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2008年アメリカ大統領選挙展望(4) 松尾文夫
○「保守票」取り合いのアイロニー
事実、旅の途中、指名を争う民主党各候補の発言を聞いていても、イラク問題での攻めの姿勢は見えませんでした。 逆にヒラリー候補に典型的に現れているように、指名獲得後の本番選挙戦での保守票の確保を意識した発言が目立っていました。民主党は知らず知らずのうちに、八年間のブッシュ政権を支えてきた「保守票」の土俵に入り込んでいるという印象でした。

たとえば、一時は独走態勢に入ったとまでいわれたヒラリー・クリントン候補が11月に入って失速し、初戦のアイオワ州でオバマ候補に敗れてしまった理由も、この保守票の「土俵」を意識したあまりのつまずきだった、といえます。私は11月の旅で、この彼女の苦難を目撃しています。

2006年の中間選挙のころから、南西部の共和党保守派は、今では1200万人にまで膨れ上がっている、いわゆる非合法移民の問題に対して、強制的国外退去やメキシコ国境に流入防止の壁を作るなどの強硬策を主張して、政治的な争点とすることに成功してきました。今年の選挙戦でも、内政面での争点のひとつとしてクローズアップされ、各候補とも「非合法移民に運転免許証を与えるべきか否か」といった具体的な政策についての賛否を問われるようなりました。

クリントン議員は、伝統的に移民問題ではリベラルな態度、つまり一定の基準で選別した後は、段階を経て非合法移民にもアメリカ市民権獲得のチャンスを与えるべきだとの民主党の主張との整合性とヒスパニック票対策を意識してか、この免許証問題では、最初あいまいな態度に終始しました。

そこを「変化」をスローガンとする49歳の黒人候補オバマ上院議員に突かれ、「あいまいな発言を繰り返している。イラク戦争への立場をはじめ、すべて正直に語っていない。結局ワシントンのエスタブリッシュメントそのものだ」と、激しく非難され、11月に入っての民主党候補全員による討論会で、とうとう「運転免許証を与えることに反対する」と明言しました。保守票を意識しての転換でした。しかし、時すでに遅く、オバマ候補に勢いを与えることになりました。

確かにヒラリー候補は、一貫してイラク戦争を支持し、現地の米軍慰問も頻繁に行うなど、「タカ派ヒラリー」として、保守票すりよりの実績を積み重ねてきただけに、イラク戦争支持の議会決議に加わっておらず、一貫して戦争反対の立場をとってきたオバマ氏に痛いところを突かれたわけです。

こうした保守票のめぐる駆け引きの落とし穴は、共和党側でもみられます。有力視されていたジュリアーニ前ニューヨーク市長や ロムニー・マサチューセッツ前知事といった東部の中道派、あるいはリベラル色の強い実績を持つ候補者たちは、クリントン候補と同じく、堕胎や同性愛者の権利反対、 銃規制反対といった保守派の主張に歩み寄るのに苦労してきて、ジュリアーニ候補などは11月、宗教右派の超大物、パット・ロバートソンの支持を得るなどの努力を積み重ねてきました。

昨年12月に入って、説教牧師出身でいわゆる宗教右派の本流としての実績を持つハッツカビー前アーカンソー知事が台頭し、あっという間にアイオワ州を制したのは、ジュリアーニら保守派すりより候補に飽き足らない宗教右派の巻き返しと位置づけられます。(続く)

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