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あくどい中国と北朝鮮の商法  宮崎正弘
中国企業の北朝鮮鉱山開発投資は大失敗だったらしい。中国最大の3000万ドル投資がチャラになる可能性がでて、まさか泣き寝入り?

中国に進出した日本企業がつぎから次への条件変更に悩まされ、あげくに撤退するとなると別のカネもかかる。馬鹿馬鹿しくてやってられない、二度と中国なんぞへ行くものか、という嘆き節をよく聞かされた。

直近の悪例が王子製紙だろう。

江蘇省政府が土地も提供する、中国の洋紙マーケットは巨大だと言われて進出を決めた。江蘇省南通の南南東郊外に広大に拡がる湿地帯を埋め立てて、大工場地帯を造成していた。実際に小生も現場を見学したが、揚子江にのぞむ船着き場もあり、近くには東レも進出しており、広い道路も整備されている。

パルプから洋紙一貫工場なら、立地条件は良好だろうと思った。五年か六年前である。

王子製紙はプロジェクト・チームを上海に派遣し、国際貿易センタービルに20人ほどが駐在、現地で中国語もならって最新鋭工場の工事を監督し、同時に中国各地に販売オフィスも起ち上げた。

突如、北京の中央政府から「待った」がかかり、工事は第一期がえんえんと延期された。目処は立たず、立ち往生。

ようやく上層部の政治的コネがついたのか、第弐期工事が始まり、予定より数年も遅れて製紙工場は完成した。

2012年7月29日、王子製紙を標的とする公害反対の突発的デモがおこり、しかも南通の隣町、啓東で市庁舎に暴徒が乱入し、パトカーを横転させ、手のつけられない暴動となった。

漁民が最初に騒いだ。海が汚染され、漁獲に響くから、王子製紙の排水パイプラインによる汚染水の海洋への垂れ流しを止めよという言いがかりである。

王子製紙は、工場から直接、揚子江へ排水せず、汚水を弐個所で処理しつつ、長い長い排水パイプを敷設して、東シナ海に面する啓東市から海に流す工事をしていたのだ。公害対策は万全だった。

はやくから汚水処理技術をみとめて、パイプライン建設を許可した啓東市当局が、突発的なデモに遭遇するや、この排水パイプライン敷設を不許可とするなど、約束不履行となってしまった。

王子製紙はすでに、この南通洋紙一貫工場プロジェクトに2300億円を投じている。

つぎつぎと最初の条件が変更になり、予定は数年も遅れ、いざ完成というタイミングでまたまた無理難題を突きつけられ、日本企業はほとほと嫌気を抱くわけだが、王子製紙としては社運をかけてきた大プロジェクトだけに、いまさら中止というわけにも行かないだろう。

結局、しぼり取られるだけ絞られ、大赤字のまま、メンツのために続行するか。或いは中国企業に売り逃げるか。もし撤退となれば、ほかの日本企業は中国から一斉に引き揚げという最悪のシナリオも考えられる。

▼北朝鮮は、この中国のあくどい遣り方を中国企業に適用したのだ

さてもさても北朝鮮が、中国のあくどい遣り方を中国企業に適用した。

経緯はこうである。中国企業としては、対北朝鮮ビジネスが始まって以来、最大の投資として騒がれたプロジェクトは合弁による北朝鮮鉱山開発である。

30年の長期契約で安定的な鉄鉱石粉末を北朝鮮から中国へ輸出させると謳われた。

かの中国は遼寧省に本拠の「海域西洋集団」。北朝鮮の30度線に近い西側の鉱山を開発するために北朝鮮と合弁の「洋峰合管」というベンチャーを起ち上げた。

2011年までに3000万米ドルを投資し、年間50万トンの鉄鉱石粉末を生産、そのうちの75%が中国へ輸出されるという契約だった。

実際に現場では210棟の北朝鮮労働者用の社宅まで建設された。

この契約をつぎつぎと北朝鮮は条件をかえ、とんでもない条件を追加してきた。

労働賃金を上げよ、いやならば電気ガス水道の供給を止める。いや供給続行にはかくかくしかじかの「新税」を支払え。

あげくに労働者は真面目に労働しない、さぼるのは常識、労働者側のボスはやくざの親分でもあり、中国人スタッフが怒ると、逆襲される。

▼山賊の末裔はこうまでえげつない

ついに2012年3月2日、午前二時、20人の武装集団が中国人宿舎を襲い、いきなり「国外退去処分がでたので新義州から去れ」と通告した。

中国企業ですら想像を絶する条件の改竄改定、突然の法律変更。さすが山賊匪賊が政権をとった国である。

それでも中国は北朝鮮の幹部を中国へ呼んで交渉を続けた。

最初のプロジェクトの起ち上げに、高層部へ賄賂が必要と言われ、80万米ドルを渡した。これが2008年に追加で10万米ドル、中国人スタッフが平壌へ行くときは「ラップトップ型パソコンを持ってこい」「携帯電話をもってこい」と要求がエスカレートしていった。

北朝鮮幹部が訪中すると、ホテル代金どころか毎晩、高級売春婦を要求し、その売春費から追加の部屋代も支払わせた上、ホテルでは暴飲暴食の限りを尽くし、ひとりにつきお土産代金として20万米ドルを要求された。

そのあげく、年間三万トン以上は売れない、国家の戦略物資なので、その条件にはまだ付帯条件がついて、土地のレンタル料は一平米につき、1ユーロ。海水の使用量は1立方につき、0・14ユーロ。
 
この問題、ついに中国と北朝鮮の政治マターとなって火花が散る。今後の中国の交渉術は、日本政府ならびに企業にとって参考となるので、注目するべきである。

杜父魚文庫
| 宮崎正弘 | 06:39 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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