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「悪夢のシナリオ」が描く米最新兵器の欠陥   古沢襄

■ロイター・コラムでMatthew Gault氏が指摘


[2日 ロイター]米中間の戦争は、軍事評論家たちには好まれるテーマだ。米中戦争はなぜ起こるのか。どのように展開されるのか。インターネット上などでは、こうした疑問に答えようとする何千ページ分にも及ぶ記述があふれている。
 

とりわけ、国家安全保障の専門家であるアウグスト・コール氏とP・W・シンガー氏の共著「Ghost Fleet: A Novel of the Next World War(原題)」は興味深い。近未来の設定で米中戦争を描く本書はフィクションだが、ストーリーに現実味を持たせる大変な努力がうかがえる。
 

特筆すべきは、米国防総省の最新武器システムの失敗を描く部分だ。防衛専門家が多くの欠陥について警告したにもかかわらず、過去10年間にわたり、最新鋭のステルス戦闘機「F35」や沿海域戦闘艦(LCS)などに何兆ドルもの税金が投じられてきた。


同小説の中で米国は、F35とLCSという国防総省の最新の「おもちゃ」で戦争を始めるが、見事に失敗し、結局は旧式でテクノロジーへの依存度が低い武器に頼らざるを得なくなる。
 

コール氏とシンガー氏は、米国の軍事投資の失敗についてはこれ以上ないほど先見の明があるかもしれない。その一方で、中国が米国に戦争を仕掛ける理由を説明するくだりはそれほどでもない。
 

両氏は本業で軍事研究の引用に慣れきっているため、本書にもかなりの脚注がある。新しい技術についての一節にも、それに関する国防総省の報道資料が注釈として付いている。
 

このため、「Ghost Fleet」はある一定の影響力を持つ。コール氏とシンガー氏はあまりに未来の戦争に没頭するあまり、地上戦からサイバー戦争に至るまで多岐にわたる戦いを描いている。そこには確かな説得力が感じられる。


<レガシーシステム>
 

「Ghost Fleet」では、国防総省がスイス製アーミーナイフのように多機能性に優れた武器システムに執着するあまり、米国は中国との最初の大きな戦いに敗れる。
 

中国は、旧日本軍による真珠湾攻撃の焼き直しのごとく、米国に奇襲攻撃を仕掛ける。だが、米国のLCSとF35は、中国部隊を撃退することができない。
 

奇襲攻撃であったことも敗因の1つだが、大きな原因はテクノロジーにある。膨れ上がる予算と恐ろしい問題に悩まされるLCSとF35は、ほとんどテストもされていない。コール氏とシンガー氏によると、さらに悪いことに、この2つの武器システムはコンピューターにあまりに頼り過ぎている。
 

特にF35は、多くの兵器専門家の冷笑を買っている。搭載されている機関砲はソフトウエアが未完成なため使えないだけでなく、飛行に必要な60万ドルもするヘルメットも意図したようにはまだ機能していない。そしてF35は少なくとも1度、出火事故を起こしている。
 

こうした問題にもかかわらず、国防総省はF35を空軍・海軍・海兵隊に採用している一方、実戦に耐えたレガシーシステム(古いシステム)を排除している。
 

「Ghost Fleet」は、米国の軍産複合体が、質の高い兵器を構築するよりも、新たな高額システムを売る方を重視した結果を示している。
 

コール氏とシンガー氏の「真珠湾攻撃2」は、多くの軍事ジャーナリストや専門家が長い間、F35が戦闘に使われた場合に予想してきた悪夢のシナリオを描いている。


同小説のなかで、F35は一連のサイバー攻撃を受けた後、飛ぶのがやっとの状態に陥り、効果的な交戦に十分な砲弾も搭載できず、中国軍の戦闘機に簡単に破壊されてしまう。
 

結局、米国の「幽霊艦隊(ghost fleet)」の登場となる。国防総省は、いまだ使えるがお役御免となっていたF16戦闘機やA10攻撃機を出動させ、反撃に備える。
 

これらは、特にF35やLCSと比べると、簡単な武器システムとなっている。中国がハッキングできない旧式で比較的単純化されたコンピューターを使用している。
 

F35の失敗を目にするのが現実の世界ではなく、小説の世界であることは大いに好ましい。現実なら、実際に人命が失われているだろう。
 

F35を製造するロッキード・マーチンは、メディアからの批判を受け最近発表した声明のなかで「F35は飛行テストの限界まで飛び、その性能は期待以上のものだ。予定されている2016年の開発プログラム完了までに乗り越えられない障害は何もない」としている。

 
<利害衝突>
 

同小説には「空の海賊」や米SF作家ウィリアム・ギブスンの小説を彷彿させる麻薬漬けのハッカーが登場するなど素晴らしいシーンが満載だ。
 

しかし問題もある。米中が衝突する理由が実際にありそうにもないからだ。中国が戦争を仕掛ける動機が、現在起きているような地政学的問題の避けられない結果というよりも、映画「007」に出てくる悪役の陰謀のように感じられる。


米国と中国は経済的に相互依存関係にあるため、決して戦争しないという考えが、有害なことに広く信じられている。だが、コール氏とシンガー氏は小説の冒頭30ページのなかで、経済利益が世界戦争を回避するという考えが誤りであると、歴史を引用して登場人物に語らせている。
 

小説のなかで、米国は中東で大惨事が起きた後、世界最大のエネルギー輸出国となる。一方、中国では共産党が崩壊し、より軍国主義的で資本主義的なシステムがそれに取って代わる。名目上の同盟国である米中は貿易領域を拡大。中国は燃料の大半を米国から輸入するようになる。
 

その後、中国の科学者たちがマリアナ海溝で大規模な天然ガス鉱床を発見。新たにエネルギー資源を手に入れたことで、中国は旧来の貿易相手国に頼らなくても済むようになる。
 
さらに悪いことに、最大の競合相手である米国から一部を奪うことなしに、もはや貿易領域を拡大することは不可能だと、中国軍当局は政治指導部を説得する。
 

そこで中国は、世界的大国であることを主張するため、また、太平洋貿易ルートの支配を強化するため、米国を攻撃する。小説の世界なら、このように戦いが生じてもおかしくはない。
 

しかし現実の世界は、はるかに複雑で混沌としている。
 

米国防総省による中国軍事力に関する最新の報告書によれば、中国の目標は「防衛、領土の保全、強国としての立場の確保、そして最終的には、地域的優位性を再び獲得すること」だという。
 

これらの目標のうち最初と最後は、超大国同士の戦争がいかに起こり得るかを理解する鍵となる。米国は現在、太平洋を支配しているが、中国は西太平洋での領有権主張を急速に強めている。 


超大国同士の戦争が始まるとすれば、まさにその海域だろう。中国が国境を越えて自国の権益をますます主張するにつれ、米中間の緊張は近年エスカレートしている。中国は台湾を自国の一部とみなし、西太平洋の一部の島の領有権を主張。同海域に艦船や航空機を出動させているほか、人工島の建設も行っている。
 

米国は日本とフィリピン、台湾と同盟関係にあり、米海軍は周辺海域で積極的に巡視活動を行っている。もし中国が台湾に攻め入ったとしたら、戦争が勃発するかもしれない。そうなった場合、米国との同盟関係の価値が試されることになり、大きな戦争へと発展する可能性もある。
 

緊張が高まるにつれ、双方が小さな違反を攻撃的行動とみなすこともあり得る。米国も中国も先に手を出したとは決して言わないだろうが、中国の領空を米軍機が横切ったとか、中国の小型無人機「ドローン」が日本に墜落したというようなことが戦争行為ととられる日を、遠からずわれわれは目にすることになるかもしれない。
 

「Ghost Fleet」のなかで描かれる中国指導部は好戦的かつ尊大であり、名声と権力のために戦争を始める。戦争は時に、ばかげた理由で始まり、それまで存在すらしなかった大義の一部としてその行為を後から正当化する。
 

1914年、セルビアの無政府主義者がオーストリア皇太子を暗殺したのを発端に第1次世界大戦は勃発し、約4000万人が犠牲となった。戦争は時にこのように、小さな事件がすでに存在していた緊張を表面化させて始まることもある。
 

「Ghost Fleet」は、防衛専門家たちが自分たちの得た情報を生かして執筆したフィクションである。超大国同士が戦争に至る過程は現実的ではないかもしれない。しかし、舞台がサイバー空間や太平洋であることなど、いかに衝突が展開されるかについてのコール氏とシンガー氏の洞察力はあまりにリアルでぞっとするのだ。
 
 
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(ロイター・コラム)

 
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| 古澤襄 | 00:43 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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