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書評『世界恐慌2・0が中国とユーロから始まった』   宮崎正広

■世界は新しい恐慌前夜をむかえたようだ 日本経済の再生の鍵は新興国のインフラ投資にあり


<藤井厳喜『世界恐慌2・0が中国とユーロから始まった』(徳間書店)>


この新刊は題名がやや過剰なイメージをもつが、国際情勢、とりわけ世界金融戦争の複雑な裏側に横たわる真相を的確に分析した書である。


題名にある「2・0」は「悲劇の第二幕」という意味である。


米国政治、経済に詳しい藤井氏ならではの独特な、じつにユニークな視点からの世界経済の解剖は、すでに多くの読者を惹きつけてきたが、ありきたりのエコノミスト等の金利、通貨、再建、商品市場の分析などとまったく異なって政治的要員を、その分析の主因に置いていることだ。


メディアは昔も今もセンセーショナルが主な追求対象であり、表面上のあぶくの行方を追っかけることに熱心だが、本質を見る慧眼な眼力を備えていない。日本経済新聞だけを読んでいたら、世界経済は見えなくなるのである。


とくに後者に代表される日本の経済メディアが、FATCAやBIS規制の新しい動きと連鎖でおこったドイツ銀行の経営危機、スイス銀行の劇的な衰退原因を、表面的な分析だけで深追いしていないのは、問題である。いやだからこそ真実を知りたい読者は藤井さんの分析を待っているわけだ。


本書で藤井氏はドイツ銀行の経営危機の深刻な実相と、その「coco債」の仕組みを図解入りで詳述している箇所は読み応えがある。


同時に英国の凋落が本物であり、だからこそ中国とAIIBを組んで米国に挑戦するが、足下の英国政界は、EU離脱の動きが本格化していることも詳しい解説がある。


歴史始まって以来の「マイナス金利」は日本ばかりか、ドイツも、アメリカも事実上のマイナス金利であり、金利収入で老後は安心とする、従来的な貯蓄計画などの発想は消えてなくなった。


世界が直面する危機は「中国経済の破綻」「原油安により経済の世界的規模の停滞」「そして、「ユーロ危機」が誘発する難民問題、欧州政治の統合からの離反、すなわちEU解体への展望だ。


すべての元凶がシナの無謀なバブル創出と破綻から、過度に中国へ依存してきた欧州経済が連鎖反応を起こしたという原因と結果のプロセスの詳細な分析と解説が行われている。


また例えばサウジの原油減産は欧米のシェールガス開発潰しにあったのであり、目的達成は間近、その自信があるからこそ、サウジは赤字国債の発行に踏み切り、ロシアとの連携を強めつつ、原油再値上げのタイミングを計っているとする。評者(宮崎)の見方と奇妙なほどに同じスタンスだ。


もう一つの本書の特質は何かと言えば、投資指南書としても有益なテキストとなっていることだ。


第一は日本企業の優良株、第二にゴールド、第三にマンション投資は廃れるが、人口大都市の商業地域はまだ不動産投資の価値があるとする。金(ゴールド)投資を勧めるのは、世界はマイナス金利が「新常態」となってしまった以上、金利が発生しないゴールド貯蓄も有効であり、整数倍で価格上昇に導かれるだろうと推定している。


かくして世界は新しい恐慌前夜をむかえたようだが、日本円は資金逃避のラストリゾート、そのうえファンダメンタルが強い。これからの経済の再浮上と経済の再生の鍵は新興国のインフラ投資にあるとする。


<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

| 宮崎正弘 | 11:42 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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