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流刑地、海南島はいま 宮崎正弘
共産党大会が終わって、なぜか、流刑地のことを考えている。
 
今回、ひとりの失脚者もでなかった不思議。「腐敗」の象徴と言われる賈慶林が政治局に居残り、予想に反して、大会はPTA総会のごとくとなり「太子党」「共青団」「上海派」にくわえて「元老幇」と言われる古参幹部が、いきいきと大会を取り仕切ったからである。

中国旅行にビザが必要だった時代、日本人のビジネスマンが急な出張での抜け道は海南島だった。

当時、海南島は観光促進のため「アライバル・ビザ」という例外措置が認められており、空港で30日間有効のビザが発給された。これさえ取得すれば、何処へ行っても良い。ほかにアモイも同じ制度があったが五日間以内、アモイ市内のみと限定されていた。

もう一つの抜け道は深せん。香港から電車ではいって羅湖国境の旅行代理店で2万4千円を支払うと数次ビザ(半年有効)が「買えた」。筆者はよくここで緊急ビザを取得した。

海南島へ行った理由は、ちょうど中国がボーアオ会議(アジア版ダボス会議)をぶち揚げた時で、2001年には中曽根大勲位が出席、02年は小泉首相が現職で海南島を訪問したため各社特派員が急遽、海南島を取材した。

その間に、米軍偵察機の不時着事件があって米中関係が緊張したこともあった。

玄関の海口へは飛行機でもフェリーでも行けるが香港からの便が一番便利だ。ここの工業団地に、当時猖獗をきわめた日本製バイクの偽物工場があった。

海口で一番見たかったのは海瑞(明代の清廉な政治家)の墓。なにしろ文革の口火を切ったのは海瑞をめぐる京劇の上演だったからである。

江青夫人は海瑞を劉少奇と比喩した反対派の策謀と妄想し、毛沢東に告げ口、それが実務派追い落としという文革の口火を切ったのだ。その海瑞の出身地でもある。

その付近に記念館でもあって、どのような歴史解釈がされているか、興味があった。しかし、墓いがい何もなかった。あの清廉潔白の政治家を、おとずれる共産党幹部は、おそらくゼロに等しいのであろう。

もともと海南島は流刑地で、漢族の入植は近代になってから。原住民はリー族、イ族など。漁業と農業、牧畜に従事しのんびりと暮らしていた。いまも段々畑はのどかである。

筆者は海口から最南端の三亜へ向かう長距離バスに乗った。日本の援助でつくられた高速道路を突っ走り四時間で島の南端へたどり着ける。三亜は「中国のハワイ」と言われる風光明媚なリゾート、海水浴場、林立する豪華ホテルにはプールも完備している。

▼海南島のリゾートを買いあさる投機集団
おり悪く風が強い季節で曇天、とてもリゾート気分ではない。私は日程を切り替え、リー族の集落があるトンザへ行くことにした。

付近の海水浴場の周辺には豪華な別荘が建ち並び、売られていた。富と貧困の二極分化を回避するべき共産党が、その党を率いる人達と、その利権に繋がる投機集団が、こうした別荘群に投資しているのである。
 
三亜市内から郊外までの舗装路を離れると、酷い凸凹道を揺られること三時間、山間が急にひらけ棚田が広がる。(あ、これは平家落人物語か)と私は突然、栃木県の湯西川温泉を思い出した。風景が似ているのだ。
 
漢族に追われ、リー族は山奥へ山奥へと逃れ、途中の道を塞いだ。その名残がいまも山奥に突如拓ける棚田風景でユートピアのような場所である。途中で「入山許可書」をバスの運転手が貰っていたが、これは少数民族の居住区へ行く手続きというより山の中腹にあるレーダー基地への闖入者の警戒だろう。

旅館では外国人賓館という別館に泊められ、食堂へ行ったら三百人の宴会が出来るスペースに客は筆者だけ。仕方がないので料理を四品注文し、地元の酒を飲んだ。それで440円だった。安いのなんのって。

それから町へ再び繰り出したが、寂寥として屋台も何もない。ネオンどころか、午後八時をまわると店が一軒も営業していないのだった。このトンザ市は最近「五指山市」と改称された。(この拙文は『共同ウィークリー』三月号に加筆しました。「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
| 宮崎正弘 | 17:18 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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