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日中新幹線、争奪戦の舞台は東南アジア   宮崎正弘
■後発の中国新幹線がタイで成約、日本は技術世界一なのに何故?

タイのインラック首相は先月、中国の李克強首相を迎え、タイに建設予定の新幹線は中国企業と一部契約する意向を伝えた。日本が熱心に売り込みを図ってきたが、物量作戦とプロジェクト費用の安さに惹かれたようで、日本は技術ならびに「半世紀無事故」という強みも、価格戦争には叶わない側面がある。

しかし日本が売り込みに先行しつつ、後発の中国の新幹線とプロジェクト争奪戦を展開する主戦場は米国ではなく、東南アジアである。

タイの他、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアと日本企業連合の新幹線ビジネスは伯仲している。

中国語新聞『陽光導報』(2013年11月7日付け)は、日本新幹線vs中国高速鉄道(高鉄)の「東盟争奪戦」を特集した。(「東盟」はアセアンの意味)。

いわく「日本は大東亜共栄圏の再構築を狙って新幹線売り込みに官民挙げて躍起となっているが、これはアセアン、ならびに東アジア首脳会議を舞台に繰り広げられる政治抗争の側面があり、後発中国と雖も、アジアに於ける政治主導を重視するための象徴的プロジェクトである」云々と論評した。

むろん、ドイツ、フランスも同じ市場での展開に余念がなく、たとえば車両、信号系統などで日本が全体の事業を請け負えない場面も往々にでてくる(たとえば台湾新幹線は信号系統がフランスに取られた。韓国の新幹線なるものはフランスがつくり、完成後三年ほど動かなかったため日本が技術応援に行った。台北市の地下鉄も同じ問題が起きた)。

各地での新幹線プロジェクトに中国が横合いから参入し、商談を攪乱していることになる。

日本は無償援助、円借款という背景を強みに受注合戦を有利に運ぼうとしているが、かたや中国は猛烈な政府高官による売り込みと、成約への凄まじい政治エネルギーが日本より熱く、そのうえ値段の安さと舞台裏の取引に長けているため、かならずしも日本有利な情勢ではない。

 ▼インドネシアは市場化調査、ベトナムでは日本優勢

具体的にみていくと、まず日本政府はインドネシアと覚え書きをかわし、将来のジャカルターバンドン間の高速鉄道建設のフィージビリティスタディ(商業化可能性調査)を開始する。

すでにジャカルタ市内交通網建設は大林組、清水建設の合弁事業がスタートしており(総額100億円)、近郊都市との交通アクセス整備事情は三菱重工と住友商事が近郊幹線の電化工事を受注し、総額210億円は円借款となる。

ベトナム新幹線は総工費570億円。日立製作所グループはすでに駅舎、プラットフォーム、改札、チケット自動券売機などで合意している。ホーチミン中心部から東北各都市17駅を結びハノイまで全長1570キロを五時間半でむすぶ計画だが、すでに日本企業総体のベトナム投資は1090件、380億ドルに達している。ベトナムが中国に発注する可能性は薄いだろう。

タイではバンコック近郊の交通網整備プロジェクトならびにバンコク地下鉄拡充工事でJR東日本、丸紅、東芝の企業連合が総額400億円。信号系統などを受注した。

地下鉄は2016年に新駅23駅に車両なども納める。安全運行のためJR東日本は完成後十年間、二十名の安全管理要員を常駐されるという条件も契約に含まれ、その安全管理というソフト面をプロジェクト売り込みの主要なポイントとしている。この分野は中国が明らかに遅れを取っているうえ、2011年の温州駅付近での新幹線事故の悪い印象が依然として尾を引いている。

インラック首相はしかしながら日本の他、中国へも新幹線プロジェクトへの入札を呼びかけ、一部は中国企業と成約した。
将来的にはバンコクーアユタヤのみならず、チェンマイなどとも結ぶ全長1800キロ、四本の新幹線プロジェクトを計画している。

マレージアとシンガポールを結ぶ新幹線は2020年完成予定である。
クアラルンプールとシンガポールを僅か九十分で結ぶ構想で、7月に安倍首相が両国を訪問した折も、日本の新幹線技術を売り込んだ。松下、東芝などはマレーシアでの生産が急膨張しており、こうした日本企業の評判が背景にあるため、総額100億円プロジェクトは、現在のところ、日本が有利である。

日本の新幹線技術の安全神話は世界中に知れ渡っており、開業以来無事故、あの東日本大震災でも脱線しなかった。毎日70万人以上の乗客が利用し、遅延は36秒が平均という稀な正確さも、電子、信号、総合統制など、日本のテクノロジーの集大成であり、世界の鉄道史にも例をみない快挙である。

 ▼後発だが中国の強みは価格戦争で圧倒できることだ

中国の鉄道関係者の誰もが認めることは各国の要望は根強くあっても、けっきょく鉄道プロジェクトは安全性が最優先するという冷厳な事実である。

しかし中国の新幹線は日本、ドイツのシーメンス、フランスのアルス、カナダのボンバルディア社から技術を習得し、車両技術の一部は盗用し、短期間で世界レベルに達成し、これからは成熟期を迎えるという妙な自信をもっている。

そのうえ中国がもっとも有利なのは日本など西側の価格の半値から四分の三という安さがうりであること。

とはいうものの中国は日本の『アジア+ワン』(中国加一)戦略への転換で、すでに日本のアジア投資が急激に拡大している環境変化に注視しており、その日中のアジア市場争奪戦の象徴として新幹線売り込みを位置づけた。

日本はラオス、ミャンマー、フィリピンへもODA、円借款など積極的な政治戦略を行使して優勢にあり、これらの金融面での支援が新幹線建設の一部に廻されている。
     
杜父魚文庫
| 宮崎正弘 | 10:20 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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