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糸で縄を買った 渡部亮次郎
第2次世界大戦終結後、世界経済はアメリカのリーダーシップの下で、貿易と為替の自由化を強力に進めていた。敗戦国日本も、アメリカの庇護(ひご)の下で戦後復興と国際社会への復帰をめざしていた。

このような状況下で日本のアメリカ向け輸出は急増し、繊維、雑貨類、金属製洋食器などで最初に対米輸出自主規制をおこなわなければならなかった。

とくに繊維については、1ドル・ブラウスに代表される安い日本製綿製品により、アメリカ繊維産業が大きな被害をうけたため、日本は1956年(昭和31)1月から輸出自主規制を行った。

62年1月には綿製品の国際貿易に関する短期的取り決め(STA)、ついで63年1月には長期的取り決め(LTA)が結ばれた。しかし、この頃はまだ貿易摩擦という程ではなかった。

その後、1960年代後半には日本の貿易収支の黒字基調が定着し、繊維の対米輸出は次第に最初の日米貿易問題として顕在化してきた。貿易摩擦の対象品目は綿製品から毛製品、化学繊維製品に移り、これら3品目の日米間取り決めの1本化がはかられた。

当時の佐藤栄作内閣には戦後のどの内閣も成しえなかった悲願があった。沖縄返還である。敗戦によりアメリカに占領されたままの沖縄を外交交渉により返還させることは佐藤内閣の公約であった。

一方、アメリカ(ニクソン大統領)にも悲願があった。1ドル・ブラウスに代表される安い日本製綿製品の輸入阻止である。

このため佐藤首相は担当する通産大臣に大平正芳、宮沢喜一と自らは強力と信ずる有力者を配したが一向に解決しなかった。時あたかも自身の後継をめぐって福田赳夫と田中角栄が熾烈な戦いを水面下で展開していた。

佐藤としては田中は派閥を任せてきた側近ではあるが「なにせ小学校卒、教養が無い。そこへ行くと福田は東大での切れ者。後継者は福田」とハラに決めていた。

そこで昭和46(1971)年7月5日の第3次改造内閣では福田には貫禄付けを狙って外相を与えたが、田中には難問中の難問が控えている通産大臣を与えた。私は田中に恥をかかせて後継を一旦は諦めさせようとしたのだと思った。私は勝ち馬(の筈の)福田の担当だった。

ところが福田には運が無かった。党内支持の頼りとした参議院議長重宗雄三が議長4選工作をしている頃、胆石手術のため入院。重宗は手も無く4選断念に追い込まれた。田中は参院自民党の多数派工作を堂々と進めることができた。

田中は大平や宮沢とは頭の構造が違っていた。彼らは日米繊維交渉を外交交渉と見ていたが、田中は単なる困りごとと判断。予ねてから子飼いにしてきた大蔵官僚と密かに話をつけ、問題をあっという間に解決してしまった。

それは2000億円で福井県などの織機を買い入れて潰すというもの。大平や宮沢、ひいては佐藤も考えの及ばなかった発想だった。田中は就任3ヶ月目の10月15日には米大統領のケネディー特使と日米繊維協定の了解覚書に仮調印するという早業だった。

おかげで沖縄返還も本決まり。佐藤がアメリカのサンクレメンテ島での日米首脳会談に福田、田中の両閣僚を伴って出席、何とか後継総裁選挙への出馬断念を田中に説得しようと試みた。

しかし、ニクソンが田中をあからさまに優遇。ニクソンとしては当然の措置だった。また田中も佐藤に隙を与えなかった。田中は福田にすでにして勝ったのである。

角栄と福田の佐藤後継争いは「角福戦争」とまで言われたが、勝負を決めたのは後に言われる「金権」だけではなかった。東大出は持ち得ない柔軟な発想と的確で強力な行動力。福田にはこれが無かった。カネが角福戦争を決めたのではない。福田を取材していてつくづく思ったことである。

佐藤は糸(日米繊維交渉の決着)で縄(沖縄返還)を買ったといわれノーベル平和賞を受賞した所以。だからこそ福田を後継者にと言う構想は夢と消えた。縄は角栄のお蔭、ノーベル賞も角栄の陰である。

更に言えば、だからこそ後年、福田は大平と「2年」と言う密約まで交わして総理になりたかったのだ。あのままでは死んでも死に切れなかったろう。参考:Microsoft(R) Encarta(R) 2006. (C) 1993-2005 Microsoft Corporation. All rights reserved.【執筆:07・07・06】
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