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我が国の自衛権と台湾と「生活第一」 西村眞悟
四月に、元満州特務機関員の門脇朝秀さん(九十九歳)に同行して東台湾の「山の人」(原住民・高砂族)を訪問してから、台湾と日本のことを語る機会が多くなった。そこで、今日は、我が国の自衛権の立場から台湾を観てみたい。
 
およそ我が国の戦後は、自衛権を具体的に考えないということを特色とする。

これは不思議でもなんでもない。日本国憲法を「憲法」とする体制では、自衛権を考え発言する者は、「問題発言」の常習者で追放すべき者となるからである。

憲法前文は我が国は「平和を愛する諸国民の公正と信義」に頼れば平和であり、九条は戦争は禁止で交戦権はないとして軍隊をもつことを禁止している。

これはつまり、自衛権を考えるな、考えてはならんという体制である。しかしながら、自衛権を具体的に考えないということは、自国の歴史を理解できないということである。

従って、日清日露の戦いも、支那事変からの事態も、大東亜戦争も、「戦争反対と叫んでいれば避けられた戦争だ」と思っている者がほとんどとなる。
 
原発反対を叫ぶデモに参加し、デモ解散後にクーラーのきいたビアホールでとびきり冷えたビールを飲むのを楽しみにして歩き、しこたまビールを飲んで食べてから、クーラーのきいたマンションに帰って冷蔵庫から冷えた水を出して飲み風呂に入ってクーラーをいれたまま寝る。

これで原発がなくなるのか。それほど、現代社会という巨大な有機体は単純ではない。

ましてをや、相手国のある国際社会、さらに我が国周辺のように、その相手国がずらりと軍備増強に励む独裁国家である場合には、我が国の憲法前文は嘘であり、その嘘を前提にした九条があれば戦争はないと考えるとすれば、それは痴呆そのものである。

少なくとも、政治家は、戦争反対を叫んでいるだけで任務を全うできない。従って、常に自衛権のことを具体的に考えていなければならない。これを怠れば、国家を防衛することはできない。

そこで、我が国の自衛権と台湾の関係を書いておきたい。

国際法は慣習国際法という形で存在し、その慣習は具体的な紛争ケースが創りだしている。そして、およそ国際法を学ぶ者が検討する自衛権に関するケースは、次の二つである。

(1)デンマーク艦隊引渡請求事件、一八〇七年  紛争当事国 イギリス・デンマーク

一八〇五年十一月、トラファルガー海戦でナポレオンの艦隊を打ち破ったイギリスにとって、残る脅威は、ナポレオンが陸路デンマークを制圧して、デンマークの艦隊をナポレオンの艦隊としてイギリスを攻撃することであった。

そこで、イギリスは、一八〇七年、ナポレオンがデンマークを攻略する前に、デンマークに艦隊の引渡を請求し、デンマークが拒否するとコペンハーゲンを海から攻撃してデンマークの艦隊を全てイギリスに持ち去った。イギリスは、これを自衛権に基づく措置としている。

(2)カロライン号事件、一八三七年  紛争当事国 イギリス・アメリカ合衆国

一八三七年、カナダにおいてイギリスからの独立闘争が始まると、ニューヨーク、ミシガン、バーモントなどの北米各州のアメリカ人はカナダを支援し始めた。

アメリカの船カロライン号はナイアガラ川のアメリカ領とイギリス領の間を往復して独立を叫ぶ反徒を支援する武器や物資そしてアメリカ人支援者を運んでいた。

そこでイギリス軍は、このカロライン号を急襲して船を破壊してナイアガラ瀑布にほりこんだ。イギリスは、これを自衛権に基づく措置であると主張した。

この二つの自衛権のケースを前提にして我が国の自衛権を具体的に考えておかねばならない。そうでなければ、国を守れない。

この自衛権を学び、従って具体的な緊急事態でそれを実行しえた人物に東郷平八郎がいる。

カロライン号事件から五十七年後の一八九四年、日清戦争の緒戦において、我が国の巡洋艦「浪速」の艦長であった東郷平八郎大佐は、黄海でイギリス商船「高陞号」が清国の兵士と武器弾薬を満載して航行しているのを発見し、船長に「停船せよ」と命じるも拒否されたので直ちにその船を撃沈した。

東郷艦長は、この撃沈をカロライン号事件と同じく、自衛権に基づく措置として動じることはなかった。しかし、時の伊藤博文内閣は腰を抜かし、イギリスも当初激昂するかにみえたが、東郷の措置の全貌が伝えられると、カロライン号事件通りなので一挙に沈静化した。

さて、(1)のデンマーク艦隊引渡請求事件であるが、この事件で明らかになった自衛権から言えば、仮に台湾が中共に併呑されるとすれば、台湾の強力な海軍と空軍は、中共の人民解放軍と一体化して我が国に対する脅威になるのであるから、我が国は自衛権に基づいて、台湾の海軍と空軍の引渡を請求できることになる。

この角度からも、台湾は日本の自衛権と不可分な生命線である。

次に、我が国を取り巻く情勢と我が国の進路そして、その進路を確保するための方策を簡単に述べる。

まず、アメリカは、オバマ大統領のつくりだした巨額の財政赤字によって、国防費の大幅削減による軍備縮小は必至である。

横須賀を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンは数年後に稼働できなくなる。日本からアメリカの空母がなくなる。海兵隊の予算も確実に縮小されるであろう。

次に、中共であるが、二〇年以上にわたって軍事費を二桁の勢いで増額してきており、核ミサイル戦力と軍の近代化そして海空軍力の増強は尋常ではない。そして、国内には貧富の格差が増大して暴動が絶えない。

このアメリカの軍備縮小と中共の軍備拡大という正反対の動きによって、東アジアにおけるアメリカの軍事的プレゼンスは減退し中共のプレゼンスは膨張している。

つまり、東アジアにはアメリカの後退による「力の空白」が生まれ、中共の増大による「力の不均衡」が生まれている。

そして、この軍事力を膨張させている中共が、暴動を頻発させている国内不満の解消のはけ口として、東アジア特に台湾海峡と尖閣において対台湾そして対日本への軍事的行動に打って出る可能性が高まりつつある。

この我が国を取り巻く厳しい状況のなかで、我が日本国内の状況は如何か。それが、情けないかな、「生活第一」である。

つまり、「生活第一」とは「金魚鉢の中の平和」、「頭だけ隠したダチョウの安心」だ。

しかし、この外部状況下における「生活第一」は、中共の軍事行動を抑止するのではなく、返ってそれを呼び込み誘発させる要因となっている。

さらに内に呼び込む要因に止まらず、沖縄の状況を観れば、中共の思想侵略そして沖縄侵略を我が国内部において作り出す絶好の温床となっている。

沖縄県知事自らが、「オスプレイが配備されるならば沖縄の全基地を封鎖する」と言い放つような沖縄におけるアメリカ軍のオスプレイ配備に対する異常な拒絶反応は、既に、中共の思想侵略の成功を示す中共のための反米反日闘争の様相を帯びている。

オスプレイを普天間基地に配備するのが危険だというならば、日米合意通り基地を普天間から移転すればいいではないか。

また、現在基地に配備されている航空機のほうが、オスプレイよりも事故率が高いのならば、オスプレイへの転換に異存を言う筋合いはないではないか。

さらに、オスプレイは、零戦なみの300ノット以上の高速で飛行し、しかも航続距離が長い。従って、オスプレイ配備によって今までより広範囲に平和維持活動が可能となり我が国の安全がさらに強化される。

中共に支配されることを望むのではないのならば、オスプレイ配備に斯くも異常に反発する理由は見当たらない。
 
オスプレイ配備を切っ掛けに、また口実に、巻き起こっている沖縄の反対運動は、「生活第一」に象徴される我が国の国内事情が生み出した中共の工作活動の成果としか考えられない。

これこそ、我が国の内向き一辺倒の「生活第一」政治が、返って国家の危機を生み出している証左だといえる。

中共の国防動員法は、中国人は北京政府の指令があれば日本国内にいても指令通りの軍事行動をとる義務を負うとするものであるが、我が国は自衛権に基づいて、そのような義務を負う中国人の我が国への入国を禁じるべきだと思う。

我が国は、この外部の危機と内部の危機を克服しなければならない。その為、国土を強靱にし国を強くし国を富ましむことである。明治のように言うならば、我が国の進路は、富国強兵であらねばならない。

特に、空母を一発で撃沈できる巡航ミサイル、空母キラーミサイルを緊急に開発し実戦配備することは死活的に必要である。

同時に、ステルス戦闘機の開発そして高性能潜水艦の開発配備も必要である。要するに、我が国には、中共に暴発を思い止まらせるに足る軍事力、暴発しても目的を達せられない、勝つ見込みはない、と思わせる軍事力が必要なのだ。

この軍事力のない「生活第一」など相手の侵略を呼び込むもので、返って国家国民にとって有害だ。パンツ一丁で、札束ぶら下げて新宿歌舞伎町の路上で昼寝しているようなものだ。

杜父魚文庫
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