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北と交渉するしか道はない(3) 松尾文夫
●政権に関係なく同盟まで望む
松尾 彼らは依然としてブッシュ政権と話をまとめる用意があるのだろうか。

シーガル もちろんだ。彼らは時間稼ぎなどしていない。明らかにシンガポールでブッシュ政権と取引をまとめることに合意した。問題は、米国側がそれを守るかどうか。また米国側がそうした場合、北朝鮮側が先に進むかどうかだ。

松尾 彼らには次期米政権まで待とういう気はないのか。

シーガル その気はない。喜んで賭けに応じる。もしわれわれがすべきことを行えば、無能力化は今年中に完了するだろう。やろうと思えば彼らは八月までに完了できるが、たとえ現在のペースで進んでも、遅くとも十一月には完了するだろう。そして核計画に関する申告も、もうすぐ行われるはずだ。

松尾 今年十一月か。

シーガル その通り。彼らはすでに、プルトニウムに関する申告を中国に提出した。北京で起きたばかりのことだ。そして中国は、間もなく行われる次の六ヵ国協議で、それを正式に提示するだろう。ウラン濃縮に関しては、すでに述べた通りだ。重要なのは、誰が真実を言い誰が嘘をついたかとか、罪と罰とかの問題ではない。日米の安全保障を促進するために、核施設の無能力化を完了し、濃縮施設を含めて次の段階で解体されることを彼らが了承したもののリストを手に入れることだ。

松尾 北朝鮮は、次期米大統領が誰になるか、気にならないのだろうか。

シーガル 北朝鮮側からその話は出なかった。こちらから聞くと、気にしない、という返事が返ってきた。次期大統領が誰になるのか、各国が気にしているが、北朝鮮だけは例外だということだ。彼らが気にしているのは、対北朝鮮政策の行方だけだ。誰が大統領になろうと、関与と和解の路線を守るかどうかだけが気がかりなのだ。

ここで彼らが米国に求めているのは、関係正常化以上のものだ。外交関係よりも、もっと多くを望んでいる。彼らは、われわれが敵対をやめることを望んでいる。われわれが彼らの友人ないしは同盟者になることを望んでいる。政権の問題程度ではないという発想だ。
とにかく米国との私的な接触を拡大したいというのが彼らの考え方だ。最近ではニューヨークフィルハーモニックオーケストラの訪朝が重要な事例だ。

松尾 たしかに、象徴的な訪朝だった。

シーガル 楽団の演奏は北朝鮮中に同時中継放送された。これは間違いなく北朝鮮国民に対するメッセージだった。

−−これらの米国人たちはいったい何者なのか? 彼らは友好的な米国人だ。彼らは自分たちの楽器を演奏するためにやってきた。爆弾を落としにきたのではない−−。

そして、これを命じたのは金正日 だ。北朝鮮のテレビ・プロデューサーの誰かではない。彼は意図的に演奏を生中継で北朝鮮中に流して国民全員が見られるようにしよう、と言ったのだ。

現在、私たち以外にも、さまざまな米国代表団の訪朝計画が進行中だ。

それに、より良い取引をするために、彼らが米国の選挙を待っていたことは一度もない。現に彼らはミサイル問題でクリントン政権と最後まで交渉したし、現在はブッシュ政権と取引している。一九九四年十月の枠組み合意のときも、米議会選挙の数日前まで交渉して仕上げた。

松尾 なるほど。

●テロ指定解除は直接交渉で
シーガル 「北朝鮮は時間稼ぎをしている」という見方は、実際には米国側が動くことを望まない米国人が、それを正当化するための口実だ。米国が動けば次に北朝鮮が動くかどうか分かるだろう。これは米朝関係の実に基本的なパターンだ。それが何度も繰り返されてきた。われわれが前進すると北朝鮮は常にそれに応えてきた。例外は一度もない。断言できる。過去二〇年、時に応じてこのパターンが繰り返されてきた。逆に、米国がすると言ったことを行わない場合、北朝鮮は常に報復してきた。そして常に報復の方法は、核分野で何かするか、あるいはミサイル分野で何かするかの、二つのうちの一つだった。いつもそうだ。だがそれは常に、米国が動かないことへのしっぺ返しだ。それが起き続けている。

二〇〇五年九月十九日に、米国が北朝鮮の外国口座の凍結を求めたときもそうだった。北朝鮮は、凍結を解除するまで六ヵ国協議に出席しない、と言った。われわれがそれに応じないと、彼らはミサイル実験を行い、核実験を行った。中止するよう中国が要請し、次には制裁の脅しをかけても、彼らは動じなかった。制裁を示唆する安保理決議に中国が賛成票を投じると、北朝鮮は核実験の準備を開始した。彼らは制裁も圧力も気にしない。われわれが求めるものを、それによって彼らに強いることは決してできない。同じことが、何度も繰り返されてきた。そろそろ悟ってもいいころだろう。われわれは彼らのやり方が好きではないとしても、彼らは圧力に耐え、われわれよりも多くの梃を持っている。ミサイルと核計画だ。

松尾 拉致問題を抱える日本は苦しい立場に立たされることになる。

シーガル 日本には、この夏の間を通じて北朝鮮と協議し、制裁を緩和する代わりに拉致問題の前進を図るという取引の時間がある。米国は拉致被害者家族に同情しており、日本を助けたいと思っている。だが米国が直接できることは何もない。北朝鮮側が望んでいるのは、この問題での日本との直接交渉なのだ。つまり日本が取引を行い、二〇〇二年の日朝平壌宣言に基づいて、北朝鮮と相互的な措置を取りながら前進することであり、できるかどうかは日本次第。もし日本がそうしなければ、拉致問題での前進は一切ないだろう。

松尾 それは厳しい。

シーガル 要するにこれが和解に向けて前進するために北朝鮮が日本と米国に求めている政治的な措置なのだ。

松尾 あなたは対敵通商法とテロ支援国リストに関して、ブッシュ大統領が十一月までに措置を取れると思っているのか?

シーガル 彼はどちらもやるだろう。それに大統領は、その意思を日本に伝えている。昨年四月のキャンプ・デービッド会談で安倍前首相に話したのだ。

松尾 昨年の話か。

シーガル もし米国がそうしないとすれば実に愚かなことだ。北朝鮮のプルトニウムが増えるだけだからだ。そんなことを誰が望むだろう。

松尾 その後、日本は福田首相に代わったが。

シーガル 私の見るところ福田首相は非常に利口だ。制裁が逆効果であることに気付くだろう。そのせいで日本は、安全保障問題でのけものにされているからだ。一方、北朝鮮側の立場も非理性的だ。日本が制裁を一方的に解除しない限り何もしない、と言っているからだ。彼らの観点からすれば、日本は事実上、六ヵ国協議に参加していない。

●韓国との関係も悪くならない
松尾 つまり日本の制裁解除が外交的な条件となるわけか。

シーガル それが北朝鮮の言い分だ。私の見るところ、北朝鮮は常に相互的な措置によって信頼を構築すべきだと考えている。つまり六ヵ国協議を通じた核の無能力化と申告の前進に対応して、制裁の緩和などが行えるはずだ、という意味だ。もし日本が六ヵ国協議でそうできなければ、平壌宣言に基づいて和解に向かうためには、双方が取るべき相互的な措置を独自に交渉しなければならない。ただ問題は現時点で北朝鮮は日本と話す気がないことだ。私は、そう見ている。彼らが日本は非理性的だと思っているからだ。これだけは確かだ。彼らが日本は非理性的だと思えば間違いなく彼らの側も非理性的になる。いままさにそうなっている。

松尾 だが彼らは米国との関係改善には自信を持っている。

シーガル その通りだ。だが日本にも同じことを望んでいる。もう一つ言いたい。彼らは韓国との関係もさほど悪くならないだろうと思っている。いま南北間で起きているのは、一過性の、ほとんどは口先だけの問題だ。韓国の李明博新大統領は、利口で真剣な人物だ。北朝鮮と問題を起こすことは望んでいない。北朝鮮側は彼はビジネスマンであり、ビジネスマンの考え方をする人物だが、政治家としての考え方を開始するべきだ、と思っている。李明博大統領は過去一〇年間の歴史を無視し、金正日が署名した二つの首脳合意、これらの厳粛な誓約に背を向けることはできない。

私は北朝鮮は戦いたくてたまらないわけではない、と考えている。もし韓国が北朝鮮との裏チャンネルでの対話を開始すれば、彼らは何か前進する方法を考えることができる。すぐ事態を進展させるため分かりやすい手段は、春の植え付け用の肥料を北朝鮮に与え、口先での攻撃を控え目にし、和解のための追加措置に関する協議を開くよう求めることだ。

松尾 つまりこれはゲームの一部というわけか。

シーガル もし韓国側が首脳合意を破棄することに固執し先制攻撃に関して再び言及すれば、深刻な事態になりかねない。だが目下のところ、李大統領はそれを望んでいないと思う。だから私は、南北関係を心配していない。なるようになるだろう。韓国の指導者が米国よりも強硬な姿勢を取った最後の事例は、一九九四年のクリントン政権当時の金泳三大統領だったが、李大統領が、その轍を踏むことはないだろう。

●遺骨問題も交渉のきっかけに
松尾 そうすると、結局、日本独自の交渉がカギを握ることになる。しかし、この点で福田首相の足場は弱い。

シーガル となると北朝鮮側は日本に罵声を浴びせ、何もしようとしないだろう。現在の状況では、日本側が関与の方法を見つけない限り、彼らは日本と取引しようとしないだろう。方法はあるはずだが、日本が彼らと上品で静かに話をして福田首相がそれを良しとしない限り、うまくいかないだろう。制裁が機能しないのは明白だ。北朝鮮は大して困ってはいない。ただ進展を阻んでいるだけだ。とにかく日本としては早急に北朝鮮と直接話し合う道筋を見つける必要があると思う。拉致問題は、六ヵ国協議の対象にはならない。これは二国間問題だ。そして日本は拉致問題での前進と引き換えに、かつて金正日自身が合意した平壌宣言に基づいて前に進むことを考える必要がある。

松尾 私も平壌宣言は日本が持っている唯一といっていい外交的財産だと思っている。

シーガル 米国民は拉致被害者に同情している。助けたいと思っている。だが北朝鮮は日本との直接交渉に固執している。肉親がどうなったのかを家族たちが知るためには、日本自身が北朝鮮との和解に向けて動かなければならない。もし和解路線に動かなければ、肉親がどうなったのかは決して分からないだろう。拉致被害者が生きているとしても日本は決して取り戻せないだろう。取り戻す唯一の道は、北朝鮮と和解することだ。横田めぐみさんの遺骨問題も一つの突破口になりうる。安倍前首相によれば、遺骨は偽物だった。だがそれは、検査を行った結果、それが横田めぐみさんのものかどうか立証できなかった科学捜査当局の発言ではない。安倍氏がそう言っただけだ。それが事実だ。米国にも他の国にも専門家はいる。もっと国際的にも受け入れ可能な検査結果か出せるかどうか、試してみればいい。

松尾 要するに拉致問題で米国は頼みにできないということが、はっきりしてきたわけだ。 

シーガル 日本は米国が何をすることを求めているのだろうか。テロ支援国家リストから北朝鮮を外すのをやめて、北朝鮮の核計画を無能力化するための努力を中断させ、ひいては北朝鮮がもっと核兵器を持つようにさせたいのだろうか。一部の日本人はそう言っているようにも聞こえる。これは日本の安全保障にとって意味のないことだ。米国が北朝鮮を拉致問題で取引するようにさせるのは不可能だ。北朝鮮は、もし日本がわれわれと取引する気なら、拉致問題で取引する用意がある、と言っている。これから数ヵ月、日本には彼らと話す時間がある。米国が北朝鮮をテロ支援国リストから外す前に、日本は試してみるべきだ。

日本国内に米国は信用できないという声が出ていることは知っている。しかし米国ができないことを米国に期待しても、それは無理だ。日本自身の取引こそが北朝鮮に対して拉致問題で譲歩させる唯一の手段なのだ。(翻訳・山口瑞彦)

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