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(トウ)小平の沈黙 渡部亮次郎
<中国共産党中央規律検査委第一書記の陳雲氏ら保守派は1985年6月、項南福建省書記(肩書は当時)が、金もうけのために国民の健康を危険にさらす偽薬まで作る郷鎮企業を野放しにした−と攻撃した。真の標的はトウ小平氏であり、改革・開放だった。

陳雲氏は、「資本主義の道を歩む自由派」項南氏の解任を要求したが、胡耀邦(こようほう)総書記は「項南書記に直接の責任はない」とかばった。党中央の現地調査でも、偽薬による健康被害はないとしていた。

しかし、項南氏は間もなく解任されてしまう。項氏はこれに不服で、トウ小平氏に直訴状を送ったが、トウ氏からの返事はなかった。トウ氏は保守派の意図を察知し、項南氏を犠牲にせざるを得なかったとみられている。

(だから)「項南伝」によると、86年9月、項南氏は、「晋江偽薬事件」に関する中央規律検査委の「判決」が公表された直後、トウ小平氏の長男、トウ樸方(ぼくほう)氏の訪問を受ける。トウ小平氏の指示で、慰問に行ったのだ。

この数カ月後の87年1月、胡耀邦総書記も解任された。>「トウ小平秘録」(産経新聞2008・02・09)

これも同じ理由からである。保守派から自分の身を守るためには、自分の分身を平気で斬る、これが資本共産主義中国最高実力者の最終哲学であった。

胡耀邦が辞任を強要されたのは1月16日の政治局拡大会議である。罪状は集団指導原則に対する違反と政治原則問題での誤り、つまり「ブルジョア自由化」に寛容だったため、さらには1983年11月に訪日、中曽根康弘首相と会談で独断で日本の青年3千人を招待したことも挙げられた。

11月には胡耀邦の後任として趙紫陽が総書記に選出された。失脚後の胡耀邦は会議等でもほとんど発言しなかったといわれる。11月、胡耀邦の後任総書記になったのは趙紫陽だった。

山崎豊子の代表作の一つである、「大地の子」執筆の際に胡耀邦が全面協力を行い、閉鎖的な中国政府各方面に取材に応じるよう指示を行ったエピソードもある。(出典 文春文庫「大地の子と私」)

1983年11月の中曽根康弘首相と首脳会談、友好関係を築く。この時の日中首脳会談で『日中友好21世紀委員会』の設立に合意。このとき、背丈の低い胡を都内で見た。それが見納めだった。

これに先立って胡は1978年12月の11期三中全会以後、小平のもとで文革の清算と改革開放政策が進められる中、1980年9月、党主席・首相だった華国鋒は経済政策や文革への姿勢などを批判されて首相を辞任。

その後継に趙紫陽が就任していたが、さらに81年6月に華が党主席も辞任すると、胡耀邦が党主席に就任した。この頃の胡耀邦は「天が落ちてきても胡耀邦と趙紫陽が支えてくれる」と小平が語るほどの信任を受けていた。

1982年9月には党規約改正によって党主席制が廃止されて総書記制が導入されると、党トップの総書記に就任し、改革開放路線と自由化路線を打ち出した。

この頃、胡啓立(政治局常務委員)ら、胡耀邦を中心とした共青団グループが改革派として活躍。(現総書記の胡錦涛も胡耀邦に連なる共青団出身である)。1986年5月には「百花斉放・百家争鳴」(双百)を再提唱して言論の自由化を推進した。

しかし、9月の六中全会では、胡の政治改革は棚上げされ、逆に保守派主導の「精神文明決議」が採択され、胡は保守派、長老グループらの批判の矢面にさらされ辞任に追い込まれて行った。

その2年後、第2次天安門事件が起き、趙紫陽も哀れをとどめる事になる。トウがまたも分身を見捨てるからである。1989年4月15日に胡耀邦が心筋梗塞のため死去。

胡耀邦追悼と民主化を叫ぶ学生デモは激化していった。五・四運動の70周年記念日にあたる5月4日には北京の学生・市民10万人がデモと集会を行い、六四天安門事件へと発展した。

ここで趙紫陽総書記も学生運動に同情的な発言をしたことで、小平ら長老の鎮圧路線を妨害するものとされて失脚したのだ。

それにしても胡耀邦は国民から愛された開明的指導者だった。長老・保守グループの批判、さらには小平の政治的引き締めの要求にも応じなかったため最後は解任されたが、中華人民共和国はその大きなツケを天安門事件として支払うことになった。

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