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生命尊重の深沢晟雄村長 古沢襄
今朝の東京新聞に深沢晟雄氏という地方政治家のことが出ている。NHKの「その時歴史が動いた」で旧沢内村の深沢村長の事績が放映されたばかりなのだが、深沢村長が亡くなって四十年以上もたった今、あらためて深沢精神が話題となるのは、都市と農村の貧富格差が大きな社会問題になっているからであろう。

<深沢晟雄(まさお)が五十九歳で病に倒れてから四十年以上がたつ。岩手県の山間部に位置する旧沢内村の村長を約八年間務めた。村民の三分の一に当たる二千人を超える人が雪の沿道を埋め、遺体を乗せた車を見送ったと伝えられる

▼当時の沢内村は豪雪と貧困、多病多死に苦しんでいた。特に乳児死亡率は全国平均の約二倍もあった。そこで深沢は「生命尊重」の政治を旗印とし、まず「乳児死亡率ゼロ」を目指した。巡回検診、保健師の増員と次々に手を打ち、五年で目標を達成している

▼成し遂げた仕事はこれだけではない。国に先駆けて六十五歳以上の人の診療費の無料化を打ち出し、一年で対象を五歳引き下げている。深沢はよく「国や県が血のかよった政治をやってくれなけりゃ、我々(われわれ)がやるだけだ。格差を放置できない」と話していたという(及川和男著『村長ありき』)

▼国は沢内村に追随したものの、やがて一部本人負担に切り替えている。しかし深沢の志は、村立病院が六十歳以上の人を無料で診療する制度として、二年前に合併で村が消えるまで受け継がれた。財政的には厳しかったろう。「使命ありき」を感じる

▼中央と地方の格差が深刻化しており、政府は「地域活性化統合本部」を発足させた。全閣僚がメンバーで、地方再生に向けた戦略を一元的に立案し、実行するのだという

▼中央からの押しつけになっては困る。今こそ深沢のように、地域の苦しみをよく知る、使命感にあふれた首長の出番である。見当たらないときは、住民の一票で交代させるしかない。(東京新聞・筆洗)2007年10月22日>

昭和39年5月に深沢村長は「深澤晟雄の政治理念」を発表している。国や県庁にあえて反逆して、生命尊重の旗印を高く掲げて、自ら信じる村政を貫いた反骨精神が伝わってくる。

<沢内村の特徴は、第一は極めて貧乏であること。第二は極めて不健康であること。第三は極めて雪の深いことであります。

こうした環境の中で、郵便の配達も止まってしまう猛吹雪を恨みながら、石コロのように死んでいった病人を、余りにも沢山私は知っている。口に糊することも出来ない人達が、薬草と売薬を信じ、近代社会や近代医療を嘲りながら死んでいった例を知り過ぎるほど私は知っている。生命の尊重されない政治や世相の縮図のように、私の村ほど露骨にこれを現したものも少なかろう。

人命の格差は絶対に許せない。生命の商品化は断じて許せないと考えることに無理があろうか。このことは感傷的なヒューマニズムでもないし、人権尊重という民主主義の題目唱和でもない。それは人道主義とか憲法とかの生ぬるい思念の問題でもなく、もっと切実な生々しい生命自身、人間自体の体質的な現実課題であると解するのに何の無理があろう。生命健康に関する限り、国家ないし自治体は格差なく平等に全住民に対して責任を持つべきであり、それは思想以前であり、ましてや政策以前の当然の責務であるというのが私の政治理念である。

私は自分の政治理念を不動のものと考え、内にあっては村ぐるみの努力を惜しまず、更に外からの暖かい理解と協力を信じながら、住民の生命を守るために私の命を賭けようと思う。(昭和39年5月)>

冬は二メートルの積雪で陸の孤島と化す岩手県の寒村の出来事だから深沢村長の奮闘は全国には知られなかった。それを全国に先駆け、乳児死亡率をゼロにするために立ち上がった沢内村村長として紹介したのは、一関在住の作家・及川和男氏だった。

新潮社から発刊された「村長ありき 沢内村・深澤晟雄の生涯」(昭和五十九年刊)は、大きな反響を呼んで、すでに十九刷。

この本を読んだ新劇俳優の森幹太氏は深く感動した。昭和六十二年、森氏が主宰する劇団銅鑼の創立十五周年記念公演として深沢村長を主人公にした「燃ゆる雪」を上演、森氏は自ら村長役に扮した。これが大きな反響を呼んで全国公演三百回の記録を残している。

あれから二十年が去って再び深沢村長が注目を浴びている。湯田町と沢内村が合併して西和賀町になったが、生命尊重の深沢精神は脈々と受け継がれている。息の長い政治家だと思う。
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