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理念先行から実利優先か 古沢襄
安倍首相は理念先行型の政治家であるのに対して中川幹事長は実利重視型の政治家だという人がいる。どちらが良いとか悪いという話ではない。見る人によっては中川幹事長は政治家としては熟練の士と映るだろうし、安倍首相は未熟だが将来性があると映るかもしれない。

戦後政治の系譜を振り返ると吉田首相、池田首相、田中首相、大平首相、宮沢首相らは実利重視型だったといえる。一方、鳩山首相、岸首相、佐藤首相、福田首相、中曽根首相、小泉首相らは理念先行型といって良いだろう。派閥でみれば宏池会(池田派)、経世会(竹下派)は前者、清和会(福田派)は後者の色合いが濃い。

戦後日本は実利重視型の政治がリードしてきている。「戦後政治からの脱却」を唱えた最初の政治家は中曽根首相あたりではなかったか。そして日本の安全保障問題や教育再生を主要テーマに掲げ、憲法改正を目標にした。

面白いのは吉田自由党の流れを汲む系譜が実利重視型だったのに対して鳩山民主党の流れを汲む系譜が理念先行型の傾向があることである。ただ、このようなステロタイプな分類では律し切れない様相が最近出てきている。

郵政政局で自民党を離党した造反議員の復党問題をめぐって前向きな安倍首相と慎重な中川幹事長の間には少なからず違いがかいま見える。ここにきて中川幹事長は、復党条件のハードルを高くして平沼赳夫氏の前に立ちはだっかている。

このハードルを超えない造反議員を無条件で復党させるのは”大義”が立たないというのが中川幹事長の言い分で一歩も譲る姿勢はみせない。復党に積極的な森首相、青木参院議員会長、片山参院幹事長らは「そこまでする必要があるのか」と中川幹事長の手法に疑問を投げかけている。

参院自民党側にしてみれば来年の参院選を控えて造反議員の復党を早期に実現しないことには、焦点の一人区で自民党票が割れるから不利になるという”実利”が先行する。いまさら大義を振りかざされても困るというのが本音であろう。

一方、安倍首相は造反議員の多くは政治理念を同じくする議員が多いから中川幹事長の突っ張りに困惑しているのではないか。とはいえ自民党の幹事長に中川氏を据えたのは安倍首相本人なのだから、復党問題の処理を中川幹事長に任せるしかない。

ダッチロールをみせ始めた自民党の復党問題を横目で高見の見物をみせているのは小沢民主党。こじれにこじれて平沼新党ができてくれれば思う壺ということであろう。国民新党、新党日本はすでに民主党の友党になっているから、平沼新党の懐に手を突っ込む可能性が生まれる。これこそ小沢代表の得意技ではないか。虎視眈々とそれを狙っている。実利が民主党に転がり込む大逆転があるのかもしれない。
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