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書評『プーチンとG8の終焉』   宮崎正広

■「わたしは悪いキリスト教徒だ」とするプーチンのロシア 彼の思想的、宗教的源泉の秘密を探った示唆に富む現状解説

  
<佐藤親賢『プーチンとG8の終焉』(岩波新書)>


この本は日本のメディアに溢れるプーチン分析といささか趣を異にする。というより、従来のプーチン論にはない、有益な情報が含まれ、次の国際情勢を読む上で示唆的である。


プーチンの発言録を詳細に精査し、体系的な分析も出色だが、筆者の視点が総合的判断力を伴っており、類書のなかでは圧倒的な独創的分析を付帯している。


プーチンは米国の威信低下を皮肉ってこう言う。


「突然手にした世界の支配権を賢く遣うことが出来ず、様々なヘマをしでかした成金」「言いなりにならない国には武力行使、経済的圧力、内政干渉を仕掛け、世界中の漢詩に巨額のカネを使っている」


別の記者会見でプーチンは「わたしは悪いキリスト教徒だ」とも発言している。


「右の頬を打たれたら左の頬を出せという心境にはまだなれない。平手打ちを食ったら対抗する。そうしなければ、われわれはいつまでも打たれ続けるだろう」


(そう、日本は戦後一貫して打たれ続けているにも関わらず、むしろ自虐性を認識できない立場にあるのに、欧米から強い、嫌らしい経済制裁を受けてもびくともしない耐久性を秘める強いロシアだもの)


プーチン率いるロシアの強靱な精神力は迫力さえある。


しかしいったいプーチンの思想的、宗教的源泉の秘密はどこから来ているのだろう?


筆者はそれを1917年のボルシェビキ革命を批判したイリインに見つけ出すのだ。


イリインという思想家は亡命先のドイツなどでロシア革命を批判し、『力による悪への抵抗』という本も上梓している。イリインはロシアの文豪トルストイの無抵抗主義をセンチメンタルと批判した。


「キリストは剣ではなく愛を説いたが、剣を非難したことは一度もない。剣を取る者は自らも剣の犠牲になるが、人をそのような自己犠牲に駆り立てるものこそ愛である」(中略)「その攻撃的思想は『復讐の宗教』『戦争の宗教』などと批判される一方、赤軍と戦う白衛軍(反革命軍)の精神的支柱となった」(16p)


このイリインはソ連時代に禁忌され、人々は思想家の存在さえ忘れかけていた。プーチンはこのイリインを復活させたのだ。


国外にあったイリインの墓地はモスクワに移され、「ドンスコイ修道院の墓地に再埋葬された。当初は粗末な木製の墓標が立っていたが、当時首相だったプーチンが写真を見て墓の整備を命じ、09年に立派な墓地が置かれた。整備に私財を投じると申し出たプーチンは同年五月に墓地を訪れ、新しい墓碑に花を手向けている」


そうだったのか。プーチンの謎は柔道による極意だけではなかったのだ。


<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

| 宮崎正弘 | 13:46 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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