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安倍は恒久法と機雷掃海で公明に譲歩せず    杉浦正章

論戦冒頭から安保法制の核心部分へ

 

まるで横綱・白鵬が日馬富士を土俵の外に投げ飛ばし、観戦していた大関・山口那津男にわざとぶつけたような代表質問初日だった。このところ恐ろしいほど首相・安倍晋三はついている。


総選挙に圧勝して、まさに地雷原を踏むようであったISIL(イスラム国)事件を見事にしのぎ、支持率は読売58%、朝日50%。「ISIL対処が適切」が読売55%、朝日50%で盤石だ。


3期ぶりにGDP はプラスに動き、日経平均株価は16日1万8004円と反発。終値での1万8000円台は2007年7月以来、約7年7か月ぶりで、第1次安倍政権時につけた1万8261円の高値更新は確実視される。


市場では「年度末日経平均2万円」の声が勢いづく。明らかにデフレ脱却の兆しも見え、野党はアベノミクスにもケチが付けられない状態にあるのが実態だ。


そのアベノミクスについて民主党代表・岡田克也が「成長戦略はわたしの基本戦略と同じ」と質問、維新代表の小結・江田憲司も「アベノミクスの方向性には賛成」と発言するようでは、安倍はますます勢いづく。


岡田は質問に先立って代議士会で「生ぬるいとかもっと厳しくやれとの批判があるかも知れないが、岡田ワールドでいく」とマイペースの質問を予告。


その「異常に律義」な性格を反映して、理路整然と安倍白鵬にチャレンジしたが、腰が入っていなかった。対案なしでは、説得力と迫力に欠けるのだ。圧倒的な勢力の政権与党に対抗して野党らしさを発揮するにはあっと驚くような爆弾質問とか、ウルトラC級の新提案がなければ注目されない。


同じ岡田でも佐藤政権を揺さぶった爆弾質問の岡田春男とは大違いであった。岡田ワールドは理路整然と間違うワールドかも知れない。


その証拠に安倍は岡田の質問を逆手に取った揚げ句、返す刀で山口を切った。そのやりとりは、まず焦点の安保法制に関して岡田が昨年夏の閣議決定を「一内閣の判断で憲法の重要な解釈を変えたことは立憲主義に反し、憲政史上の大きな汚点となった」と口を極めて批判。


安倍は、「従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではない。憲法の規範性を何ら変更するものではなく立憲主義に反するものではない」と反論した。


さらに安倍はホルムズ海峡の機雷除去について「ホルムズ海峡はエネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路となっている。


仮にこの海峡の地域で武力紛争が発生し、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合は、かつての石油ショックを上回るほどに世界経済は大混乱に陥り、わが国に深刻なエネルギー危機が発生しうる」と強調。


同時に「わが国の国民生活に死活的影響が生じるような場合には、状況を総合的に判断する。わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たりうる」と述べた。


これは機雷除去を、閣議決定3要件の「日本の存立が脅かされる危険」と明確に定義づけたことになる。


この発言は13日に始まった自民・公明両党の与党内調整を明らかににらんだものだ。山口はホルムズ海峡の機雷除去について「存立が脅かされる事態ではない。存立事態という新要件に当たらない」としており、安倍は真っ向から否定したことになる。


さらに山口は安倍が目指す恒久法についても「自衛隊のインド洋派遣やイラクへの派遣はその都度特措法で処理してきた」と述べ、制定には反対だ。


これに対しても安倍は「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とすることが重要だ。具体的なニーズが発生してから改めて立法措置を行う考え方は取らない」と述べた。


恒久法とホルムズ海峡問題は自公調整の焦点となるものだが、安倍が論戦冒頭から「山口けん制」という発言に出たことから、調整は難航せざるを得ないものとなろう。


しかし安倍はその発言や主張から見て安易な妥協をしない構えである。


浅薄な評論には統一地方選挙を控えて安保法制の論議は予算成立後になるという見方があったが、もはや安倍は統一地方選などへ国家の安保論議が波及するとは考えていないのだ。


論戦開始冒頭からの安倍の発言は、安保法制論議を国会質疑の前面に押し出す結果となる。(頂門の一針)
 

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