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共同のザトペック 古沢襄
夜中に目を覚ますと、時差の関係で海外ニュースを読むようにしている。新聞・通信社でも外報部は夜中が一番忙しい。夕刊紙面に外報ニュースが多いのは、そのためである。外務省の記者クラブにいた頃、古手の外務官僚から「共同のザトペックを知っているか」と聞かれたことがある。

エミル・ザトペック・・・人間機関車と呼ばれた。一九五二年のオリンピック・ヘルシンキ大会で、三種目優勝を果たしたチェコスロバキアの陸上競技選手。生憎、共同のザトペックは知らなかった。

一九五〇年代の外務省は、在外公館の活動が活発でなかった。敗戦国の外務省だから海外での情報活動にも自ずから限界がある。海外情報は共同通信社に夜中に入ってくる外国通信社の情報が一番早く確実であった。

共同のザトペックは朝九時前に出勤して、海外情報を持って外務省の各課を回る日課を自分に課していたという。いつしか「共同のザトペック」というあだ名がついたという。

「名前は何というの?」と私。

「小田島さんといったな。色の黒い人・・・」

「それなら政治部長の小田島房志さんだよ!」

岩手牛のあだ名がある小田島政治部長にザトペックのあだ名があるとは知らなかった。新聞の朝刊には間に合わない海外ニュースを、いち早く外務省に伝えて反響をとる小田島ザトペックの健脚には、シャッポを脱がざるを得ない。

その頃に比べると外務省の情報収集能力は飛躍的に高まった。むしろ、その分析能力が試されていると言うべきであろう。新聞・通信社も洪水のように入ってくる海外情報から先見性のあるニュースを見分ける能力が試されている。

今朝のプラハ発の日本特派員のニュースが面白い。ドイツのハイリゲンダム・サミット(主要国首脳会議)を訪れるブッシュ米大統領は、プラハ市内で演説している。環境問題ではない。

読売の貞広貴志記者は、ブッシュがロシアと中国を、「いくつかの分野で大きな意見対立がある」国として並べたと伝えてきた。中国については、「指導者が政治開放をせず経済開放を続けられると信じている」と批判。北朝鮮に関しても「反対意見への残忍な弾圧」を糾弾した。

日経の丸谷浩史記者は、「中ロ両国とは共通の利益がある部分では協力しているが、強い意見の相違もある」とブッシュ発言をとらえ、「良好な関係の部分があるから、意見の相違についても話し合える」と穏やかな見方を示していた。

しかし北朝鮮に対しては「最悪の独裁国家である北朝鮮、ベラルーシ、ミャンマー、キューバ、スーダン、ジンバブエの反体制派、民主活動家と話し合ってきた。過激主義者との戦いで最も強力な武器は銃弾や爆弾でなく、普遍的な民主主義だ」と厳しい。

時事通信は、かなり明確なスタンスをとっている。そのまま伝えよう。

【プラハ5日時事】チェコ訪問中のブッシュ米大統領は5日、首都プラハで各国の反体制民主化活動家らが集まった会合に出席して演説、「世界の圧政の終えん」に向けた自由主義イデオロギーの重要性を説いた。この中で大統領は、ロシアや中国の民主化の遅れも問題視する立場を示し、特にロシアについては民主化改革が「頓挫(とんざ)している」と批判した。

 ミサイル防衛システムの中欧配備をめぐって対米強硬姿勢を続けるロシアのプーチン政権を新たに刺激するのは必至とみられる。独ハイリゲンダム・サミット(主要国首脳会議)を機会に7日にプーチン大統領との個別会談を予定しているブッシュ大統領は、首脳会談を控え、人権と民主化問題でロシアに率直に発言する態度を明確にした。

共同と朝日、毎日はレームダック化したブッシュ発言とみたのか、まだ入電していない。各社各様の外報ニュースの扱いを夜中に眺めるのも楽しい。
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