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エジプトのイスラム過激原理主義を追う    古沢襄

■アサド大統領暗殺、ルクソール虐殺事件


エジプトのイスラム過激原理主義がなぜテロに走るのか、という命題について読売新聞のカイロ支局長だった藤原和彦氏が2001年の中公新書で同じ表題で力作を残している。


惜しくも六十七歳の若さで亡くなった藤原氏だったが、14年たったいまでも藤原氏の先見性ある分析は光芒を放っている。


いまでこそ「原理主義勢力を先兵とするイスラム過激派」の視点で中東情勢を斬ることができるが、1981年10月6日のアンワル・エル・サダト大統領の暗殺事件では、日本を含めた欧米メデイアは「イスラム過激派」の犯行という視点で暗殺事件を分析していない。


当時は「欧米自由主義陣営」と「ソ連・東欧共産主義陣営」の対立図式でしか、中東情勢をみていない。


東京外語のアラビア語学科を卒業して読売新聞に入社、カイロ支局長になった藤原氏は、それこそ水を得た魚のようにエジプトにおけるイスラム教政治運動に着目して、サダト大統領暗殺を「イスラム原理主義の犯行説」と本社に打電した。


しかし本社では取り上げて貰えなかった。それは読売だけではない。各紙とも「イスラム原理主義の犯行説」をとったところは皆無であった。


注目すべきは、藤原氏はイスラム過激主義の台頭を予見する一方で、大部分のイスラム教徒を”イスラミスト”と呼んで峻別していた。穏健なイスラム教徒に対する理解が誰よりも深い。


サダト暗殺事件の裁判を藤原氏は欠かさず傍聴して、何がテロリストの犯行を突き動かしたのか、その支配的イデオロギー「ジャーヒリーヤ論」を研究している。私が藤原氏を一ジャーナリストを超えた中東政治思想の研究者として高く評価する由縁でもある。


1992年6月、エジプトのルクソール古代遺跡で起きたイスラム過激原理集団の外国人観光客五十八人の虐殺事件が発生した。


この凄惨な虐殺事件で日本人観光客十人(観光客9人とツアー案内人1人)も殺害された。しかも犯人たちはイスラム教徒が犯してならない死体損壊(タムシール)の罪も犯している。


当時は日本のメデイアも大々的に報じていたが、いまではこのルクソール事件を覚えている人は少ない。


ルクソール虐殺事件は、いまの過激組織ISにつながるイスラム過激派の犯罪的な行動に繋がっている。その証拠は、残忍な死体損壊にある。


サダト暗殺事件ではイスラム過激派の犯行説に踏み込む知見を持ち得なかった日本のメデイアも、ルクソール事件では一斉に過激原理主義運動の犯行説に踏み込んだ解説をしている。


大手のメデイアでは、現代過激原理主義の父といわれるサイイド・クトゥブ(Sayyid Qutb 1906〜1966)の思想を初めて日本の読者に紹介している。


クトゥブの過激思想は「イスラム教国の世俗化・西洋化・共産化を志向する指導者が統治し腐敗と圧制が蔓延する現世は、イスラム教成立以前のジャーヒリーヤ(無明時代)と同じであり、武力(暴力)を用いてでもジハードにより真のイスラム国家の建設を目指さなければならない」ということに要約される。


イスラム過激主義の原点といわれるクトゥブ主義(Qutbism)は、現代社会の矛盾に敏感な若い世代に影響を与え、オサマ・ビンラディンもクトゥブを師の一人と仰いでいたといわれる。


奇しくもルクソール事件の四年後の2001年9月11日にハイジャックされた米旅客機二機が世界貿易センタービルに自爆攻撃をかけた「アメリカ同時多発テロ事件」が発生した。


死者3025人を出した「アメリカ同時多発テロ事件」で米政府はオサマ・ビンラディンをリーダーとするテロ組織「アルカーイダ」によって計画・実行されたと断定、アフガン戦争、イラク戦争の引き金となった。オサマ・ビンラディンも米特殊部隊によって殺害されたが、イスラム過激主義は納まる気配がない。


さて結論を急ごう。過激組織ISは時間がかかろうが、いずれは欧米の軍事力によって屈服させられるであろう。問題はクトゥブの過激思想が形を変えて他国で生きながらえることである。


アラブ諸国の中でも最貧国の一つに数えられるエジプトだが、軍事独裁によって過激思想の再来を押さえ込むことが出来るだろうか。


アフガニスタンでは過激組織ISが動きだす気配をみせている。イラク、シリアの過激組織ISを屈服させることが出来ても、その残党が他国で活動を再開する可能性を否定できない。


アメリカは中東石油への依存度が低下しているから、困難なイスラム過激派の対策には消極的になるだろう。極論になるが、イスラム過激派が核を持たないかぎり、オバマ流のどっちつかずの中東対策でお茶を濁すに違いない。


中東石油の依存度が高い日本はイスラム過激派の動向に真剣にならざる得ない。しかもその処方箋はないに等しい。私が言えるのは、中東石油の依存度を大幅に減らすエネルギー政策に変更しかないということに尽きる。

 
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