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自然に親しんできた生活を守りつつ数百年に一度の大災害に対処したい  桜井よしこ
東日本大震災から2年になる。この間、復旧復興はどれほど進んだかといえば、極めて遅い速度である。典型的なのががれき処理である。昨年12月時点で、岩手、宮城、福島3県の平均で33・6%しか処理されていない。

これは一にも二にも、政治の責任である。

例えば新潟県の泉田裕彦知事は、柏崎、三条両市が岩手県のがれきを一般ゴミとして処理したことを「犯罪行為」と非難した。しかし、これらのがれきの放射能レベルは一般の県内のゴミと同じである。心ないのみならず、科学の知識を欠く知事や、民主党政権首脳部の誤った政策が復旧復興を妨げ、かつ、風評被害も広げている。

遅れている復興について興味深い統計がある。帝国データバンクが2012年2月に行った「震災復興に対する企業の意識調査」である。復興を妨げる主体は誰かとの問いに、企業と人々と答えたのは10%弱、地方自治体が41%、中央政府との答えは93%に上った。

同様に復興を推進した主体として企業と人々を挙げたのが40%、地方自治体が23%、中央政府は6%だった。

現地で復興に取り組んできた企業の肌感覚から導き出された一連の数字は実に正しいと思う。わずか月1回程度のボランティアではあるが、現地に行けばそのことがよくわかる。それだけに昨年12月末に発足した自民党政権には全く異なるアプローチで復興に取り組んでほしい。

その第一は、千年あるいは数百年に1度の大災害に国と地方はどのような考えで対処するか、大方針を決めることだ。今更、と思う方もおられるだろう。しかし、三県も各自治体もバラバラに動いているために、効率は悪く、加えてとんでもないことが起きている。

一例が3県の海沿いの随所随所に築かれつつある巨大な防壁である。朝日の昇る美しい海に合掌し、豊かな海の恵みに感謝しつつ暮らしてきた人々の視界から海が消え、どれほど背伸びしても見えるのはコンクリートの高い壁という異様な風景が出現しつつある。

自然と共に生きるとはこんなことではない。10メートルを超えるような防潮堤ができ、安全性が高まったとして、そこでの暮らしは以前とは全く異質のものになる。自然に親しんできた生活を守りつつ、千年か数百年に1度の大災害にどう対処するべきかを考えるときだ。自民党政権が進める国土強靱化計画もその点を考慮に入れなければ意味はないと思う。


福島に関しては、なんとしてでも放射能についての正しい知識を普及させなければならない。1ミリシーベルトが安全か危険かの分岐点であるかのような誤った民主党政権の施策を明確に否定し、科学の常識を基本にした対処策を講じない限り、福島の復興はとても難しいと実感する。

政府が克服すべき課題は多いが、帝国データバンクの調査にあるように、各地で人々と時間を過ごすと、希望が湧いてくる。勁(つよ)くて元気、勇気ある日本人が大勢いるのだ。とりわけ女性が前向きである。

加賀美由加里さんたちは宮城県南三陸町を東北一の桜の名所にしたいと願って、12年から植樹を始めた。加賀美さんは四〇年間ファッションの仕事に携わり、社団法人LOOM NIPPONの代表を務める。

福島県でも、日本一の桜の名所をつくりたいと、西本由美子さんたちが今年、植樹を始めた。海沿いの道路の脇に万本単位の桜を植えて、10年20年先に、美しい桜の故郷に皆が戻ってくることを願っての植樹である。

3月3日、私も植樹してきた。立ち入りは許されるが放射線量が高くて泊まることは許されていない楢葉町で、私は楢葉中学1年生の富澤政輝君と共同作業で植えた。福島のみならず、すべての被災地の復興と、政輝君の成長を楽しみにしたいと思う。(週刊ダイヤモンド)

杜父魚文庫
| 桜井よしこ | 06:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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