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NATOの新方針、ウクライナと中東の危機解決には疑問符    古澤襄
[ニューポート(ウェールズ) 7日 ロイター]北大西洋条約機構(NATO)は5日に終わった首脳会議で、東欧の加盟国をロシアから防衛するための「即応行動計画」を採択し、それに伴う軍事費の増強を表明した。またこの首脳会議で米国を中心とする「有志国連合」が過激派「イスラム国」に対抗していくことも確認された。

しかしNATOが、ロシアの支援を受けた勢力とウクライナの対立を解決することは不可能で、有志国連合がイスラム国打倒に向けた戦略を確立するまでにも、まだ遠い道のりをたどりそうだ。


NATOに関しては、即応行動計画の柱である緊急展開部隊の創設と、加盟国が軍事費を10年かけて国内総生産(GDP)比で2%に引き上げていくという方針の実効性には疑問が残っている。いずれも政治的な条件付きだからだ。

即応行動計画の目的は、過去15年間に加盟した東欧や旧ソ連諸国の防衛強化で、軍の装備更新への協力や装備の事前配備、航空偵察行動の定例化、これらの国での合同軍事演習が含まれる。

また創設が決まった緊急展開部隊は最大5000人規模となり、数日中に世界のどこへでも展開可能な態勢を築く。

NATO軍の常駐を要望していたポーランドやバルト3国は、特にオバマ大統領がNATO首脳会議にバルト3国の防衛について米国がコミットすると表明したことから、今回の決定に満足の意を示した。

NATO高官は、緊急展開部隊が加盟各国が既に保有する即応態勢の高い兵力を中心に編成され、域外への遠征作戦にも利用できるとしている。

ただこうした作戦行動には加盟28カ国の一致した同意が必要になり、国によっては域外派兵に制約がある。例えばドイツは、域外派兵には議会の事前同意が不可欠となる。

<ウクライナ領土回復では手詰まり>

欧米が、ロシアのウクライナ国内の親ロシア派への支援を抑えるために使える手段としては、軍事力を排除している以上、経済制裁と国際政治舞台からの締め出しが中心になる。

そして制裁はロシア経済に打撃を及ぼしつつある。とはいえ、プーチン大統領にロシア国外のロシア語住民の「保護」という方針を放棄させるには至っていない。

一方でウクライナのポロシェンコ大統領は、一部の同盟国から多くの軍事的支援の申し出を受けたことを示唆しているが、そうした支援も国内で親ロシア派が一定地域を占拠するのを阻止する上では、遅きに失したようだ。

米ブルッキングス研究所の国家安全保障問題専門家、マイケル・オハンロン氏は、プーチン大統領が明らかにNATO首脳会議のタイミングを狙ってウクライナの停戦支持を決めたことからは、西側による追加制裁示唆という脅しが効いて、ロシアがさらなる痛みを避けたいと考えている状況が読み取れると指摘した。

だがオハンロン氏によると、ロシアと親ロシア勢力が確保した地域を取り戻せるような手段を、NATO首脳会議が持ち合わせていないことも明確に示したという。

同氏は「ウクライナ東部で目にしている停戦は、ウクライナがクリミアや東部地域のすべてを奪回できないとしても、西側の安全保障上の利益にはかなっている。しかし現実的には、これはもう敗北したことだ」と述べた。


もっともあるNATO高官は、西側がロシアとの軍事衝突を回避するなら、時間は西側の味方だと主張する。ロシアは長期的には人口面、経済面、政治面で退潮傾向にあるからだ。

<基本的役割>

一方で米国は、ウクライナ危機よりも中東での混乱の方が西側の安全保障にとって長期的な脅威の度合いが大きいとみている。

このため米国は今回のNATO首脳会議を、ケリー米国務長官がイスラム国と対決する「中核的同盟」と呼んだ10カ国の結束を固める上で利用した。


ケリー長官は10カ国の共通認識として地上部隊を中東に再び投入しないことを明らかにした。それでも内外から軍事力行使に及び腰だと批判されてきたオバマ大統領は、有志国連合がイスラム国を壊滅させ、アルカイダの場合と同じように幹部たちを探し出して鉄槌を下すと強調した。

これに対して欧州諸国の一部からは、米国が政治的な手段を講じる前に軍事力に訴えるのではないかと懸念する声も出ている。

英国とフランス、ドイツの高官は足並みをそろえる形で、イラクでこれまでより各勢力を取り込んだ新政権が樹立され、スンニ派の隣国がイスラム国と対峙するための包括的戦略に取り組もうとする前に、西側が連合を宣言することへの不安感を表明した。

イスラム国の問題については、NATO自体はイラク軍の訓練などには関与するかもしれないが、直接の軍事行動には参加しない。あくまでも米国が軍事協力国を募る上での道具立ての1つというのが主な役回りといえる。

いずれにせよブルッキングス研究所のオハンロン氏は、ウクライナ危機があるにもかかわらず、NATOの今後の基本的な存在目的は、シリアやイラクにおける危機やアフガニスタンの治安維持といった域外の問題への取り組みになると指摘。今回の首脳会議では、そうした面に対応できるのかという疑念が払しょくされなかったとの見方を示した。
(ロイター)

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