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発見された岸丈夫の油絵 古沢襄
盛岡での話が三度続いてしまうが、西和賀町議の高橋雅一さんが風呂敷に包んだ一枚の油絵を持ってホテルに訪ねてきてくれた。出てきたのは漫画家・岸丈夫が、まだ油絵を描いていた時代の作品。ソ満国境の満州里の街並を描いたものである。一九三四年・昭和九年「Kishi」のサインがある。



七十二年前の作品だが、保存状態がよい。盛岡市で古書店を開いていた高橋征穂さんが古書市でみつけて「これは高いぞ」と言って持ち込んできたという。岸丈夫の油絵は私が知るかぎり十点程度しかない。号数によるが、一点五十万円から百万円はする代物である。

一見して鑑定の必要があると考えた。岸丈夫のお弟子さんである小角又次画伯に鑑定をお願いすれば、真贋が見分けられる筈である。拡大した写真を小角画伯にお送りしたところ筆法からして岸丈夫の作品に間違いないというご返事を頂いた。

岸丈夫は一九〇九年岩手県の旧沢内村に生まれ、新町小学校五年から飛び級で旧制盛岡中学に合格、卒業後、画家を志して上京したが、漫画界の大御所だった岡本一平に師事して風刺漫画で独自の境地を開いた。

一九三二年に横山隆一、近藤日出造、杉浦幸雄、中村篤九らと「新漫画派集団」を結成した新進漫画家の一人。活躍舞台はアサヒグラフ、週刊朝日、文藝春秋、中央公論など売れっ子となった。その傍ら画筆をとり一九三四年に満州旅行にでて、いくつかの作品を遺している。

一九九四年に萬鉄五郎記念館が発行した「北斗会の人々」には、岸丈夫の作品として「沢内の四季漫景(六曲一隻屏風画・玉泉寺所蔵)」「風景(油絵・八並誠一氏所蔵)」「娘のいない村(漫画・雑誌「かぶとむし」)」「輝ける都会(同)」「満州里の街角(同)」が収録された。

昨年のことになるが、評論家の浦田敬三さんが「阿片吸引の図」という油絵を発見、岩手川酒造の社長の所蔵する作品だったが、交渉の末に破格の安価で購入することができた。やはり満州旅行の時の作品で、昭和九年(一九三四年)岸丈夫の裏書きがある。阿片窟でチャイナドレスの女性が阿片を吸う姿を描いているが、遠近法をうまく使った神秘的な油絵。玉泉寺の資料館に展示されている。

「北斗会の人々」に掲載された「風景」の油絵は、八並家から岸丈夫の遺族が持ち出したまま行方不明。他に小角画伯が所蔵している無署名の「花瓶に生けた花」の油絵がある。私は敗戦の三年後に上京し、東京・野方にあった岸丈夫の家で一年間過ごしたが、物資がない中で岸丈夫は油絵を描いていた。印象に残っているのは「焼け跡のビルに佇む少年」と「数寄屋橋で客引きをする女」の二点。他にもいくつかの作品があったが、揃って所在が分からない。なお岸丈夫は作家・古沢元の実弟、杉浦幸雄の義弟に当たる。散逸した岸丈夫の作品を探すのが、私の勤めなのかもしれない。
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