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血で血を洗うイスラム教徒  平井修一
小生は宗教にはそこそこの敬意を表しているが、「どんなものにでも疑問を持つことが大事だ」という考えだから信仰、信者とはずいぶん隔たっている。どんなに有名な宗教や教義でも、いい教えがあれば参考にはするが、一から十まで信じることはない。

そう、宗教とは一つの人生の指針とは見ても、ひたすら信じることで救われようなどとは全く思っていない。ほとんどの日本人は多神教だから、特定の宗教を奉ずるような人は少数派で、小生のような「宗教に距離を置く」人が多数派ではないか。

まあ一応は檀家だから小生も仏教徒ということになるが、お経もほとんど知らないし、教義にさほどの関心があるわけではない。そういう「普通の日本人」の感覚からすると、イスラム教というのはずいぶん異質の宗教である。

イスラム教は630年頃にモハメット(ムハンマド)が開祖したから1400年近い歴史がある。当時、日本は大和時代で538年に仏教が伝来、遣唐使が始まり、中央集権国家を目指す645年の「大化の改新」を控えていた時期である。

イスラム教はアラーの他にいかなる神も認めない「妥協を知らぬ一神教」で、聖典のコーランは信徒の義務、道徳的規範、戒律、刑法、民法の法律などを含み、信徒の信仰生活のみならず実際生活のあらゆる部分、生まれてから死ぬまで、箸の上げ下げにいたるまで厳しく支配している(甲斐静馬「中近東」)。

教祖が死ねばタガが外れて教団が分裂するのはよくあることで、現在、イスラム教には72の宗派がある。日本の伝統仏教は「十三宗五十六派」と言うから、イスラム教の宗派が特に多いというわけではないだろう。

イスラム教の宗派で代表的なのがスンニ派とシーア派だ。教義の多少の違いはあるが、基本的にはモハメット死去後の後継者争いで、スンニ派は人物本位、シーア派は血統重視で、1400年近くも争っている。日本の南北朝時代のような敵対がずっと続いているのだ。

ロイターがこう報じている。

<宗派対立が再燃するイラク各地で7月2日、市場や商業地区などで爆弾攻撃が発生し、少なくとも45人が死亡した。

最も多い犠牲者が確認されたのは、バグダッド北部のイスラム教シーア派住民が大半を占めるシャアブ地区で、自動車に仕掛けられた爆弾で8人が死亡した。バグダッドの他のシーア派地区でも爆発が発生した。イラクでは1日にもシーア派を狙った攻撃があり、少なくとも27人が死亡した。一方、バグダッド西部のアブグレイブなどでは、スンニ派を標的とした爆発が確認された。

同国では、武装勢力の攻撃による6月の月間死者数は761人に上った>(2013/07/03)

月間だけで761人もの人が殺されている。宗派抗争どころでなく血で血を洗う宗教戦争だ。他者を殺すことも自分が死ぬことも厭わないという狂気の沙汰で、「宗教=心の癒し」と思っている小生には理解不能である。なぜこれほどまでに憎み合うのか。

<今のイラクは、社会を混乱させ内乱状態を激しくさせようとするテロリスト勢力(原理主義のアルカイダや旧サダム・フセイン派など)が、スンニ派とシーア派との間で紛争を起こさせようと煽り立てているので、異常な対立状態になっています。

普通のまともな時代、まともな状態では両派ともなんとなく共存してきたのです。イスラム教徒でも、宗派の違いだけで全面対立したり殺し合ったりなどはしません>(教えて!goo)

ジャーナリストの池上彰はこう書いている。

<アラブ世界はスンニ派の人が多いのですが、イランはシーア派が主流で、イラクの東半分ぐらいもシーア派が主流ですし、サウジアラビアの南の一部やバーレーンにもシーア派が多数います。

なぜかシーア派の人たちは石油資源が豊富なところに大勢います。これをシーア派の人たちは「神様が我々のために石油をくださったのだ」という言い方をしますが、この石油のために、スンニ派とシーア派の対立が生まれやすくなっているのです。

実はイスラム世界のスンニ派とシーア派の対立というのは、宗教的な対立というよりは、「この土地は誰のものか」「この石油は誰のものか」という争いが多いのです。単純な宗教対立とは違います>

スンニ派とシーア派の殺し合いは「自分こそが正当で、他派は邪教、異端だ、殲滅すべし」というイスラム教の非妥協性のためだけではないようだ。宗教と言えども先立つものはカネで、利権も絡んでいるのだろう。

イラクではこの3月にフセイン政権崩壊から10年を迎えたが、06年に激化したシーア派とスンニ派の宗派対立は継続しており、市民が安心して暮らせる状況からはほど遠い。アジアプレスがこう報じている。

<【キルクーク、玉本英子】車の修理工場で働く男性たちに声をかけると人びとが集まってきた。オスマン・モハメッドさん(41)は「家族が爆弾事件に巻き込まれないよう神に祈る毎日。町のあちこちに警察や兵士の姿が見えるのに一向に治安が良くならない。サダム・フセインはいなくなったが、他のサダムがいくつも現れた。アメリカはどこへ行ったのか。誰も私たちを助けてくれない」と訴える。

「いつになったら平和で安心できる街になるのでしょうか。民族がなかよく暮らすことはもうできないのでしょうか・・・」。そう語りかけるオスマンさんに、私は答えることができなかった。逃げ場のない住民は、この恐怖と不安のなかでいまも暮らしている>(2013年4月8日)

キルクークはイラク北部の都市で、イラク最大級の油田のひとつ、キルクーク大油田がある。民族間で産出される原油の分配問題もあり、宗教戦争を煽っているようだ。

スンニ派、シーア派とも現場の過激派は「平和共存」を唱える宗教指導者の言うことは聞かない。ましてや政府の言うことを聞くはずもないし、政府は抑えこむ力もない。大衆を支配する道具だった宗教は暴走して最早制御不能になった。宗教戦争は双方の涙が涸れ疲れ果てるまで数十年は続くだろう。「妥協を知らぬ一神教」に早期の停戦、休戦はあり得ない。(頂門の一針)

杜父魚文庫
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