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岸元首相と安倍首相の継続性    古澤襄
改造内閣の安倍外交が始動した。これまでの日本外交は「どこまでも付いて行きます下駄の雪」で対米追随外交の域を脱することがなかった。

日本の安全保障は米国の軍事力に依存してきた。敗戦国・日本が独立国になったとはいえ、一気に米国離れした日本独自外交はあり得ない。日米軍事同盟が日本外交の基軸という構造はいまも変わらない。

安倍首相の祖父・岸信介元首相は、この構造の枠内で日本の独立を一歩進めようとした。それは吉田元首相がレールを敷いた「軽武装・経済重視路線」からの脱皮でであった。

戦前からの盟友だった財界の藤山愛一郎氏を外相に据え、吉田時代に締結した日米安保条約の改定交渉に着手している。安保改定の前史については、あまり知られていない。改定素案を作るに当たって”部分改定”か、”抜本改定”かが焦点となっている。

岸は抜本改定を目指した。しかし外務省は抜本改定は現実的でないと否定的だった。外相になった藤山は、駐日米大使のダグラス・マッカーサー二世(マッカーサー連合国最高司令官の甥)と秘密交渉に入ったが、あらためて米側の壁が厚いことを覚り、部分改定の枠内で岸の意向に沿える案を目指している。

当時のことを思い起こせば、共同は外務省に強い内田健三(後に政治評論家)と麓邦明(後に田中角栄秘書)を改定案を抜く担当者に当てて密かに外務省の担当者にアタックしている。

改定案を入手した夜は、共同政治部で歓声があがった。その感動はいまでも忘れられない。

しかし部分改定だから、岸にとっては不本意なものだったことは否めない。ようやくまとめ上げた改定案を藤山が岸に報告したら、岸は見向きもしなかったという。その見向きもしなかった安保条約改定案をひっさげて疾風怒濤の安保批准国会に突入したのだから、歴史の皮肉と言わざるを得ない。

第一次安倍内閣の当時にこの裏話を「安倍内閣に対する米国の不安」と題して書いたことがある。それをあためて再掲してみる。

あれから半世紀を越える歳月を経て、日米関係は大きく変容した。もはや部分改定か、抜本改定かの用語は死語になったと言っていい。第二次安倍内閣になって安倍は新たな視点で日本の独自外交を進めている。

内閣改造後、首相はさっさと、バングラデシュとスリランカに飛び首脳会談をした。すでに安倍が訪問した諸国は戦後の歴代内閣のどれよりも多い。

この根底には、日本のエネルギー資源の確保という視点がある。また各国との親善・友好を深めて日本の対外的な地位を高めようという意識がある。

エネルギー資源のない日本は中東の石油に対する依存度が高い。中東からインド洋を経て日本のオイル・タンカーがくる海の道こそ日本の生命線である。さらにいうなら、フィリピン、インドネシア、ミャンマーなどのアセアン地域からインド洋に至る各国と日本は友好・親善の絆を強くしておかねばならぬ。

これを中国包囲網という視点だけで律するべきではない。また日本の自衛艦隊をこの生命線を守るために派遣することも実行不可能である。

あくまで生命線上の諸国と友好・親善の絆を強くし、巡視船の供与などを実行して、「海のシルク・ロード」ともいうべきオイル・ロードの安全性を構築しておかねばならない。この視点に立って安倍外交は改造後、始動したとみるべきであろう。

安倍首相にとって悩ましいのは、ウクライナをめぐる新冷戦ともいうべき米ロ対立であろう。日本は隣国であるロシアとの友好関係を維持し、悲願である北方四島の返還交渉を前進させねばならぬ。

ウクライナは東部でロシアの支援を受けた親露派が軍事的に優位に立った。この事実はキエフの欧米メデイアからは正確に伝わってこない。明らかにウクライナ軍の敗北し、ウクライナ国内では厭戦気分が広がっている。

しかしウクライナの国防相は敗北を認めず「これからはロシアとの戦争になる」と発表した。ウクライナは米国やNATOを引きずり込み、ロシアとの軍事対決によって失地回復を目論んでいる。

このウクライナの目論みに巻き込まれては、日ロ関係は急速に悪化しかねない。森元首相が第二回日本・ロシアフォーラムとのためにモスクワに飛び、「プーチン大統領がウクライナ情勢を巡って世界から批判を浴びている状況を友人として残念に思う」と述べたのは、一種のサインとみるべきである。

また米国やNATOはロシアに対する経済制裁の強化以上のコミットをする気はない。米国にとってウクライナ内戦に介入する選択肢よりも、「イスラム国」を打倒する選択肢のが優先している。

日中関係の改善やウクライナ問題、「イスラム国」打倒に同調するのは、しばらくは模様見というのが安倍の本音ではないか。

■安倍内閣に対する米国の不安(再掲) 古沢襄

アメリカの目から見れば小泉前首相は、安心してみていれるパートナーだったろう。「どこまでも付いて行きます下駄の雪」と揶揄されても平気の平左。二〇〇六年六月の日米首脳会談が終わった後に、エアフォースワンにブッシュ大統領夫妻と同乗して、エルヴィス・プレスリーの旧居である「グレイスランド」を訪れる破格の厚遇を受けている。

そこで小泉首相は「グローリー、グローリー、ハレルーヤ」と熱唱しながら、エアギターを披露したのは記憶に新しい。日本の首相の熱演にブッシュは相好を崩して喜んでいた。

その小泉前首相が強力に推した安倍首相である。だが、ちょっとおもむきが違うとブッシュは思っているのではないか。タカ派なのはいい。だが「ノウと言える日本」の石原東京都知事と似た感触を安倍首相から感じとっている気配がみえる。

日本はいつまでも”下駄の雪”であって欲しい。下手な自立心は困る・・・というのが、アメリカの本音であろう。日本の自衛隊も米軍の補助戦力にとどめておきたい。独自に核武装するなんて、とんでもない。大雑把にいえば、それが本心であろう。

見え隠れするアメリカの本心を知りながら、小泉前首相は”下駄の雪”を演じてみせた。小泉劇場の演出家だっただけに、ブッシュの心を掴むのは、お茶の子さいさいだったろう。戦争に負けて、一度は占領された日本国だから、ご無理、ごもっともで面従腹背の演技をしながら、自国の利益を守るしかなかった。吉田元首相は、これを軽武装・経済重視主義と称した。

岸元首相は、吉田流のやり方を変えて、日米安保条約を対等な関係にしようとしている。「日米戦争でアメリカに対して日本は毫も卑屈になる必要はない」という信念の持ち主。だが戦前回帰を懸念する日本国内の世論が高まり、日本の一人立ちを怖れたアメリカもいい顔をしない。条約改定交渉は難航し、藤山外相とマッカサー駐日米大使との秘密交渉でまとまった改定安保条約は、岸元首相が意図した対等条約とはほど遠いものになった。

ようやくまとめ上げた改定安保条約案を藤山外相が岸首相に報告したら、岸は見向きもしなかったという逸話がある。だが、岸の意図した対等条約でない改定安保条約案をひっさげて、岸は条約批准のための安保国会を乗り切る運命となった。六〇年安保騒動の裏話である。

岸が意図した対等条約は、自衛隊の国軍化、それを実現するための憲法改正という改憲プログラムが背景にある。だが、改定安保条約案は対等条約ではない。日本が攻撃された時にはアメリカは日本防衛の責務を負うが、アメリカが攻撃された時には日本は手をだすことが出来ない偏務条約となった。日本の自衛戦力はいらないというアメリカの意識が、この当時にはあった。余計なことはするな、ということであろう。改憲プログラムは日の目をみなかった。

その代わり、改定安保条約案をギリギリまで拡大解釈し、憲法違反にならない範囲で補強する法案を成立させる自民党の試みが行われてきた。憲法解釈もギリギリにまで拡大解釈をされている。弱体だった自衛戦力も強化され、とくに海上自衛隊の戦力はアジアでも有数のものになっている。日本の自衛戦力はいらないとしたアメリカは、米第七艦隊の補助戦力として、日本の海上自衛隊を無視できないところまできた。

小泉前首相の防衛戦略構想は、岸が意図したものにまでは踏み込んでいない。憲法改正に格段の興味を示したものでもない。吉田の軽武装・経済重視主義とは違うが、強いていえば中武装論の範囲にとどまるものであろう。アメリカとの対等条約よりも、日米同盟による防衛戦略の域にとどまる。

安倍首相の防衛戦略構想も原則的には小泉路線を継承している。だがアメリカはどう見ているのだろうか。対等条約を志向した岸元首相の孫という先入観があるのではないか。安倍内閣が誕生して、短期日の間に防衛省が出来て、憲法改正にも意欲を示している。久間防衛相はイラク戦争は誤りだと述べた。従軍慰安婦に関する米下院の決議がされても、あらためて謝罪するつもりはない、と安倍首相は言い切った。アメリカは少し不安な目で安倍内閣をみていると思う。その不安を払拭するために日米首脳会談を持つ必要があるのではないか。(2007.03.10 Saturday name : kajikablog)

杜父魚文庫
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