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四十六年前の右翼襲撃事件 古沢襄
七月十四日というのは忘れられない日である。四十六年前のこの日、私の目の前で岸首相が右翼に襲撃された。当日は私が岸番に当たっていた。速報を義務付けられている通信社記者としては岸首相から離れるわけにいかない。

この日、自民党の総裁選で官僚派が推す池田勇人が、党人派の石井光次郎を破って後継総裁に選ばれた。三百二票対百九十四票。直前に大野伴睦が総裁候補から下りて、党人派の票を石井に集中する捨て身の勝負にでたのだが、官僚派の壁は厚かった。

総裁選後に首相官邸の中庭で、岸首相と池田新総裁が出席して、新総裁祝賀のパーテイが行われた。岸内閣は翌日の十五日に総辞職するので、この一日は総理・総裁が分離した人事体制となっている。

パーテイの歓談が終わり、岸首相が官邸大広間に足を踏み入れた時に惨劇が起こった。突然、駆け寄った暴漢が、岸首相の大腿部を後ろから短刀で、二度、三度刺したのだが、崩れ落ちるように倒れた岸首相を思わず跨いで、官邸の電話に飛びついて第一報を入れた。

犯人はある政治結社に属する荒牧退助。岸首相の長女・洋子さんは「あの手口は、殺人罪に問われないで、出血多量で死に至らしめるというプロのやり方。父を恨みに思う人の差し向けた刺客だということを聞いたことがございます」と婉曲な言い回しだが、総裁選がらみの右翼の仕業だと指摘している。

この事件の真相は闇に葬られたままである。事件後、十月二十四日に衆院地方行政・法務委員会連合審査で、岸派議員が「先般、岸前総理を傷害した荒牧某がすでに保釈され、公々然と潤歩しておる。このようなことでは世間の恐怖というものは去らぬと思う。どれほどの保釈金で彼が保釈になっておるのか」と法務当局を追及した。

これに対して「岸前首相に危害を加えました荒牧退助は、すでに保釈になっておるのでございます。この場合を私どもとして検討してみますると、荒牧は傷害罪で起訴されたものでございますが、すでに公判も二回くらい済んでおりまして、彼は公判廷で事実関係につきましては全部事情を進んで述べております」

「これは権利として保釈をしてもらえる罪に当たるのでございます。そこで保釈金でございますが、裁判所の命令によりまして十万円ということにされております。検察庁としましては、その十万円が現金で納付されたという以上は、これを押えておくことは法律上許されませんので、その現金の収納をいたしまして身柄を釈放した、こういう状況でございます」と答弁している。

これに先立つ八月十一日の国会審議では「荒牧退助は、だいぶ前(大正十二年)に右翼の団体に加盟しておったころの知り合いになった者と、東京に来てから会っている。それから、自民党の関係者の中にも、この人間が行って面接し、あるいは小づかい銭をもらっているというような状況というものはあるわけでございます」

「そういうような状況で、まあ自民党の関係の一部の人には顔見知りである。また、総裁公選の大会の会場に出るリボンといいますか、記章というものも手に入れておる。それで、日比谷の会場が終わるときに、これから総理官邸で祝賀。パーティーがありますからということを聞いて、それで、そのままそこから総理官邸に来た」と法務当局は発言しているが、それ以上のことは明らかにされないまま四十六年の歳月が流れたといえる。
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