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2008年アメリカ大統領選挙展望(5) 松尾文夫
○ 民主党、チャンス生かせるか
もちろん、民主党にとって政権奪回のチャンスであることは事実です。8年間続いたブッシュ共和党政権がイラク戦争の泥沼に引きずり込まれてしまい、大統領の支持率も20%台から30%台前半という歴史的にも最低の水準で推移しています。2006年の中間選挙では、民主党が上下両院の多数を占めたことから、アメリカ国民はホワイトハウスの主を変えて、局面の転換を選択するのではないかと、予測することは可能です。ブッシュ政権を支えてきたアメリカ経済の堅調も、昨年春からのサブプライム・ローンという市場資本主義の万能神話そのものを脅かす落とし穴にはまり込み、バレル100ドル台に跳ね上がった原油高もあって、本格的な景気下降が懸念されています。 

「変化」をスローガンにしたオバマ上院議員が、昨年秋からクリントン候補を追い上げ、アイオワ州では抜き去ってしまった事実は、こうした追い風を物語るものです。今年の上下両院選挙では、上院での共和党再選議席数が民主党より多く、また引退議員も続出していることから、民主党の上下両院支配は続くとの予測がもっぱらです。各種世論調査でも、民主党政権の誕生を望む声が多数を占めています。

しかし、本来ならニューデイールの伝統をくむ民主党には、リベラル政策で勝負する気配はどこにも見られません。 サブプライム・ローン問題に対して、大恐慌時の1933年につくられた「住宅所有者ローン公社」に似た「家族差し押さえ救済公社」を設立すべきだとの構想などは、むしろAIE など共和党よりのシンクタンクから出ているのが実態です。つまりニューデイール型の「大きな政府」の政策構想は、民主党側にとって“禁句”というわけです。

ある友人は「民主党リベラル派はどこかにいってしまった。」とはき捨てるようにいっていました。要するに、「9・11」以後のアメリカの保守化、内向きの世論はまだ続いているというのが、私の受け止め方です。保守派にすり寄るクリントン候補をアイオワで破ったオバマ候補が、この“禁句”にどう挑戦するかが、これからの見所です。

保守化、内向きのアメリカの極めつけは 、11月20日アメリカ最高裁が「修正第二条はアメリカ市民に銃を持つ権利を認めているのかどうかについて、その権利を規制するのは憲法違反だとの首都ワシントンでの下級審の判決について審議し、7月までに立場を明らかにする」との発表を行ったことでした。

アメリカ合衆国憲法修正第二条は、「必要悪」としてのみ連邦中央政府の存在を認め、その専制化を防ぐために、人民に武装する権利を認めるとのアメリカ建国システムのひとつです。1791年の制定以来今も続いており、20世紀にはいってからは、その解釈をめぐって意見が分かれ、最高裁判所も1939年の「玉虫色」のミラー判決以来、裁定を保留してきたものです。保守派はアメリカ民主主義の原点とあがめており、その影響のもとにあるブッシュ政権下では、銃規制は現在事実上の野放し状態で、後を絶たない銃乱射事件の元凶ともなっています

ブッシュ政権になって、ロバーツ最高裁判所長官以下、二人の保守派判事が加わったアメリカ最高裁が、いよいよ69年ぶりに、保守派、具体的には修正第二条をアメリカ民主主義の神聖な権利だと主張するNRA(全米ライフル協会)らの主張にそった判決を下す可能性が出てきたわけです。

7月といえば、民主、共和党両党の全国党大会を前に、選挙戦が本格化している最中で、ここでも保守派の主張に対して、民主党の候補者は「踏み絵」を強いられることを意味します。 ジュリアーニ候補は、この最高裁の発表後、すぐNRA支持の立場を明らかにしています。ヒラリー候補の非合法移民の運転免許証に対するあいまいな態度のつけと同じような代償を候補者に強いる可能性が出てきたということです。

その意味で、今年の選挙戦は、最後には、修正第二条の解釈をめぐる議論と、移民の国アメリカが非合法移民をどのように扱うか、という「アメリカという国」の根源を問われることになりそうな雲行きです。「銃を持つ民主主義」英訳本を携えての旅で、私が肌で接したのは、この「先祖がえり」の課題に苦悩するアメリカの素顔でした。

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