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奥野誠亮さんの「白寿」を祝った日 岩見隆夫
少子化は困りものだが、高齢化は長寿社会の実現だから喜ばしいはずだ。少子高齢化とひとつの言葉にしたのは人口の年齢構成がアンバランスなのはまずいということだろうが、高齢化自体もうっとうしいようなニュアンスが伝わってきて、高齢者には愉快でない。

言葉の恐ろしさである。後期高齢者医療制度導入の時に感じた不快感も似たものがあった。非高齢者はいずれ自分が高齢者になる自覚があるのかないのか、かなり無神経な風潮がはびこっている。

しかし、先日、そんな高齢者コンプレックスを吹き飛ばす行事に参加する機会に恵まれた。四月二十一日、奈良県橿原市の橿原神宮会館で催された〈奥野誠亮先生の偉業を讃え、ご長寿を祝う会〉だ。

奥野さんの長寿は並でない。この七月で満九十九歳の白寿、数えの百歳である。衆院議員当選十三回、四十年間の政界人生の間に文相、法相、国土庁長官などを歴任、現役で米寿(八十八歳)を迎え、卒寿(九十歳)で引退した。いまも東京との間を往来して仕事(アジア福祉教育財団名誉会長)をこなし、ステッキをついているが、会話はよどみなく、かくしゃくとしたものだ。

政府の要人だった人が、健在で百歳のお祝いを受ける、といった話はかつて聞いたことがない。多分、歴史上初の慶事ではなかろうか。会場には奈良県下の支持者約千人が詰めかけ、中央政界からは友人代表として八十五歳の綿貫民輔元衆院議長が出席、祝辞を述べた。奥野さんの謝辞は二十分が予定されていたが、はるかにオーバーして四十分間も強い語調で大演説をぶち、聴衆を沸かせたのである。ほとんどは日本人の自虐史観への警鐘だった。

この驚くべき長命の秘密は何だろうか。参会者に配られた奥野さんの色紙には、

〈一怒一老 一笑一若〉

とあった。中国の格言で、人間一度怒るとそれだけ老け、一度笑うとその分若返る、の意味だという。そんなこともあるだろうが、奥野さんの不動の信念的な人生態度が大きいと思われる。

『派に頼らず、義を忘れず』というタイトルの回顧録(PHP研究所・二〇〇二年刊)がある。派は派閥、奥野さんは四十年間、自民党にあって無派閥を貫き通した。

一九六三(昭和三十八)年の衆院選に、奥野さんは自治省事務次官を退いて郷里の奈良全県区から初出馬する。当時は池田勇人首相で、池田さんのあとを狙う佐藤栄作さんが、この時、自派の候補者応援で奈良入りした。佐藤さんは、奥田良三知事に、

「奥野君に渡してくれ」

と金一封を託している。当選すれば佐藤派へ、という誘いだった。奥野さんは中身も見ないで、

「返してくれ」

と受け取らない。ほかの派閥の誘いも全部断った。自民党内は、奥野は自分の派閥を持つつもりだ、とみてとったらしい。当選後、佐藤さんは、

「どうせ君は派閥を作るのだろうが、嫌な人間は入れない方がいい。変な人間を入れると生涯てこずる」とアドバイスしている。その佐藤さんの後釜をうかがう田中角栄さんは、

「(派閥の規模は)二十人くらいがいいよ」と声をかけたという。しかし、そんな気はまったくない。

「人に頭を下げて家来みたいになるのは嫌でね」と回顧録のなかで、無派閥主義の理由を漏らした。群れない姿勢に徹する。だれにもできることではない。このすっきりした生き方が歴史的な慶事につながった、と私には思えた。

奥野さんの〈祝う会〉に参加した足で、母校(山口県立防府高校)の同期生たちが郷里で催した〈喜寿(七十七歳)を祝う会〉に出席した。一九五四(昭和二十九)年卒業の同期生は約五百人で、このうち約百人が顔を見せたが、同じくらいがすでに他界したということだった。

私は奥野さんの話を披露したあと、「奥野さんの真似はとてもできそうにないから、私たちはとりあえず九十歳を目標に頑張ろうじゃないか」

と提案してみたが、もうひとつ反応が鈍い。余計なことを言ったかな、と後悔した。

翌朝、数学、理科を教わった恩師のM先生を友人と訪ねた。十数年間寝たきりだった夫人を三年前に亡くし、独居生活である。M先生は卒寿(九十歳)、どんな日常か、と尋ねると、

「まあテレビを見たり、アイパッドで演歌を聞いたりしてますなあ。息子が電子図書をすすめるので見てみたけど、目にあまりよくない。活字はやっぱり紙がいい」

と言うのである。驚いた。アイパッドも電子図書も耳にはしているが、触ったこともない。

食事は自炊で−−。

「いや、女房を介護してるうちはやってたが、死んでからやめました。電動自転車でコンビニにお総菜を買いにいく。足がだんだん弱くなったので、これは便利です」

二度びっくりだ。九十歳の電動自転車とは恐れ入る。

いやいや、もはや高齢化社会ではない。〈化〉ではなく、高齢社会が十分に成熟しているのだ。九十九歳の大長老の演説に圧倒され、七十七歳の学友たちの談笑に刺激され、九十歳の恩師のたくましい暮らしぶりに感じ入り、二日間の経験は非常に教訓的だった。

病気療養中の高齢者、孤独に悩む独居老人がたくさんいることはよく承知している。老人ゆえの事件、事故も増えてきた。だが、くよくよせずに、老いの楽しみを追求するしかない。

政界に戻ると、奥野さんのあとを追う現職の後期高齢議員は、衆院が沓掛哲男(八十二歳)、藤井裕久、渡部恒三(七十九歳)、菊池長右衛門、坂口力(七十八歳)、保利耕輔(七十七歳)、大野功統、羽田孜(七十六歳)、亀井静香、福田康夫(七十五歳)、参院は草川昭三(八十三歳)、谷川秀善(七十八歳)、石井一、山内徳信(七十七歳)、片山虎之助(七十六歳)、輿石東、藤谷光信(七十五歳)の計十七人、全議員の二・四%にすぎない。

<今週のひと言>こんどは〈無罪政局〉か。困ったものだ。(サンデー毎日)

杜父魚文庫
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