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人民元暴落はいかにして起こるだろうか?   宮崎正広

■通貨供給量からみても、高金利から判断しても暴落は秒読み


人民元暴落のシナリオは以下のようになる。


まず、人民元は投機対象としての「金融商品」と仮定すれば、市場は需給関係で決まるはずである。


原油、金銀などの商品市況の一つが人民元であるとすれば投機筋の空売り、ヘッジファンドの思惑が交錯するとはいえ、FREE FALLを開始するだろう。


なぜなら中国はさかんに裏付けのない人民元を増刷しているからである。しかし、そうならないのは人民元がドルペッグ制を採用しているからである。


97年のアジア通貨危機の際にも、ジョージ・ソロスはタイバーツ、マレーシアリンギに続けて、香港ドルの下落を先読みして投機したが、中国が当時金融鎖国状態であったこと、香港が徹底的に香港ドル防衛のオペレーションを実行したため、人民元暴落は回避できた。


もっとも、当時の中国の金融規模は小さく、世界の投機筋が勝負を駆ける場でもなかった。


2016年1月21日、春節を前にして人民銀行が市場にばらまいた金額は7兆円、通貨供給を増やして景気の減速に配慮したとされる。


ところが、前日に香港では人民元暴落回避のために中国国有企業が為替市場に大々的に介入していた。


つまり元買い、ドル売りである。直前までにも、香港ドルをいまのうちにドル、ユーロ、円などの外貨に両替しておこうとする動きが顕著になっていた。


香港ドルは人民元安に連動して、8年5ケ月ぶりに1ドル=7・82HKドル台に下落(通常は、1ドルが7・5HKドル)、これに連鎖して香港株式は3・8%の急落をみた。

香港からも通貨下落を予想した外資系が資金を引き揚げ始めたからだった。


ところが、香港の銀行間で人民元がたりなくなり、香港の銀行間の取引金利が、な、なんと66%もの高金利を記録した。


まるで通貨暴落前夜のような、無茶苦茶な高金利、二年前に中国で翌日物が24%という異常な高金利を出現させたことがあったが、たとえ翌日物とはいえ、これほどの金利は史上稀である。


人民元暴落をあらゆる手段を講じてでも中国が守ろうとするのは、資本流出を防ぐ目的が一番強いだろう。


もっとも人民元は上下限が設定された狭いレンジのなかでしか変動しない管理相場体制であり、しかも人民元はドルペッグである。


従って「金融商品」としての対象ではない。


 ▼中国当局が避けたいのは完全変動相場制への移行


中国がSDR入りの条件として「完全変動相場制」へ移行するとなれば、ヘッジファンドの餌食になるリスクが高まる。したがって北京当局は為替管理に極めて慎重であり、おいそれとは変動相場制度への移行を認めない。


もう一つ「従って」、人民元の正式なSDR入りはさらに遅れることになる。中国共産党にとっては、為替管理という締め付けが行えないことは権力の放棄でもあり、絶対に手放せない特権でもある。


ロシアは対照的にエリツィン政権以来、ルーブルを変動相場制へ移行させているため、FREE FALLが起こる。プーチンのクリミア併合、ウクライナ内戦までは1ルーブル=3円50銭あたりを維持してきたが、原油価格崩落以後、ルーブルの暴落がはじまり、2016年1月22日には1ルーブル=1円44銭をつけた。しかも、もっと下がる気配である。


次なるシナリオは、徐々にではあろうけれども、人民元の市場への順応が行われるとすれば何が起きるか。


為替相場とは第一に金利、第二に経常収支できまる。


第三は思わぬ方向からでてくる政治相場だが、これは国際社会の「大調整」が行われるときで、ニクソンショック(ドルと金兌換停止)、スミソニアン合意(ドルは360円から308円)、そしてプラザ合意、クリントン政権下の無理矢理のドル安演出、そしてオバマ政権下で行われたEQである。
 

金利相場は、FRBが昨師走に利上げしたときに起きた。ドル高が急速に進行し、1ドル=120から125円あたりまで進んでいる。


アメリカはただし、経常収支が巨額の赤字、日本は恒常的に黒字である。ゆえに金利相場が一服すると、円高に再びぶれ始め、2016年1月現在は1ドル=115円台をつける。
 

政治相場とは、こうした市場原理を越えて、想定外の為替操作を付随する政治的方向の転換がもたらす。


すなわちEQとは、金融緩和の名の下にドル紙幣を大量に市場へ供給したわけで、明白な結末はドルの価値がさがる。通貨安戦争である。


アメリカの遣り方に欧州が追随し、中国もさかんに札びらを印刷したが、なにゆえか、このとき日本銀行は金融緩和をしなかったため円高が進んでしまった。白川日銀総裁は、この政策的齟齬によって批判が集中することとなった。


民主党政権下で一時出現した1ドル=79円というのは狂気の沙汰でもあり、日本の製品は輸出競争力を失い、メーカーは海外生産に踏み切らざるを得なくなり、国内産業は空洞化する。


 ▼通貨安戦争は再発するだろうか?


この反対を行ったのがアベノミクスで、例の「黒田バズーカ」で大量に資金が市場に供給され、ようやくにして円高が円安へと反転し、したがって企業業績はあがるから株価急騰となる。


アベノミクスは、称賛されたものだった。


つまり世界の金融市場に円があふれ出せば、為替堰場で日本円は安くなるのであり、現在、中国人民銀行の資金供給は経済原則に照らせば、人民元の価値を大幅に下げることになる。


過去数年、ギリシア危機などでユーロが下落する場面が往々にして起こったが、EU市場でのユーロ下落は不動産バブル崩壊に伴奏して起きたことが分かっている。


2012年に、ポルトガルはGDP成長がマイナスとなって、隣のスペインは不動産バブルが破裂し、スペインの銀行はブラジルに貸し込んでいた債権の回収を始め、それが連動してブラジル経済も悪化した。


三年前にスペイン各地を回ったことがあるが、とくにバルセロナ郊外の海岸線一帯に造成されたリゾート群が「がら空き」、殆どが売れ残り状況にあった事実を目撃して、「これじゃ中国の二の舞になる」という危惧を抱いた。連動したブラジルの通貨レアルが下がり始めた。


97年のアジア通貨危機では、邦銀がアジア諸国から資金を引き揚げ、アジア経済はさらに悪化したが、あのときと同様なことがスペインと旧スペイン、ポルトガル領土だった南米諸国でもおきていたのである。


▼ギリシア危機とユーロ


2012年からギリシア問題に端を発したユーロ危機も、本質的には同様で、バブル発生のスペイン、アイスランドなどに不動産バブルが発生し、急に沈静化させた結果、カネの行き場所がなくなったとも言える。


ユーロから出て行った貰いたいギリシアだが、開き直りの左翼政権が登場してEU政治をかき荒らした。


日本のバブルは、カネの行き場所が設備投資ではなく、株式と不動産市場へ奔流のように流入した結果おこった。


不動産バブルは平均的サラリーマンの所得ではとても手の出せない高みにまで住宅、マンション価格を押し上げ、需給関係ではなく、投機市場の様相を呈した。経済本来の原則から遠く外れた実態が出現したのである。


株式も同様で、あの時、日経ダウは四万円を間近にしており、機関投資家たちもエコノミストも強気だった。


ところが日銀は総量規制、突然の貸しはがしに銀行が路線を転向させたため、バブルは崩壊し、日本は「失われた二十年」を迎えたのはいまさら指摘するまでもない。
 

すでに十年も前から中国の不動産価格は庶民が逆立ちしても購入できる価格ではなく、投機というより博打場と化していた。


中国の中央銀行(中国人民銀行)は、それにもかかわらずマネーサプライを増やし続け、文革終了時から30年間で資金供給量はじつに705倍にも達していたのだ。


ところが、ドルペッグ制を硬く採用してきたために、暴落するはずの人民元は一貫して高く評価されつづけるという、一種フィクショナルな、異形な、人民元相場を形成してきた。


簡単なたとえ話をすると、狐が木の葉を黄金に化かすようなものであり、しかし狸の欧米は、その黄金を意図的に本物と幻覚させ、中国とは共犯関係で人民元の国際通貨入りを支援するのである。


なぜか、ドルもユーロも金兌換紙幣ではないからであり、まして次に人民元が変動相場へ移行するとすれば、投機筋の空売りによって格好の稼ぎ場ともなりうるからなのである。グローバリズムに立脚するウォール街の論理とはカネが儲かれば、国際秩序とか経済倫理とかは二の次となり、他人の市場へも土足で上がり込んで、ごっそりと利益をもぎ取るか、あるいは読み違えて破天荒な損失をだす。


こうみてくると人民元暴落の可能性はおおいに高まっているのが現状であり、必死にそれを避けようとする中国金融当局と国際的ヘッジファンドの血みどろの決戦が近日中に開始されるかもしれない。
 

短期的展望としては、中国当局がありとあらゆる手段を講じて人民元暴落阻止、株価維持の政策出動をつづけるであろうから、暫し相場が大規模な変動に襲われることは考えにくい。


しかしながら、ギリシア危機が間歇的に噴火するように、人民元と中国株下落は、いずれ数ヶ月以内に間歇泉のように再爆発するであろう。


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| 宮崎正弘 | 14:25 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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