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書評 ルトワックの「戦略論」    宮崎正弘
■孫子はそれほどの価値はない、と断言した戦略家 現代の軍事思想と基盤の哲学を語り尽くした

<<エドワード・ルトワック『戦略論』(毎日新聞社、武田康裕、塚本勝也共訳)>>

「汝、平和を愛するなら戦争に備えよ」との箴言は古代ギリシアから言い伝えられてきたが、誰もが覚えやすい名言とはいえ、これは矛盾である。

戦略とはそもそも論理的には矛盾しており、その最たるものが孫子である、と言う。

孫子の国の末裔である毛沢東は大いに孫子を愛読し実践したが、マルクスの革命理論からはほど遠く、中国の歴史によくある権力闘争を勝ち抜いた狡猾さと残酷さに徹底したからこそ政権を握れた。つまり明の朱元璋が、そうしたように皇帝になるや苦労して構築してきた闘争、夥しい血を共有した功臣と忠臣を次々と誅殺した。

毛沢東はライバルを謀略で陥れ、革命の真の立役者だった朱徳、膨徳懐、林彪、劉少奇らを冷酷に葬った。権力のポチ=周恩来に対してさえ、恐怖の畏怖で手なずけ、それでも忠義に励む習恩来を究極的には信用しなかった。

トウ小平は右腕の胡耀邦を切り、左腕だった趙紫陽を切り、持ち上げてさんざん利用した楊尚昆兄弟を最後には冷酷に使い捨てた。

この路線を踏襲する習近平は、「いつでも戦争が出来る準備をせよ」と軍に命じつつ、外向的には「中国の平和路線」と矛盾したことを平気でうそぶき、権力を固める。

だからルトワックは冷然かつ客観的に平然と孫子の限界と、その矛盾と戦術論は時代遅れ、基本的な戦略の部分だけが重要と言ってのけるのだが、それらはすでに数百年前に山鹿素行が、新井白石が、そして吉田松陰が鋭く指摘したことである。

孫子の特長としてルトワックが挙げるのは、

「国策や高度な戦略に焦点をあてたものや、戦争の戦術や詭計(軍略)にほぼ傾注しているものもある。「孫子兵法」の最大の長所は、普遍的でかわることのない戦略の逆説的論理(戦わずして勝つ、など)を、古代ギリシアの風刺詩ヘラクレイトスよりも分かりやすく、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』よりも全体的に簡明な形で示している点にある」と総括する。

そのうえでクラウゼビッッツの戦争論は原理から一歩一歩理詰めに説いて行く卓抜な手法に対して、孫子は『殆どが深淵な処方箋で構成されている」からだ』と指摘している。

浩瀚な戦略論だが、世界的に有名な戦略家の日本語訳が久しぶりにでた。
 
杜父魚文庫
| 宮崎正弘 | 07:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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