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1994年の米朝枠組み合意 古沢襄
今回の北京における北朝鮮の非核化協議は1994年のクリントン政権下の米朝協議と酷似している。交渉当事者であるヒル国務次官補と金桂寛外務次官は、1994年交渉を綿密に分析し、それを下敷きにしているのは疑う余地はない。事実、一月のベルリンにおけるヒル・金桂寛事前協議の直後にヒル国務次官補は「1994年の米朝枠組み合意に似た内容で暫定合意する可能性」を示唆している。

日本の国民は1994年交渉について、どれだけ知っているだろうか。元ワシントン・ポストの国際報道記者であるドン・オーバードファーが書いた「二つのコリア」(アジア・太平洋賞大賞受賞)が、どれだけ読まれているのだろうか。

1994年の米朝協議はロバート・ガルーチ国務次官補(政治・軍事問題担当)と姜錫柱(カンソクジュ)第一外務次官の間で行われた。米国の交渉課題は大きくいって二点に絞られた。一つは核拡散防止条約(NPO)の枠内に北朝鮮を縛りつけることであった。もう一つはソ連から提供された寧辺の小規模の実験用原子炉に封印を課すことであった。

寧辺・原子炉は五メガワット(五〇〇〇キロワット)に過ぎない。それが偵察衛星によって五〇メガワットの規模で新工事が為され、近くに再処理施設はじめ大小合わせて百以上の建物が建設中だと分かった。北朝鮮が大量破壊兵器を持つという危機感に米国は包まれた。

北朝鮮の核保有計画については、友好国のソ連や中国にも秘密とされた。五メガワットの原子炉建設にかかわったソ連の技術者も新計画からは除外され、寧辺に近づくことを許されなかった。すべては北朝鮮が独自で行っている。計画実施の中心になったのは、日本の京都帝大(京都大学)で工学博士号をとった李升基(リスンギ)博士。

その一方で北朝鮮は増大する電力事情を満たすためにソ連から民間用の原発を手に入れようとしている。ソ連はウクライナのチェルノブイリで稼働していた同型の軽水炉四基の提供を一九八五年に合意している。その条件はNPO加盟であった。

NPO加盟に応じた北朝鮮は同年十二月十二日に条約に調印したが、NPO条約を理解していたとはいい難い。条約の規定に基づいて、北朝鮮は十八ヶ月以内に査察を実施する国際原子力機関(IAEA)との間で”査察協定”を結ねばならぬ。査察を嫌う北朝鮮はソ連の軽水炉四基を手にすることが出来なかった。

しかし鴨緑江近くに展開された東ドイツ製の火力発電所群は老朽化して、発電能力が急速に低下している。IAEA査察を受け入れ、軽水炉の導入が不可欠となった。ここで北朝鮮はIAEA査察を受け入れる条件として、韓国に配備されていた米国の核の脅威を撤去する要求を出してきた。カーター政権は、韓国に配備された核弾頭を七百六十三発から二百五十発に削減し、ブッシュ(父ブッシュ)政権の発足時に百発にまで縮小されている。いずれも野砲の弾頭と投下爆弾。現在は、それも撤去されている。

問題は一九八五年に軽水炉四基の提供を約束したソ連が崩壊して、ボリス・エルツイン大統領によるロシアが生まれ、その政変によってロシアが深刻な経済危機を迎えたことである。もはや北朝鮮に軽水炉四基を提供する余力などある筈がない。米国はじめ世界は北朝鮮が熱望する軽水炉のことなどは忘れてしまう。

ガルーチ・姜錫柱協議は、このような背景の下で行われている。ジュネーブの交渉で姜錫柱は「もし国際社会が提供してくれるのであれば、北朝鮮は現在の原子力開発計画をより近代的で核拡散の恐れが小さい軽水炉に転換する」と突然、言い出した。

会議に出ていた米側の技術専門家は、姜錫柱提案にまるで関心を示していない。信じられないことだが、会議のテーブルについた米代表団の大半は、北朝鮮が軽水炉を欲しがっていたとは初耳であった。当時の概算でも軽水炉一基に十億ドルはかかる。

ガルーチの報告を受けた国務省と国防総省は、軽水炉の再提案があっても、一切の約束、とりわけ資金面での約束はしてならないと釘をさしている。ガルーチ・姜錫柱協議の共同声明は「軽水炉の入手方法は北朝鮮とともに研究する」という文言でくくられ、核廃棄物施設の特別査察は進展がなく休会した。

一九九三年十月に米民主党のゲーリー・アッカーマン下院議員が訪朝して、金日成主席に会った。北朝鮮外務省は。稗腺釘塑沙,鮗け入れる核廃棄物施設の特別査察は話し合うその前提として米韓合同演習のチームスピリットの中止な胴颪砲茲觀从兩裁の解除ゥルーチ・姜錫柱の第三回協議の再開・・・を求めてきた。いずれも金日成の承認を得ていると言った。

第三回ガルーチ・姜錫柱協議が始まったが、あまり進展がみられない。交渉当事者は真剣な議論をしているのだが、米国民にとっては北朝鮮問題は関心の外にある。これは現在の六カ国協議やヒル・金桂寛協議でも言えることであろう。米国民にとってはイラクで出ている米兵の犠牲の方が関心事である。

皮肉なことだが、訪韓中のレス・アスピン米国防長官が同行記者団に語った一言が米国民に衝撃を与え、北朝鮮問題が最大の関心事となっている。アスピンは「北朝鮮は飢えており、このまま飢え死にするか、戦争で死ぬかのどちらかだと考えるかもしれない」と言った。ワシントン・ポストは「北朝鮮と話し合うのをやめよ」と訴えた。全米世論調査では北朝鮮の核開発が米国にとって最も深刻な外交問題とする意見が31%でトップに躍りでている。

現在でも米朝和解で動くヒル国務次官補に対して、米国防総省には批判的な声が強い。国務省内でもヒル国務次官補が、これ以上北朝鮮に多くの言質を与えてはならないとする空気がある。ガルーチが国務省や国防総省から制約を受けた同じ歴史が繰り返されている。

一九九四年前後の日本を振り返ると細川内閣の瓦解、三ヶ月間の羽田内閣、自社さ連立による村山内閣と、もっぱら国内政治の離合集散で揺れていた。少なくとも米国民よりも朝鮮半島における危機的様相は日本を直撃しているのだが、国民はまったく知らされていない。拉致問題があっても国民の関心事ではなかった。

カーター訪朝によって米朝協議は大きく前進し、金日成死去(一九九四年七月)ということもあったが、米朝協議は詰めの段階に入った。ガルーチは本国政府の承認を得て、寧辺の実験用原子炉の稼働凍結の見返りとして、姜錫柱が求めた軽水炉の提供を認めた。

稼働中の原子炉を閉鎖するのだから、十年は要する軽水炉の建設中は北朝鮮の要求通り重油を供給することになった。金日成は重油を要求項目の上位にあげている。北部にある火力発電所の燃料となるのだが、原油の精製過程ででる泥状の残油だから、あまり使用されない。米側にとって異存がある筈ではなかった。

軽水炉建設の資金面では韓国が巨額な提供をすることになった。しかし土壇場で金泳三大統領は、北朝鮮との直接交渉の経験がない米国はジュネーブ交渉で騙されていると、”詰めの甘さ”を強烈に批判した。この予言は不幸にして当たっている。

米朝合意は、本来が条約として米上院に提出し、承認をうるべき性質のものだが、承認を得られない可能性を懸念したクリントン大統領は「枠組み合意」という形をとっている。北朝鮮は米朝合意を”大勝利”と受け止めた。ジュネーブから帰国した姜錫柱は、平壌空港で栄誉式典で迎えられている。ワシントン・ポストは「北朝鮮との協定で米国が譲歩」と見出しを打った。

韓国の心情はもっと複雑である。私は韓国の反米感情は、この合意を契機にして根深くなったと思っている。北京での六カ国協議を成功させたいヒル国務次官補は、日本が最重要課題とする拉致問題を”協議事項”として処理する提案を日本側に示したが、安倍首相は拉致問題の解決が前提と唱えて応じていない。米国の都合で処理すれば、日本の反米感情が生まれる可能性がある。それは韓国が辿った道でもある。

そのはざまで麻生外相は六か国協議で進展があった場合、北朝鮮のエネルギー事情の実態調査などを行うことで間接的に協力する考えを示した。日本が孤立しないために外務官僚が考えた知恵なのだろうが、北朝鮮が応じる可能性は低い。

麻生外相は「日本は、お金や(北朝鮮が要求している重油)50万トンを出すことはできないが、間接的な協力はできる。50万トンは本当に要るのか、国民に全部渡っているか、などの調査をやることだ」というが、国連職員の調査を受け入れることがあっても、日本側の調査は拒否するのではないか。
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