見たこの問題は今後、条約締結や白樺ガス田への出資率交渉、合意できなかった他の日中中間線付近のガス田の取り扱い交渉その他いろいろと問題が控えているのに、よりによって親中派の中の親中派である二階氏が主管大臣になるとは。

この人事は、二階氏の処遇に困って急遽決まったとも言われますが、まさしく福田氏のセンスですねえ。放つ光がことごとく鈍い色をしています。あと、金融・行政改革担当相に茂木敏充氏を持ってきたのも、福田氏がもう公務員制度改革はどうでもいいと考えているか、茂木氏のことを全然知らないか、どちらかだろうと感じました。

・一つよかった(?)と思うのは、自民党人権問題等調査会長として、天下の悪法、人権擁護法案に関する議論を「永遠にやる」とうそぶいていた太田誠一氏が、農水相に就いたことです。これで、党内におけるこの議論はしばらくは沈静化することと思います。太田氏の入閣(野田氏の入閣もですが)には、古賀誠選対委員長の推薦があったと思われます。ということは、古賀氏自身も、人権擁護法案推進という旗は降ろせないまでも、党内や世論のあまりの反発の強さをもてあまし、体のいい形で逃げを打ったのかな、という気もします。

若干心配なのが、文部科学相となる鈴木恒夫氏についてです。この人は麻生派ですが、もともとは河野洋平氏の秘書であり、まあ、あっち側の人だという印象が強いのです。教育基本法の審議をめぐっては、日教組と民主党との関係を追及するなど、頼もしい一面も見せてはいたのですが…。

・昨日は外務省の記者クラブでNHKをずっと見ながら仕事をしていたのですが、解説役の政治部記者が、司会者に「福田カラーとは?」と問われ、困った顔をして「それはなかなか一言でいうのは難しい」などと逃げていたのには、そりゃそうだよなと同情を禁じ得ませんでした。みんな安易に「福田カラー」なんて口にしますが、福田氏はかつて尾辻参院議員会長に「カラーが見えないのが福田カラー」とまで言われているのですから。

今回の改造内閣は、福田氏自身の命名では「安心実現内閣」なのだそうです。この「安心」とは、昔通りのやり方をしていれば大丈夫だ、という意味なのでしょうか。今朝の産経の「主張」は、麻生氏の幹事長就任で「保守カラーの鮮明化に期待」と新内閣にご祝儀を送っていますが、実際はそうはならないでしょうね。

さて、週明けからぼちぼち出てくるであろう報道各社の世論調査結果を待ちたいと思います。これで支持率が大幅に上がるようなら、私は国民の多くの考えが全く分からないということになります。それならそれで仕方ありませんが…。

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