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無法の訴訟ジャングル(1) 伊勢雅臣
法は牙、裁判は爪。無法の訴訟ジャングル・アメリカの「肉食恐竜」弁護士が日本を襲う。

■1.間違えて訪問した青年を射殺しても無罪■
93年5月にルイジアナで、日本人留学生・服部剛丈君が、家を間違えてノックし、出てきたロドニー・ピアーズにマグナム銃で射殺された。審議は4日間で終わり、陪審員団による審理はわずか3時間半で「正当防衛」により無罪と決定した。

審理は通常は、短くても2、3日はかかる。昼食に出ていた服部君の父親が法廷に戻った時は、評決は終わり、玄関には笑顔と談笑に包まれた市民であふれていた。

ルイジアナは人種差別の根強い所で、被告の父親はクー・クラックス・クラン(黒人・ユダヤ人排斥の秘密結社)に所属していた。またピアーズは、銃いじりが好きで、庭に入った犬を撃ち殺して喜んでいた。陪審員団は白人の同胞をこんな事件で有罪にはできない、と「ご当地評決」を下したのだ。

刑事訴訟をあきらめた服部君の両親は、94年9月にロドニー・ピアーズに対し、損害賠償請求訴訟を起こした。今回は被告側のミスもあって、珍しく判事裁判となった。判事は、44口径マグナムという、撃てばかならず相手を射殺する凶器の「引き金を引くなんら正当な理由は見つからない。また被害者服部君側に何の落ち度もない」として、ピアーズに65万3千ドルの賠償を命じた。文明国の裁判ならこれが妥当な判断である。

■2.酔っ払い運転の事故で24億円賠償■
逆に罪もないのに、法外な罰を与えられるケースもある。ペンシルバニア州在住のローレンス・アイマーズは、泥酔状態でホンダのCB550にまたがった。時速約90キロで左折しようとした所、引っ込めるのを忘れていたスタンドが接地し、転倒。脊椎を損傷して手足の機能がマヒする重傷を負った。

ホンダは運転者が泥酔状態で、無謀なスピードで運転していたこと、事故現場の検証から、タイヤがすり減って丸坊主状態のまま、急ブレーキをかけてロックされた事が転倒の直接原因だと主張した。

しかし弁護士は、オートバイのスタンドは、接地した際、自動的に引っ込むべき機能をもっていなければならず、そうなっていなかったことは、製造物責任者(PL)法にもとづく重大欠陥であると主張した。評決では、ホンダの一方的な敗訴となり、1970万ドル、93年当時の為替レートで24億円もの賠償を命ぜられた。

酔っ払いが暴走して事故を起こしても、オートバイメーカーが24億円もの賠償を命ぜられ、罪もない青年を射殺しても無罪となる。アメリカは正義と人権を重んずる文明国なのだろうか?

■3.弁護士は爬虫類?■
ホンダから24億円を奪い取った剛腕弁護士は、おそらく成功報酬の相場として4割、すなわち、8億円程度を受け取ったであろう。無罪で喜んだピアーズも後で、弁護士から数百万円もの請求書を渡された時には真っ青になっていたかもしれない。なにしろベテラン弁護士なら1時間400ドル以上のタイムチャージはざらである。

「弁護士とその他の爬虫類」というジョーク集がベストセラーになった。弁護士には冷血残虐な肉食動物というイメージがあるようだ。

映画「ジュラシック・パーク」の最初の方で、トイレに逃げ込んだ弁護士を、ティラノサウルスがパクリと食べてしまうシーンがあった。アメリカの映画館では、ここで大爆笑が起きる。弁護士という爬虫類を、もっと大きな恐竜が食べてしまう、という痛快なジョークなのである。

米国の訴訟に要する費用は、国防費総額の3倍以上の年間8千億ドル。弁護士人口も急増中で、93年には司法試験合格者3万8800人と、日本の弁護士、裁判官を含めた法曹界人口の2倍がわずか一年で生み出されている。98年には90万人を突破し、単一の職業としては、軍人170万人に次ぐ規模となった。

いまやアメリカは、弁護士という「肉食恐竜」が90万匹も跋扈して、獲物を探し回っている無法ジャングル「ジュラシック・パーク」そのものである。法と裁判は、弱者を守るものではなく、恐竜の牙と爪なのだ。恐竜たちがどんなふうに弱者を食い物にしているのか、観察してみよう。

■4.太った獲物を狙え■
90年4月にオレゴン州の高校生マット・ゾイヤー君は、マクドナルドの深夜アルバイトをした翌朝、疲れがひどいので早退したいと店長に言った。

許可を得て、愛用のニッサンの中古車で帰宅する途中、居眠り運転により、センターラインを超えて、対向車フレッド・ファバティの小型トラックと正面衝突した。少年は即死し、ファバティも脚を骨折して、治療費5万ドルもの大怪我をした。

ファバティ氏は被害者と認定されたが、母子家庭だった少年の母親を訴えても、賠償金は払えない。弁護士は関係者の中で一番金の払えそうなマクドナルドを訴えることを勧めた。

その根拠として引っ張り出したのが、オレゴン州法「バー経営者の酔っ払い事故共同責任」法である。ドライバーが酔っ払い運転で事故を起こしたら、酒を飲ませた店にも責任がある、というものだ。弁護士はこれを援用して、店長は、少年が店を出るとき、疲労でそのまま運転すれば危険であることを「十分予知できたはずだ」というのである。

マクドナルドの店長は、何がなにやら分からないまま法廷に引きずり出され、陪審員団は9対3で、原告の訴えを支持して40万ドル(5千2百万円)の支払いを命じた。今度は、少年の母親から同じ責任理論で、店長に対して1千万ドル(13億円)の賠償訴訟を起こされている。

こうした事故の場合、他にも、少年の車のメーカー(この場合はニッサン)、対向車のメーカー、道路の補修を担当する市か州の道路局など、いろいろな獲物が考えられる。これらの中で、もっともディープ・ポケット(懐が豊か)な「太った獲物」を狙うのが、賢い恐竜の戦略である。
 
■5.骨までしゃぶり尽くせ■
85年、オレゴン州のカール・オバーグは、ホンダの3輪バギー車に乗っていて、勾配のきつい坂道を登ろうとした。こういう時はハンドルにのしかかるように体重を前にかけなければならない。それをしなかったオバーグは、車ごと後ろにひっくり返り、下敷きとなって脳挫傷、顔面骨折の大怪我をした。

日本なら自己転倒で、自分の技能未熟のせいにする所だが、オバーグと弁護士は、「安定性がいいはずのバギー車が後ろに転覆したのは、メーカーの設計に欠陥があったためだ」とオレゴン州裁判所にホンダを訴えた。州裁判所の陪審員団は原告の主張を全面的に認めて、ホンダに治療費1万9390ドル、慰謝料90万ドルの支払いを命じた。約1億2千万円である。

恐ろしいのは、これからだ。こうした”欠陥商品”を売った企業の社会的責任を金銭で贖わせるアメリカ独特の制度「懲罰のための賠償」を陪審員団が決める。これには上限がなく、企業の年収や資産をもとに陪審員が勝手に決めてしまう。

ホンダのような大企業は大変だ。なんと500万ドル、約6億5千万円を払えとなった。こうして原告と弁護士の手元には、治療費約2万ドルの300倍近い金額が転がりこむことになる。

「太った獲物を捕まえたら、骨までしゃぶり尽くせ」、これが第二の戦略である。

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