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天災と人災と無能な指導者の弊害と国会事故調 阿比留瑠比
さて、私の出身地である九州地方ではとんでもない豪雨被害が出ています。多数の人が避難生活を強いられていますが、こういう時に、平成16年に愛媛、高知両県で台風が甚大な被害をもたらし、直後に新潟県中越地震が発生して10万人以上避難者が出た際、ブログでこう言い放った政治家がいましたね。

「あい続く天災をストップさせるには、昔なら元号でも変えるところだが、いま必要なのは政権交代ではないか」

今そこにいる被災者の救援や必要な災害対策を微塵も考えず、人の神経を逆なでするような無責任極まる政局発言を堂々と記したこの人が、後に未曾有の大災害で最高指揮官として采配をふるうことになったわけです。われわれ国民の味わった不幸は計り知れないものがあります……。

で、再び先日の東電福島第一原発事故に関する国会事故調の最終報告書に関してであります。個別の政治家の責任を問おうとせず、システムや日本文化そのものに責を負わせようという結論には多々不満がありますが、1100人以上の関係者からヒアリングしたというだけあって、なかなか興味深い視点も多く指摘されていました。

その中で、菅直人前首相が海江田万里経済産業相ら周囲の要請、助言、懇願を聞き入れず、原子力緊急事態宣言を出すのが2時間遅れ、それが結果として避難指示の遅れにもつながったと指摘している部分が、私が当時、官邸で取していて感じた強いいら立ちに通じるので紹介します。以下、国会事故調報告書からの引用です。

《菅総理は、「本当に全部落ちたのか」、「予備のバッテリーがあるはずだ」などと、緊急事態宣言の発出と原災本部の速やかな設置の必要性よりも、なぜそのような事態になってしまったのかという技術的な観点や、法令上の建て付けに関する質問を繰り返した。

そして、「なぜこんなことになったのか」、「本当に全ての可能性がないのか」と繰り返し質問し、「これは大変なことだよ」と発言して、海江田経産大臣や保安院幹部から再三にわたり、「総理、これは法律に基づいてやらなければならないんです」、「緊急事態宣言を出してください」と緊急事態宣言の発出を要請されても、これを了解しようとしなかった。

(中略)菅総理は、すぐに回答を得ることの困難な、事故の発生原因を繰り返し尋ねたり、与野党党首会談の出席を優先させて、「大変なこと」への初動対応の端緒となるはずの緊急事態宣言発出の了解を後回しにした。》

まあ、2月に公表された民間事故調報告書も菅氏の「マイクロ・マネジメント」の問題点は指摘していましたが、これが菅氏が危機・非常時のリーダーにとことん向かない男であり、菅氏自身の特異な性質こそが「人災」そのものであったことの本質の一つだと思うのです。

あくまで私が気づいた範囲なので見逃しもあるかもしれませんが、国会事故調報告書のように原発事故対応のあり方と重ねて菅氏の上記のような頑迷で自信過剰で何より人の話を聞かない性質の悪影響を明確にしたものは、私が自分で書いてきたもの以外ではあまり見当たりません(なのになぜ個人の責任は免責するのか不思議ではありますが)。

例えば、私は雑誌「WiLL」の昨年6月号に書いた「菅首相の存在こそ『不安材料』だ」の中で、事故調報告書の指摘と趣旨を同じくすることを以下のように書いています。震災以降、新聞各紙の関係記事はできるだけ目を通すようにしてきましたが、同様の視点の提示があったかは寡聞にして知りません。

《「菅首相には、宰相たるものがもつべき大局観がまるでない。反対に、自分が知っている些末なことにこだわって、いつも判断を下すのが二日遅れる」

震災後、菅首相と接触した複数の官僚は異口同音に話す。

たとえば、福島第一原発の非常用電源であるディーゼル発電機が壊れた際のことだ。ふつうの政治家ならば、「その事態にどう対策を打つか」と考える。

ところが、菅首相は理科系出身であるためか、「なぜディーゼル発電機が壊れたのか」の原因究明に異常な関心を示し、議論がなかなか対策まで進まないのだという。

また、原発に注水するにあたって、事務方が熱中性子を吸収するホウ酸を入れると報告すると、「それは粉末で入れるのか溶液にするのか」と、どうでもいいことにこだわる。

事務方が即答できないと怒り出し、「俺の知っている東工大(菅首相の母校)の教授と議論してから来い」と追い返し、作業を遅延させたこともある。

「菅首相は説明に訪れた相手に『これはどうなんだ』『あそこはどうなっているんだ』とねちねち議論を吹っかけ、やり込めて喜んでいる。相手が答えられなくなると勝ち誇るが、結局相手の肝心な説明は聞いていないので何も学んでいない」

官邸スタッフはこう証言するが、はたして、これが危機に直面した一国の首相の振るまいだろうか。(中略)

その後、経済産業省原子力安全・保安院幹部らが刻々と移り変わる現状について報告しようとしても、菅首相はたびたびこう言って相手の発言をさえぎった。

「お前たちは現場をみていないだろ。俺はみてきたんだ」》

……この「現場を見てきた」というセリフについては、「一体何回、言われたことか」と関係者はこぼしていました。そこで議論が打ち切られてしまうわけです。ここにも菅氏の自分が実際に見聞きしたこと、自分の過去の経験・知識の範囲でしか物事が判断できないというキャパの小ささが表れているように思います。

国会事故調の参考人聴取では、菅氏は福島第一原発を視察した意義について「責任者の顔と名前が一致した」と語り、会場を唖然とさせ、あるいは失笑を読んでいましたが、こんなのが日本の最高指揮官であり、原子力災害対策本部長であったわけです。

しかも、原子力安全委員会の班目春樹委員長は昨年3月28日の参院予算委員会で、菅氏の現場視察の目的についてこう証言しています。

「菅首相が『原子力について少し勉強したい』ということで私が同行した」

現場視察を3月11日深夜に思いついた後、ベント作業がなかなか進まなかったことで、目的は「お勉強」から「ベント督促」へと変わったようにもうかがえますが、揚げ句、帰ってきてからは「俺は現場を見たんだ」の一言で、周囲の進言も説明にも耳をふさいでいたわけです。

やはり、事故被害を拡大し、対策を遅らせた人災の元凶として、菅氏個人の責任をきちんと問うべきだと考えます。少なくとも自ら首相の地位を目指した人なのですから、指導者にとって、特に非常時に際してははっきりと「無能は罪」であることを明確に教えてあげた方が親切ではないかと。

杜父魚文庫
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