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2008年アメリカ大統領選挙展望(2) 松尾文夫
○「神」にゆだねる大統領
もちろん、今年のイラク情勢で最大の焦点となるアメリカ軍撤退の「出口」を巡る議論などで、ブッシュ大統領が共和党指名の候補と対立し、ジョンソンと同じような共和党自滅の状況を生み出す可能性も、否定できません。

しかし、今の時点でのこうしたブッシュの「距離を置く」姿勢から、少なくとも八月の共和党全国党大会で指名される大統領候補者が、イラク「出口」戦略などでブッシュ大統領と対立し、批判する自由を手にすることは確実と思われるからです。 ジョンソン大統領がハンフリー候補者に対し、自らの現職副大統領であったこともあって、その選挙戦のすべてに自らの政策との整合性を求めて、がんじがらめにした1968年とは、100パーセント違う状況です。

それに、引退を表明していて、イラク戦争泥沼化の責任を一身に背負う “悪役”を演じうるチェイニー副大統領の存在とあわせて、共和党候補者は政治的に重要なフリーハンドを確保することが可能になります。このアイロニーに満ち満ちたアングルが、今後の選挙戦をウオッチする上で、重要になると思っていす。共和党にとっての数少ない勝機がここにあると思います。ブッシュ外交を「傲慢で、批判に耳を貸さない」と決めつめたハッカビー候補が、アイオワ州を制したのは、その恩恵に浴したものといえる。

この点で、ブッシュ大統領の心境について、ワシントンの長年の政治記者が面白いことを言っていました。

『大統領は毎朝、牧師の説教の一節を朗読するなど、大変信仰心に厚く、政権末期を迎えた今も自らの業績についての評価は、最後は神にその判断を任せるといった、達観した心境に達しているのではないか。その意味で大変珍しい大統領であると思う』

朝5時半に起き、夜9時半には寝るという、早寝早起き大統領としての日常を毎日平然とこなし、かってのジョンソン大統領にあったような疲れや苛立ちは一切感じられないということでした。支持率の低下もまったく気にせず、ワシントンではもはや大統領の支持率はニュースにもならないと言われているようです。

○ 消えたイラク即時撤退論
そこで、今、長期的にはともかく短期的には、ブッシュ大統領が昨年年頭踏み切ったアメリカ軍増強路線が成功し、民主党にとって最大の攻め口であったイラク戦争の泥沼が小康状態を迎えている事実にも注目しておく必要があると思います。

事実、昨秋から少なくともイラク現地での米兵戦死者はゼロの日が続くようになり、ニューヨークタイムズ紙始め、これまでイラク戦争に批判的だったマスコミもバグダット市内での結婚式風景の写真を一面トップで掲載するなど、治安回復を認めるようになりました。

民間の「イラク多国籍軍犠牲者集計」によると昨年10月から3ヶ月間のアメリカ兵の死者総数は98人、三ヶ月単位で見て戦争開始後最低を記録しています。2006年の最悪記録331人(4月―6月)と比べれば、改善のほどは明らかです。つまり、ここにきてイラク戦争は、選挙戦の争点として一段下に下がる様相を呈しているということです

もちろんここでも、こうした治安回復が、イラク国内の持続的な民族和解、中央政府の指導力強化につながるのかどうか、については疑問符をつけておかねばなりません。昨春に増強したアメリカ軍の力で、旧スンニ派をアルカイダグループから分断して、取り込み、合わせてイランのシーア派のてこ入れを抑止することにも成功し、シリアからの過激派流入も減って、治安を回復させたと、とのブッシュ政権の説明するイラク現地の情勢が果たしてその通りなのかどうか。イラク現地の情勢の不透明性は、依然として続いています。

しかし、ここにも直視しなければならない現実があります。民主党側の変化です。昨年春以来の議会を抑えた民主党側が再三の支出カットをかませて、ブッシュホワイトハウスに対してアメリカ軍撤退スケジュールの具体的な設定を迫る作戦も。すべて大統領の拒否権で葬り去られて、行き詰っていることです。民主党側にも共和党反戦派の協力を得て3分の2の多数で拒否権を覆す力がないからです、最近では、議会での撤退論は影を潜めているのが現状です。

それのみならず、逆に民主党側では、イラク現地での治安改善を受けて、リード上院院内総務、レビン上院軍事委員長ら中道穏健派を中心に、共和党のマコンネル上院院内総務、ワーナー上院議員らとの間で、ブッシュ政権側の意向とも折り合うことを求めて、超党派的なイラク「出口」戦略の構築に向けての動きが始まっています。(続く)

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