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韓国は朴槿恵大統領で生き残れるか   桜井よしこ
朴槿恵大統領の世論迎合政治で情勢がさらに悪化し、韓国は真に存亡の危機に直面している。

北朝鮮による核兵器の実戦配備が現実論として語られる朝鮮半島情勢の緊張は、朴大統領が取り組むべき最優先課題が、国内では「従北勢力」の排除であり、国際社会ではあらゆる方向から迫ってくる中国の影響力をかわすことだと、明確に告げている。にも拘わらず、朴大統領は内政外交双方でその真逆を突き進んでいる。

5月22日、大統領は南在俊(ナムジェジュン)・国家情報院長と金章洙(キムジャンス)・国家安全保障室長を辞任させた。事実上の内戦状態にある韓国で、安全保障上、韓国最重要の二つの組織、国情院及び国家安保室のトップを辞めさせた朴大統領は、現実の厳しさに目をつぶり、希望的観測にすがるという意味で、オバマ大統領と基本的に気質が似ているのではないか。

司法界や政界を含む韓国政府中枢部への北朝鮮勢力の浸透が明らかな中で、軍出身の南在俊、金章洙両氏は、朴大統領を支える保守勢力の最後の拠り所だった。だからこそ、北朝鮮、中国、韓国内の従北勢力は両氏の追い落としを画策してきた。

両氏の辞任の理由は異なるが、共に職務の本質とは殆ど無関係な事柄で退かされた。たとえば南院長は、スパイ容疑で逮捕されたソウル市職員のユ某に関して、国情院が虚偽の書類を裁判所に提出したことの責任をとらされた。

ユ某が脱北者に関する個人情報を北朝鮮にもらし、スパイ行為を働いたとされた同事件で、一審判決は彼がスパイである「疑い」は残っているとしながらも、証拠不十分で無罪とした。

判決後、国情院はユ某が中朝国境を複数回出入りしていたとする中国の公文書を裁判所に提出したが、これが偽造文書だったというのだ。

韓国の有力言論人、趙甲済氏は、今回の事件を必要以上に拡大したのが実は駐韓中国大使と中国籍の協力者の金某だったことを指摘し、彼らの目的は南院長の追い落としにあったと分析してみせた。

■中国の憎しみの反映

中国籍の協力者、金某は朝鮮族の男性だが、彼は進んで韓国に入国し、韓国検察の聴取に応じた。「偽造文書は自分が国情院に渡した。国情院も偽造を認識していた」と供述した後、奇妙なことにホテルで首を切って自殺をはかったのだ。

金某の韓国入国、検察当局への協力は中国情報機関の了解なしにはあり得ないと見るのが常識であろう。その直後の自殺未遂(傷は浅く、程なく回復した)は如何にも不自然である。趙氏は金某の行動を国情院を陥れる偽装工作と見做し、こんな男の自白をそのまま信じてよいのかと、韓国のメディアや国民に問いかけているが、私は趙氏の見立てに同意する。

韓国の検察当局は4月14日、一連の偽造は南院長の知るところではなかったとの最終捜査結果を公表したが、野党勢力も韓国メディアも納得しない。左翼・リベラル勢力の、国情院と南院長への非難は過熱し続けた。さらに南院長追い落としの一大合唱に、保守言論人までもが加わった。背後に中国の情報介入が見てとれるが、それは共産主義勢力と最も果敢に戦ってきた南院長への中国の憎しみの反映といってよいだろう。

南院長は、1.米韓連合軍司令部解体に反対し、無期延期させることで米軍を朝鮮半島につなぎ止めた。2.有事の際、北朝鮮と呼応して韓国内で武器を調達して立ち上がる韓国転覆計画を目論んだ統合進歩党を摘発し、李石基議員の逮捕を実現した。3.張成沢粛清を朝鮮労働党よりも先に把握していた。

1は後述するように、中国の朝鮮半島に対する思惑と真っ向からぶつかる。2と3は北朝鮮にとっては許し難いはずだ。大局に立ち、中国よりも米国との連携を深め、北朝鮮の脅威を喰い止めようと、鋭い情勢分析をしてみせる南院長を、中朝両国が忌み嫌うのは当然だ。その分、彼は韓国にとって非常に貴重な人物だ。

朴大統領が南、金両氏の重要性を理解していなかったとは思えないが、結果として、彼らを守りきれなかった。国家戦略よりも、眼前の世論を気にかける大衆迎合政治ゆえであろう。戦略なき迎合政治だからこそ、セウォル号沈没に関して涙ながらに謝る中で、突然、海洋警察解体を宣言したりもするのだ。

朴外交の戦略の欠落は、外交の基軸を米中両国との連携に置いていることにも見てとれる。中国を米国と同列に並べ、米中の力を借りて北朝鮮の非核化を実現するというのは、誰が見ても単なる希望的観測にすぎない。6カ国協議の11年間の歴史を見れば、中国が北朝鮮の核開発を阻止するどころか、助けてきたのは明らかだ。結果、先述した北朝鮮の核実戦配備が懸念される事態が、眼前に生じている。

■再び二つのブロックに

中国は如何なる意味でも韓国の安全保障体制の強化や、韓国の対北優位の確立は望んでいない。米国が韓国同様「北朝鮮の非核化」を目指すのに対して、中国は「朝鮮半島の非核化」にこだわり続ける。そこからは北朝鮮はともかく、韓国には絶対に核を持たせないという中国の真意が読みとれる。

中国は08年5月、李明博大統領の訪中時に、「冷戦期の軍事同盟」即ち米韓同盟では「地域の安全保障問題に対応出来ない」と明言した。米韓同盟がある限り、朝鮮半島の安全保障は担保されないと言って、米韓同盟を断ち切らせ、朝鮮半島から米国の影響を排除する考えだ。

アメリカ抜きの朝鮮半島を中国が独断的に仕切り、中国式の秩序をもたらすということは、朝鮮半島が再び中国の属国となることと同義である。このような戦略で、日米分断と共に米韓分断を狙う中国の習近平主席に、朴大統領は、自ずと波長が合うと噴飯ものの賛辞を贈るのである。

米中二大国に守ってもらうという甘い幻想を朴大統領は掲げるが、中国が米韓同盟を認めた上で韓国に協力することなど金輪際あり得ない。むしろ世界は再び二つのブロックに分かれつつある。南シナ海でベトナム、フィリピンから島と海洋資源を奪い続ける中国は、触手をマレーシアの島にも伸ばしつつある。中国の蛮行は、21世紀の世界規範、国際法、民主主義、人間の自由などに真っ向から挑戦するものだ。その中国の側にロシアが立ち、北朝鮮、シリア、イランが追随する。

朴大統領は、世界史を帝国主義の時代に引き戻そうとする中国の側につくのか、それとも国際法、民主主義、自由と人権を尊ぶ日米をはじめとする側に立つのか。正しい選択をしなければならない。(週刊新潮)

杜父魚文庫
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