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田舎暮らしの贅沢 古沢襄
ワイシャツひとつで愛犬バロンと朝の散歩をしてきた。2000戸の新興住宅地を一歩でると、水をたたえた田圃が広がっている。爽やかな微風に吹かれて田圃の水が、わずかに揺れている。

東京や横浜で長く生活してきた身には、街と農地が共生している風景が何ものにも代え難い。ここから地下鉄乗り入れの千代田線で、一時間半かけて国会議事堂前まで通勤した時期があったが、帰りに利根川の有料橋を渡ると大都会の喧噪を離れて、ホッとした気分になったものである。都心とは二度から三度違う。真夏でも朝晩は涼しい。

梅雨時の国電や地下鉄の中は、湿度が高く、時には気分が悪くなる。若い時には気にならなかったが、都心のアスファルト道路の照り返しが堪えるようになった。何よりも通勤者がセカセカと前のめりになって、歩く忙しいテンポが煩わしい。大都会のドブ鼠になって一生を終えるよりも、田園の野鼠になりたいと、いつも考えていた。

この地にきて、早くも十三年の歳月が去った。粗衣粗食がモットーで、趣味もゴロリと横になって本を読むしかない無粋者だが、食べ物だけは私なりに贅沢をしてきたつもりだ。贅沢といっても、山海の珍味をあさる方ではない。

お米は、わざわざ筑波山の麓の農家まで行って、極上米を仕入れてくる。筑波山の麓には、皇室に献上する極上米を農家が作っている。炊きあがりが、ふっくらとして艶がある。有名な秋田小町よりも、安くて数等おいしい。

朝はトマトに刻んだタマネギを載せて、手製のドレッシングで食するのが習慣となったが、そのトマトがとてつもなく大きく熟れていて味がある。ハウスものではなく、路地野菜だから太陽の光をたっぷり浴びていて、ひび割れしている。野菜だけでなく、梨や桃、リンゴなどの果物も甘く、これも農家で仕入れてくる。

私は水にこだわりを持っている。敗戦後、西武沿線の野方にしばらく住んだが、水道がなかった。台所に井戸があって、その水を飲んでいた。その後、渋谷にほど近い玉川線の大橋に住んだり、目蒲線の奥沢に住んで、水道の水を飲んだが、カルキ臭が強くて閉口した。野方の井戸水が懐かしくて堪らなかった。

もともとが大酒飲みだから、夜中の水一杯、朝の水二杯が欠かせない。水にこだわりがあるのは、そのためだ。三十九歳で富山支局長になって、都落ちした。支局長社宅に入って、まず水道の水を試飲したのだが「あの味が忘れられない」と女房が今でも言う。

北アルプスの雪が解けて、地下水になったり、川の流れとなって、水道水の源泉になっているから、夏でも冷たく、カルキ臭も押さえてある。一年後に金沢総局長になって、香林坊の総局長社宅に移ったが、富山の水のおいしさには及ばなかった。それでも東京の水の不味さを知っている身には、甘露!甘露であった。

五年間の北陸勤務が終えて東京本社に戻ったが、横浜の水は東京の水と変わらない。おまけに日本海の荒波にもまれたシコシコの魚の味をたっぷり食してきたので、横浜のスーパーで求める魚は、しばらく食べる気がしなかった。千葉で育った女房はネコで、魚好きなのだが「もう一度、富山の魚を食べたい」と思いだしたように言う。

それが茨城県に住むようになって、夏は冷たく冬は暖かい水にめぐり合えた。筑波山の麓から地下水をひいてくるのだ、と勝手に解釈しているが、それはともかく美味しい水が飲めるのは、最高の贅沢だと思っている。
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