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書評『中東複合危機から第三次世界大戦へ』   宮崎正広

■中東の輻輳した魑魅魍魎の世界をイスラムの原理から説き起こし  世界大戦への危機を内包する理由を多岐に多彩に分析する好著


<山内昌之『中東複合危機から第三次世界大戦へ』(PHP新書)>


本書に登場する主要人物は、日本の海外事情本がよく取り上げる常連の主役たちが少ない。


オバマは脇役、メルケルもオランドも小さな存在、むしろチェ・ゲバラを崇拝するギリシア極左政権のチプラスがEUをかき荒らす副主人公のごとく。


ならば本書における主役は?


IS,アサド、エルドアン、ロウハニ、サウジ王、そしてプーチンである。


いやプーチンこそは第二次冷戦で失った失地回復のため「自分の戦争」を展開しているが、オバマは指をくわえてみているだけだと山内氏の解説が冴える。


日本のメディアを読んでいては決して理解できない中東の裏面、昨日の敵は今日の友というリアリズム、魑魅魍魎が織りなす奇妙な政治空間。


それが中東だが、山内氏の目は、つねに、現象的問題の深層にある歴史の地層、カリフの誕生前のアラブ世界、そしてペルシア帝国の変遷、オスマントルコの敗退と分解過程のなかで、何が生まれ、何が失われ、現在の輻輳した中東情勢が複合的に出現したかという歴史理解の基礎に立って、これからの中東を鋭く見据える。


最近はやりの中東論はサイクスピコ協定までの議論が多いが、本書は古代ペルシア、バビロニアの時代からの歴史的体質に溯ってイスラムを考察している点が凄い。


トルコとロシアは戦争を始めれば、間違いなく中東に於ける紛争が第三次世界大戦に繋がる危険性があり、同時にこの間に世界一の大国だったアメリカが、「なにもできない状態」に陥落したのはなぜか、中国はつぎにISといかに対決するのかなど、別のアングルからの考察も有益である。


山内氏の言う『最悪のシナリオ』とは、「中東複合危機は第三次世界大戦への扉を開くことになる。こうなれば米欧やロシアや中国も巻き込まれ、ホルムズ海峡は封鎖されるか、自由航行が大きく制限される。日本はもとより、世界中のエネルギー供給や金融株式市場や景気動向を直撃する」


その爆弾の一つが先述したトルコ vs ロシア戦争、もうひとつはイラン vs サウジアラビアである。


難民に紛れてISならびに同調者は欧米、ならびにアジア各国に散った。


そのうえ、「シリアとイラクからは無記名のパスポート一万冊前後が印刷機ともども盗まれている」が、これが欧州に潜入できる活動家の活用されているとすれば、近未来の世界はなんとも、暗い。


<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

| 宮崎正弘 | 10:14 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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