ソロス氏に「経済のハードランディング」を指摘され、  石平

■逆ギレした中国の狂乱ぶり


2015年の中国経済に関する当局の統計数字が1月中にほぼ出そろった。それらのデータに基づいて、過去1年の中国経済の実態を探ってみよう。


政府公表の15年の経済成長率は6・9%。1990年以来25年ぶりの低水準だが、問題は、この低水準の成長率でさえ、かなりの水増しがあろうと思われることである。経済の実態をより適切に反映できる「李克強指数」の2つ、「電力消費量の伸び率」と「鉄道貨物運送量の伸び率」をみると、15年、前者は0・5%増にとどまっており、後者に至っては11・9%減だ。


ならば、経済全体の成長率が6・9%もあるはずはない。もう一つ、対外貿易の関連数字を見てみると、真実はより明確になってくる。


15年の中国の対外貿易総額は8%減。そのうち、海外からの輸入総額は14年と比べて14・1%も減少した。海外からの輸入は当然、消費財と生産財の両方を含んでいる。輸入総額が14%以上も減ったことは、中国国内の生産と消費の両方が急速に冷え込んでいることを反映している。


そして28日、人民日報は1面で署名記事を掲載し、ソロス発言に反論すると同時に、「中国経済は絶対ハードランディングしない」と宣した。29日、人民日報海外版も再度ソロス発言への批判記事を掲載したが、その中で「でたらめ」という罵倒までをソロス氏に浴びせた。


それでも気が済まないのか、今月3日、今度は国家発展改革委員会の徐紹史主任(閣僚級)が登場して、ソロス氏の「中国経済ハードランディング論」を徹底的に批判した。


このように、外国の一民間人の発言に対し、中国政府は国家の中核メディアと政府高官を総動員して、いわば「人民裁判式」のすさまじい批判キャンペーンを展開した。


その中で、共産党機関紙の人民日報までが、執拗(しつよう)にも「でたらめ」などのひどい言葉を持ち出して外国人の投資家に投げつけてきたのである。


このような恥も外聞もない「狂乱ぶり」は逆に、ソロス氏の「中国経済ハードランディング発言」が、中国政府の痛いところをついた証拠であろう。中国政府自身もソロス氏発言が真実だ、と分かっているからこそ、必死になってそれを打ち消そうとしているのだ。

そして28日、人民日報は1面で署名記事を掲載し、ソロス発言に反論すると同時に、「中国経済は絶対ハードランディングしない」と宣した。29日、人民日報海外版も再度ソロス発言への批判記事を掲載したが、その中で「でたらめ」という罵倒までをソロス氏に浴びせた。


言ってみれば、ソロス氏への「人民裁判」の背後にあるのは、まさに中国経済の絶望的な状況である。ソロス氏をいじめただけでは状況は何一つ変わらない。


【プロフィル】石平 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得


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| 石平 | 13:25 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







習主席「軍再編」 もう一つの狙いは…   石平

今月11日、人民解放軍は「軍再編」の第2弾として、今までの「4総部」体制を改組し、軍の最高機関・中央軍事委員会に15部門を設ける新体制を発足させた。


再編前の「4総部」体制とは、中央軍事委員会の下で、総参謀部(作 戦・指揮担当)、総政治部(政治思想教育担当)、総後勤部(物資補給担当)、総装備部(装備調達担当)が設けられ、それぞれの分野の軍務を担当する体制だ。その中で、とりわけ総参謀部は作戦の計画作りや実行、諜報など重要な仕事を担当する軍の要(かなめ)であった。


今回の再編のポイントは、今まで相対的に独立した機関として機能してきた上述の「4総部」を、中央軍事委員会直属の1部門として統合する一方、「4総部」の持つ本来の機能を分散させ、軍事委員会の中の15部門 として再編したことにある。


日本の会社体制に例えれば、本社の下の4つの子会社が本社の中の1部署として吸収された上で15の部署に分解された、ということだ。


この再編の意味は「4総部」の力を弱め、それを中央軍事委員会の直接 指揮下に置くことにあるが、習近平主席がこのような改革を断行した背後には、実はもう一つの狙いが隠されているのだ。


実は、今回の再編劇で習主席が狙い撃ちにしたのは、解放軍総参謀長の 房峰輝氏である。


房氏はもともと広州軍区の参謀長であった。2005年に当時の胡錦濤軍事委員会主席(前国家主席)が多くの軍人の階級昇進を実行したとき、房氏は少将から中将へ昇進を果たした。


その後、房氏は胡主席に近い軍人の一人として出世を重ね、07年には重要な北京軍区の司令官に就任。さら に09年、中国が建国50周年を記念して盛大な閲兵式を執り行ったとき、「閲兵指揮官」として胡主席のそばに立ったのは房氏であった。それ以来、彼は数少ない「胡錦濤の軍人」として認知されるようになった。


そして12年10月、胡主席は、軍の総参謀長に房氏を任命。同年11 月には胡主席はさらに軍人2人を党の中央軍事委員会副主席に任命した。


胡主席が行ったこの軍人事は異例であった。なぜなら彼は同月中に開催される党大会で引退する予定だったからである。


本来なら、軍事委員会の新しい副主席や総参謀長任命の人事は、党大会後に誕生する新しい総書記・軍事委員会主席(すなわち習近平氏)の手で行われるべきだが、胡主席はそうさせなかった。


自分の引退が決まる党大会開催の直前に、彼は大急ぎで次期中央軍事委員会の主要メンバーを決め、軍の心臓部門となる総参謀部を自分の腹心で固めた。それによって、ポスト胡錦濤における胡錦濤派の軍掌握は完成された。


今の習主席にとって、軍の中枢部におけるこのような「胡錦濤人事」は 邪魔以外の何ものでもない。


いずれそれを潰さなければならないと思っていたはずだ。しかし房氏などの首を切ることで決着をつけようとすると、 胡錦濤派との「全面戦争」は避けられないし、必ずしも習主席に勝ち目が あるわけでもない。


そこで習主席の取った方法が、「軍改革」の大義名分の下、総参謀長の房氏の首を切らずに、総参謀部そのものの力をそいで軍事委員会の直接指揮下におくことだ。これでは胡錦濤派も反対できない。


自分の引退が決まる党大会開催の直前に、彼は大急ぎで次期中央軍事委員会の主要メンバーを決め、軍の心臓部門となる総参謀部を自分の腹心で固めた。それによって、ポスト胡錦濤における胡錦濤派の軍掌握は完成された。


今の習主席にとって、軍の中枢部におけるこのような「胡錦濤人事」は 邪魔以外の何ものでもない。いずれそれを潰さなければならないと思っていたはずだ。しかし房氏などの首を切ることで決着をつけようとすると、 胡錦濤派との「全面戦争」は避けられないし、必ずしも習主席に勝ち目が あるわけでもない。


そこで習主席の取った方法が、「軍改革」の大義名分の下、総参謀長の房氏の首を切らずに、総参謀部そのものの力をそいで軍事委員会の直接指揮下におくことだ。これでは胡錦濤派も反対できない。


自分の引退が決まる党大会開催の直前に、彼は大急ぎで次期中央軍事委員会の主要メンバーを決め、軍の心臓部門となる総参謀部を自分の腹心で固めた。それによって、ポスト胡錦濤における胡錦濤派の軍掌握は完成された。


今の習主席にとって、軍の中枢部におけるこのような「胡錦濤人事」は 邪魔以外の何ものでもない。いずれそれを潰さなければならないと思っていたはずだ。しかし房氏などの首を切ることで決着をつけようとすると、 胡錦濤派との「全面戦争」は避けられないし、必ずしも習主席に勝ち目があるわけでもない。


そこで習主席の取った方法が、「軍改革」の大義名分の下、総参謀長の房氏の首を切らずに、総参謀部そのものの力をそいで軍事委員会の直接指揮下におくことだ。これでは胡錦濤派も反対できない。(産経)


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| 石平 | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







習主席アジア外交は惨敗 韓国までもが…   石平

11月19日掲載の本欄で、南シナ海での中国の軍事拡張を封じ込めるために日米同盟を基軸とした「合従連衡」が形成される一方、中国はアジア諸国を個別に取り込む「連衡策」をもって対抗する、というアジア外交の構図を論じた。その前後の一連の動きを見れば、この「合従連衡」のゲームに敗れたのが中国の方であると分かる。


11月5日から6日にかけての習近平主席のベトナム訪問はその一例である。5日にハノイに着いてから、習主席はベトナムの首脳たちと次から次へと会談をこなし、相手のことを「同志」とまで呼んで「関係の改善」を訴えた。


しかし訪問中の6日、同じハノイにおいて、ベトナムのフン・クアン・タイン国防相は来訪中の日本の中谷元(げん)防衛相と会談し、南シナ海の要衝であるカムラン湾の海軍基地に海上自衛隊の艦船を寄港させることで合意した。


習主席を貴賓として迎えている最中に、ベトナムは中国に対抗するための日越軍事連携を堂々と進めた。中国に対する「配慮」の気持ちはみじんもないやり方である。このベトナムに翻弄され、恥をかいて帰国の途に就いたのは習主席の方だった。


そして11月21日からマレーシア首都のクアラルンプールで、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、アメリカ、中国などの18カ国の首脳が一堂に会した「東アジアサミット」が開催されたが、それもまた、中国にとってのアジア外交惨敗の場となった。


まずは21日、米国とASEAN諸国との首脳会議が開かれた。会議後の共同声明には「南シナ海における航行の自由を保障することの重要性」が明記された。22日の東アジア首脳会議では、「親中派」といわれるカンボジアとミャンマーを除く、すべての国々が、南シナ海における中国の埋め立て・人工島造成の問題を提起して、中国批判の声を次から次へと上げた。


そして24日、東アジアサミットは首脳会議の結果を受けて議長声明を発表した。中国による人工島造成で緊張が続く南シナ海情勢について、声明は「航行の自由」の重要性を再確認するとともに、「一部首脳が表明した深刻な懸念に留意した」と中国の動きを強く牽制した。


その結果、少なくとも南シナ海問題に関しては、アジアにおける中国の孤立は決定的なものとなった。今月に入ってからも、習政権にとっての衝撃的な出来事がアジアで次から次へと起きた。


まずは7日、カーター米国防長官とシンガポールのウン・エンヘン国防相が会談し、防衛協力の拡大で合意した。同時に、米軍のP8対潜哨戒機を3カ月に1回程度の割合でシンガポールに配備することを決めた。


米軍哨戒機の配備は当然、南シナ海における中国の動きを監視する目的である。中国からすれば、それは要するに、伝統的な友好国であったシンガポールが「寝返り」、アメリカの中国包囲網に加わることであった。習主席自身が11月にシンガポールを訪問したばかりなのに、中国政府の挫折感はさぞかし大きかったのではないか。


そして8日、南シナ海問題とは関係がないが、韓国海軍が中国船に警告射撃を行う事件も起きた。今、中国ともっとも親密な関係にあるはずの韓国までが、習政権のメンツを丸潰れにする、このような行動を取ったのだ。


ここまで来たら、アジアにおける中国の立場はもはや四面楚歌に近い状況であろう。それは、習政権が進めてきた覇権主義的拡張戦略の必然的な結果だ。


中国の古典には、「得道多助、失道寡助=道義にかなった者には助けが多く、道義を失った者には支持が少ない」という有名な言葉がある。習主席はそれを暗唱でもしながら自らの行いを反省してみるべきではないか。


【プロフィル】石平(せき・へい)


1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。(産経)
 

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| 石平 | 16:51 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







習近平氏はただの「裸の王様」   石平

■米イージス艦派遣で「虚像」は崩壊した 窮地の習政権の「余命」は?


先月27日、米海軍のイージス艦が南シナ海の、中国の人工島周辺海域を航行した。中国政府は「中国に対する深刻な政治的挑発だ」と強く反発したが、米軍の画期的な行動は、実は外交面だけでなく、中国の国内政治にも多大なインパクトを与えている。


話は9月下旬の米中首脳会談にさかのぼる。この会談が双方にとって大失敗であったことは周知の通りだ。南シナ海問題などに関する米中間の溝はよりいっそう深まり、米国の習近平主席への失望感が一気に広がった。


過去数年間、習主席は米国とのあらゆる外交交渉において自らが提唱する「新型大国関係構築」を売り込もうとしていた。「対立せず、衝突せず」を趣旨とするこのスローガンは「習近平外交」の一枚看板となっているが、訪米前日の人民日報1面では、習主席は米国側との新型大国関係構築を「大いに前進させよう」と意気込んだ。


しかし訪米の結果は散々であった。習氏が唱える「新型大国関係」に対してオバマ政権は完全無視の姿勢を貫き、習主席の「片思い」はまったく相手にされなかった。


その時点で習主席の対米外交はすでに失敗に終わっているが、中国政府と官製メディアはその直後からむしろ、「習主席訪米大成功」の宣伝キャンペーンを始めた。


まずは9月26日、人民日報が1面から3面までの紙面を費やして首脳会談を大きく取り上げ、49項目の「習主席訪米成果」を羅列して、筆頭に「新型大国関係構築の米中合意」を挙げた。


同27日、中央テレビ局は名物番組の「焦点訪談」で「習主席の知恵が米国側の反響を起こし、米中が新型大国関係の継続に合意した」と自賛した。同29日、今度は王毅外相がメディアに登場し「習主席のリーダーシップにより、米中新型大国関係が強化された」と語った。


この異様な光景は世界外交史上前代未聞の茶番だった。米中首脳が「新型大国関係構築」に合意した事実はまったくなかったにもかかわらず、中国政府は公然と捏造(ねつぞう)を行い「訪米大成功」と吹聴していたのである。


それはもちろん、ひたすら国内向けのプロパガンダである。習主席訪米失敗の事実を国民の目から覆い隠すためにはそうするしかなかった。「新型大国関係構築」がご破算となったことが国民に知られていれば、習氏のメンツは丸つぶれとなって「大国指導者」としての威信が地に落ちるからだ。


まさに習氏の権威失墜を防ぐために、政権下の宣伝機関は「訪米大成功」の嘘を貫いたが、問題は、米海軍の南シナ海派遣の一件によってこの嘘が一気にばれてしまったことである。


オバマ政権が中国に対して「深刻な政治的挑発」を行ったことで、習主席訪米失敗の事実は明々白々なものとなり、米中両国が「新型大国関係構築に合意した」という嘘はつじつまが合わなくなった。しかも、米海軍の「領海侵犯」に対して有効な対抗措置が取れなかった習政権への「弱腰批判」が広がることも予想できよう。


今まで、習主席はいわば「大国の強い指導者」を演じてみせることで国民の一部の支持を勝ち取り、党内の権力基盤を固めてきたが、その虚像が一気に崩れてしまった結果、彼はただの「裸の王様」となった。


いったん崩れた習主席の威信回復は難しく、今後は政権基盤が弱まっていくだろう。反腐敗運動で追い詰められている党内派閥が習主席の外交上の大失敗に乗じて「倒習運動」を展開してくる可能性も十分にあろう。


1962年のキューバ危機の時、敗退を喫した旧ソ連のフルシチョフ書記長はわずか2年後に失脚した。今、米軍の果敢な行動によって窮地に立たされた習政権の余命はいかほどだろうか。



【プロフィル】石平(せき・へい)1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。


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国策となった習政権の「日本たたき」  石平

■日米同盟亀裂に期待?


5月23日、中国の習近平国家主席は、日本の国会議員や民間人との「友好交流大会」に突如、姿を現して演説を行った。


演説の前半で習主席は穏やかな笑顔を浮かべながら「日中関係の発展重視」を語ったが、後半では一転、厳しい面持ちで、日本との「歴史問題」を持ち出し、「歴史の歪曲(わいきょく)は絶対許せない」と口調を強めた。


本来は「友好」を語り合うはずの交流会で、「歴史の歪曲」とは無関係の日本の一般市民も参加する会で、このような厳しい言葉を浴びせる必要が一体どこにあるのか。


だが、よくよく考えてみればこれは実に簡単な話だ。「歴史問題」を材料に日本をたたくのは既に、習近平政権の長期的な国策と化しているからである。


たとえば昨年、習政権の下で中国政府は一気に3つの国家的記念日を制定した。


中国側の言い分によれば、抗日戦争が勃発した記念日(7月7日)、抗日戦争に勝利した記念日(9月3日)、そして、南京大虐殺の犠牲者を追悼する日(12月13日)の3つであり、いずれも日本との過去の戦争にまつわる記念日である。


そして、昨年1年間、この3つの国家的記念日に、中国政府はいずれも大規模な記念行事を催し、日本批判の気勢を上げた。


問題なのは今後、それらの記念行事が恒例化されることである。つまり今年も来年も再来年も、毎年3つの記念日になると、日本が「歴史問題」で、たたかれるような光景が、中国で必ず見られるのである。


それは、もはや日本側が謝罪するかどうかの問題ではない。


たとえば日本が再度「謝罪」したとしても、中国は上述の国家的記念日を取り消すようなことは絶対しない。この3つの国家的記念日を制定した時点で、習政権は既に、「歴史問題」を使って日本を未来永劫(えいごう)たたいていくことを決めているはずである。


このような国策の制定は当然、習政権が進めるアジア戦略全体と無関係ではない。


今、アジアにおいて「新中華秩序」を作り上げ、中国のアジア支配を完遂させることは習政権の既定方針となっている。中国としては、この戦略的目標を実現させていくために、邪魔となる2つの「障害」をまず取り除かなければならない。


「障害」の1つは日米同盟である。日米同盟が強固である限り、中国のアジア支配は完遂できない。


「障害」のもう1つは、支配されることを嫌がるアジア諸国の反抗である。過去2年間、中国がベトナムやフィリピンなどのアジア諸国の反抗に手を焼いていることは周知の事実だ。


そこで出てくるのが日本の「歴史問題」だ。
 

つまり、中国からすれば、先の大戦での日本の「歴史問題」を持ち出して、「日本がいまだに戦争の責任を反省していない」と強調することによって、かつては日本と戦ったアメリカの日本に対する不信感を増幅させることができる。


そして、「日本は昔アジアを侵略した」と強調することによって、中国自身がアジアで推進している侵略的拡張を覆い隠し、中国という現実の脅威からアジア諸国の目をそらすこともできる。


その結果、日米同盟に不要な亀裂が入り、アジア諸国の一部が中国の宣伝に共鳴して「反中」から「反日」へと傾けば、それこそが中国の期待通りの展開となるのではないか。
 

従って、今後の長期間においては、アジアと世界範囲において中国の展開する「反日宣伝戦」がやむことはもはやない。


日本も「長期戦」のつもりで、中国の国策に、きちんと対処していかなければならないのである。



【プロフィル】石平(せき・へい)1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。


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アジア経済支配強める中国    石平

■その内実は財政危機で一触即発


先月16日、中国財政省は今年1〜2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した。日本の感覚からすれば、「3.2%増」は別に悪くもないだろうが、中国の場合は事情がまったく違う。


たとえば2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1〜2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない。


数年前まで、毎年の財政収入は急速に伸びてくれていたから、中国政府は2桁の国防費増加を図り、思う存分の軍備拡大ができた。また、国防費以上の「治安維持費」を捻出することによって国内の反乱を抑え付けて何とか政権を死守してきた。


その一方、潤沢な財政収入があるからこそ、中国政府はいつも莫大(ばくだい)な財政出動を行って景気にテコ入れし経済成長を維持できた。言ってみれば、共産党政権の安泰と中国政府の政治・外交および経済の各面における統治能力の増強を根底から支えてきたのは、高度成長に伴う急速な財政拡大であった。


だが「お金はいくらでもある」というハッピーな時代は終わろうとしている。


もちろん、今後の財政収入が伸び悩みの状況になっていても、今の習近平政権は軍備拡大のテンポを緩めるようなことは絶対しないし、政権を死守するためには「治安維持費」を増やすことがあっても、それを削ることはまずない。それゆえ、中国政府の財政事情がますます悪化していくこととなろう。


中国にとっての財政問題はもちろんそれだけではない。地方政府の財政も大変厳しい状況下にある。今の財政制度では、全国の税収の大半は中央政府に持っていかれているから、各地方政府は常に慢性的な財政難にある。


そしてこの20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める「土地譲渡金」の割合は平均して4割程度に上っていた。


しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、「土地譲渡」という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている。先月16日の中国財政省の発表によると、今年1〜2月の全国の「土地譲渡収入」は前年同期比で36・2%も激減した。そのままでは、地方政府の財政が危機的な状況に陥るのは必至であろう。


地方財政が悪くなると、もう一つの深刻な問題が浮上してくる。地方政府の抱える債務問題だ。


今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった。2013年6月の時点では既に17兆9千億元(約348兆円)に上っていたこの借金は、今はさらに膨らんでいるはずだ。


しかし、地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである。


習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである。


【プロフィル】石平(せき・へい)= 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。


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実は危機的状況、「内なる脅威」抱える習政権の不安定さ  石平
<先月15日、新設された中国中央国家安全委員会が初会議を開いた。冒頭、委員会トップの習近平国家主席は「重要講話」を行い、その中で「総体的国家安全観」という耳新しい概念を持ち出した。

一般的に「国家安全」とは、「外部からの軍事的脅威に対する国家の安全」という意味合いで理解されることが多いが、習氏のいう「総体的国家安全」はそれとは異なる。

講話では「政治安全、国土安全、軍事安全、経済安全、文化安全、社会安全、科学安全、生態安全、資源安全」などの11項目を羅列し、それらの「安全」をすべて守っていくのが「総体的安全観」の趣旨だと説明した。

11項目の中で習氏が特に強調しているのが「政治、経済、軍事、文化、社会」の5つである。この5項目の中で外国からの軍事的脅威に対する「軍事安全」以外はすべて国内問題としての「安全」を指しているのだ。

つまり、習氏の「総体的安全観」には主に国内の安全問題が念頭にあることがよく分かる。

そして習氏は、国家安全委員会の主要任務としてとりわけ政治、経済、社会、文化の「安全保障」を強調してみせた。逆に理解すれば、この国の主要な構成部分となる政治、経済、社会、文化の多岐において、国家安全を脅かすような危険要素があまねく存在している、ということになるのだ。


■実は危機的状況、「内なる脅威」抱える習政権の不安定さ

中国の現状はまさにその通りだ。たとえば政治の面では共産党の一党独裁に対する国民の不信感と反発が広がっているのは周知の事実。バブルの崩壊に伴う経済破綻の危険も日々迫っている。

そして文化の面では、娯楽やセックスを追い求める大衆文化が勢いを増し、イデオロギー中心の「官製文化」が無力化していることは1月23日掲載の本欄指摘の通りだ。

社会に関して言えば、年間20万件前後の暴動・騒動事件の発生はまさに、中国社会が大変不安定な危機状態にあることを示している。

人間の体に例えて言えば、今の中国はまさに全身病巣の重病人となったようなものだ。命を支える主要器官のすべてが危険な病気に侵されている状況である。

このような厳しい現実があるからこそ、習氏が認識する国家安全上の危機は外敵からの脅威など単純なものではなく、むしろ国内問題から発する「内なる脅威」が主なのである。

そして、彼と彼が率いる国家安全委員会が、国内危機の対処に精いっぱいであることも容易に想像できよう。

それは日本にとって都合の良いことだ。

中国共産党政権が常に「内なる脅威」にさらされていることが、彼らの進める対外拡張戦略の足かせになっているからである

もう一つ、それほどの「内なる脅威」を抱えている中国が国際舞台での覇権争いで、超大国の米国と伍(ご)してゆくのにはやはり無理がある。


経済と軍事力の大差はもとより、オバマ大統領には、習氏のような国内問題としての「政治安全」や「文化安全」を心配する必要がまったくないから、発揮できる力の差は歴然としている。

われわれは中国の拡張政策の脅威を十分に認識しておきながら、彼らの弱点、アキレス腱(けん)もきちんと把握すべきだ。

中国の実力を過大評価して、あたかもかの国が世界を制覇しているかのような過剰な想像にとらわれることは、中国に対抗して平和と秩序を守るわれわれの固い意志をそぐ意味では、むしろ有害であろう。

とにかく、中国と習氏の覇権主義的危険性と、あやふやな足元の両方をちゃんと見た上で彼らへの対策を考えるのが賢明である。(石平のChina Watch・産経)



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