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マイナス金利の日本の国債をなぜ外国投資家が買うのか?   宮崎正広

■中国の銀行団、マイナス金利狙い、社債発行に邦銀活用


おかしな雲行きである。


中国が日本のマイナス金利に着目し、社債の引受先として邦銀を活用し始めている。


これは中国の複数の国有銀行が、日本の銀行に引受先を打診し、日本市場での資金調達を人民元建てで行う。


中国工商銀行は東京の債券市場に社債を上場し、4300億円を調達するほか、中国輸出入銀行、同開発銀行が東京三菱UFJ銀行、みずほ銀行を社債引き受けの金融機関に起用した。


また人民元決済のネットワーク「CIPS」(クロスボーダー人民元決済システム)に邦銀で初めて三菱東京UFJ銀行が参加する。


マイナス金利で日本の国債を買う外国人機関投資家は、アービトレージ(サヤ抜き)が目的であり、短期国債を買い、日銀に売る。 


従来、外国人機関投資家が日本の国債を買うのはサウジなど富裕国家が、そのファンド運用のためだった。全体の一割も占めず、大方のバイヤーは日本のメガバンクだった。


ところが、マイナス金利以後、邦銀、日本の機関投資家の買い控えとは対照的に、大量に国債を買う日銀に金利差が生じたときにサヤ抜きを目的にした外国機関の大量の買いが目立つようになり、全体のシェアの27%が外国勢となった。


異様なうごきである


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| 宮崎正弘 | 11:55 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







ファシズムが米国にやってきた、とネオコンの論客   宮崎正広

■ロバート・ケーガンがトランプを「衆愚政治の象徴」と罵倒


ロバート・ケーガンと言えば米国ネオコンの代表的存在。ブルッキングス研究所研究員であり、毎月『ワシントン・ポスト』に独特なコラムを寄稿する。


彼の著作は日本でも翻訳がある。畏怖による、シングルのパワーによる世界統治を説いて、レーガンブッシュ時代の論壇の一翼を担った。


そのケーガンが『ワシントン・ポスト』(5月18日)に寄稿し、トランプはヒトラーの再来であり、「ファシズムとは衆愚政治のなれの果て、確乎なる政治信念はなく、つねに衆愚の赴くところに政策を収斂させる」。「トランプは共和党の政治綱領を代弁するなどというのは、お笑い草だ」と罵倒した。


「民主政治への脅威がトランプであり、イデオロギーも政策もない。彼の言うことは毎日変わる。ところが彼に共鳴する支持者は共和党がどうなるかなどと考えては居ない。共和党そのものは彼に冷ややかであるばかりか、敵対的でさえある」。


(だとすればヒラリーに猛追するサンダースも同じであるが、民主党には一切触れていない)


「トランプは国家の不備と不適切さをならべて批判し、熱狂という異様な現象を作り出した。これを許したのは共和党の怠慢であり、ムスリム、ヒスパニック、中国人をひたすら攻撃し、トランプは熱気を仕立て上げたのだ」とケーガンは続ける。


「民主政治はときに怒り、興奮、不満をぶちまけるメカニズムを必要とし、だからこそファシズムに転じやすく、民主体制のもと、自由な社会がときに強き指導者を求めるという矛盾に導く」としてトクビルを引用しつつ、続ける。


「まさに『マス』だ」、これぞ「デモクラシー」ではなく「モブクラシー」と呼ぶべき現象なのである、と言い放ったケーガンは「トランプを支持するひとびとは、やがてスターリンが熱狂的な現象のもとに権力を手にするや、かれらが希望した正反対の方向へ走ったように、いずれトランプを撰んだことを後悔するだろう。かれが司法、軍、FBIを掌握したら、いったいどうなるかを誰も考えてはいない。マスは力強きリーダーを勘違いで撰ぼうとしている」。
 

「かくて米国にファシズムが到来する」とケーガンは警告するのだが、相当程度にネオコンの逆恨み心情が被さった論評となっている。


昨日あたりから米国の、たとえばCNNの世論調査では「トランプとヒラリー対決となった場合、トランプが勝つ」とする予測をはじめた。


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| 宮崎正弘 | 19:49 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







ロシアの金備蓄は気づかないうちに日本の二倍   宮崎正広

■中国は日本の2・5倍、かれらは金本位復帰に備えているのか?


ブーチンは西側に悟られないように静かに金備蓄を増やしていた。ロシアの国家備蓄としての金保有は1460トン、日本の二倍である。何時の間に?


中国は世界最大の産金国であり、同時に世界最大の金消費国でもある。現在の金保有は1700トンと見積もられる(英文プラウダ、5月17日)


スペイン紙『エルパソ』によれば、両国が金備蓄を増やしているのは、第一に米ドルが弱体化していく近未来のショックに備えており、第二は、米ドル建てで借りている借款への対応とされる。
 

ロシアの金備蓄を現在のレートで換算すると3680億ドルに達し、同国の外貨準備高より多い。2005年の備蓄量から二倍となっている。


他方、ロシア通貨のルーブルは対米ドルレートが劇的に下がっており、2015年に一ルーブル=3円弱、現在は一ルーブル=1円40銭程度まで下落している。


中国も人民元レートは過去一年で10%以上の値崩れを示してきたが、近未来にさらに下落するだろうと予測されている。


中国は2015年夏まで毎月6トンから8トンの金を購買してきたが、15年末以後はペースを二倍にたかめ、過去十五ヶ月に間に70%増やした。


こうした状況下で脆弱な通貨をかかえるロシアと中国がともに金保有を増やしていることは不気味でもあり、ひょっとして金本位制復帰を、その備蓄理由の最大の根拠としているのかも知れない。


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| 宮崎正弘 | 18:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







マフィアの前顔役とトランプは親しい(ワシントンポスト)が   宮崎正広

■「だから何だ」というのが支持者の反応


共和党内の不協和音はまだ納まっていない。


党大会の土壇場で奥の手を使ってでもトランプを正式な党候補から引きづり降ろそうという工作も、いくつかのグループに分かれて進んでいるが、各セクトが団結できないため、それぞれが勝手な動き、誰も統率できる指導者がいない。


党を割って独立候補を擁立しようとする動きもミット・ロムニー(マサチューセッツ州知事)を基軸に、ネオコンのイデオローグらが画策している。


しかし、「ヒラリーを落とすことが先決だ」とウォールストリートジャーナルが唱え始めたため、保守本流と穏健派、ウォールストリート派からは、トランプ一本化への暗黙的合意がある。


トランプのスローガン[MAKE AMERICA GREAT AGAIN]に重ねて「MAKE OUR PARTY GREAT AGAIN」運動が持ち上がった。ユタ州の活動家らが組織したもので、「まだ捜せば有力な候補者は居るはずだ」と訴えているが、党内でも相手にされていないようだ。


ラジオ番組の人気ホストを務めるエリック・エリクソン(ネオコンの論客でもある)らは「トランプを撰ぶなんて共和党は集団自殺でもするつもりか」と手厳しい。


「党大会の代議員への多数派工作を積極的におこなえば、トランプ優勢を崩せる」といまも主張しているが、同調者はあまり集まらない。


党首脳らは「もっと団結して党をまとめよう」と、反トランプ連合には否定的な姿勢に変化してきた。


「党の規則を変えよう」「この際、共和党の刷新には素晴らしいチャンスだ」「党を救え」という党内のセクトの動きもあちこちで花盛りだが、どれも一本化出来ない状態である。
 

 ▼ 南東部エバンジュルカルの大票田はトランプ支持へ


他方、共和党の大票田は南東部のエバンジュリカルである。


教義からすれば二回も離婚しているトランプへの嫌悪感が消えないはずだが、サウス・カロライナ州予備選での勝利は、こうした「バイブル・ベルト」と呼ばれる信仰心熱いプロテスタントの多い地域でも、トランプがそれに近い主張をしていたテッド・クルーズを破ったことが象徴するように、「中絶」「信仰の自由」「最高裁判事任命」などのイッシュウではトランプの主張が受け入れられた。


嘗てレーガン、ブッシュの大票田となったエバンジュリカルの伝道師、70年代からの「モラル・マジョリティ」運動。とくにジェリー・ファルウェル師らも「同性愛結婚反対」「ファミリー・バリュウの尊重」などの問題で、トランプの主張には同意できるとした。


もっとも、これら南部パブチスト諸州は「アンチ中央、アンチ・エスタブリシュメント」のメンタリティが強いため、アウトサイダーのトランプを好感している。


ネオコンの動きはといえば、総帥格のウイリアム・クリストルが旗振りとなって、マイク・マーフェイ、スチュアート・ステーブンスらが四月半ばごろから集まって協議しているものの彼らが求める「独立候補」は、例えばベン・サッセ上院議員(ネブラスカ)、トム・コバーン前上院議員(オクラホマ)ら誰もが、独立候補となることはためらう。


かれらは水面下でブルームバーグ擁立にも動いたが、果たせず、共和党の集金マシンとして奔走するスペンサー・ズゥックなどは、「いまさら独立候補などカミカゼか」と吐き捨てる。
 

ワシントンポスト(5月17日)はマフィアの元顔役でモスクワからの移民でもあるフェリックス・セイターという人物がNYのトランプタワー27階に事務所をもち、しばしばトランプと密談をして、ロシア、ウクライナ、中国への進出で協議を重ねた経緯があるとすっぽぬいたが、何れも過去の話であり、プロジェクトはどれも宙に浮き、トランプ陣営はセイターとの親しいつきあいを否定している。


セイターは2008年に作家のティム・オブライエンが書いた『トランプ帝国』で怪しげな経緯を書かれ、名誉毀損で訴えを起こしたが、この裁判は取り下げとなった。


共和党全国大会は7月18日からオハイオ州クリーブランドで開催される。オハイオ州知事はつい先週まで三位につけていたケーシックだ。


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| 宮崎正弘 | 07:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







カナダで大豪邸を購入した謎の中国人は   宮崎正広

■周小川(中国人民銀行総裁)の息子だった


バンクーバーの高級住宅区(カーライル岬区)に途方もない大豪邸が建つ。敷地6879平方メートル、5つのベッドルーム、8つのバスルーム付き。推定価格は3110万カナダドル(30億円に相当)。


映写室も、プールも備わり、バンクーバーの不動産市場はじまって以来の高値で取引され、「買い主は誰か」と俄然話題となった。


地元紙の「バンクーバー・サン」が伝えるところでは購入者は「学生」と印されているのみだった。そこで、香港「文わい報」(5月12日)が調べたところによれば、この購入者は中国の中央銀行(人民銀行)総裁の周小川の息子「周シタンユィ(音訳不明)と判明した」という。


東京の豪華マンションは発売と同時に売り切れる状態が続いている。実態は中国人が買っている。こうした動きの背景にあるのは中国人が「人民元の大暴落が近い」ことを肌で直感的に感知、もしくは予知しているからである。


春節に前後して中国当局は観光目的の海外旅行に、持ち出し上限を厳格化し、さらに税金を一気に二倍から三倍にあげた。


このため化粧品や時計には60%が課税され、連銀カードの上限も厳格に減額されて、日本ばかりか世界各地で中国人の爆買いは「突然死」を迎えた。小誌が重ねて予測してきたことが現実となった。


日本のデパートもせっかく突貫工事でしつられた高級時計売り場など、閑古鳥である。


香港でも人民元の持ち出し上限額は二万元となって、買い物ブームは去った。


かわりに外貨預金がブームである。


英紙フィナンシャルタイムズによれば、中国の中産階級のうち、45%が貯金の一割を外貨で持ちたいと希望しており、すでに29%の中間階級は、外貨預金の手当は終わっていると答えている。


2014年に、なんと、76089名の中国人が米国でグリーンカードを取得した。


また同年に「投資移民」を10692名を米国当局が認めたが、このうち9128名が中国人だった(NYタイムズ、中国語版、5月12日)。じつに88%が中国人なのである。


こればかりではない。2014年から15年にかけて、米国へ留学した中国人は、じつに304040名、三年前に比べて11万人多い。


中国人が中国に未来を見限っているというのが実態ではないのか。


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| 宮崎正弘 | 02:28 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







書評『西尾幹二全集(13)日本の孤独』   宮崎正広

■西側は冷戦に勝って一気に緊張を弛緩させてしまった 『後期全体主義』以後の社会は、西側が期待したものではない


<西尾幹二『西尾幹二全集(13)日本の孤独』(国書出版会)>


主として雑誌と新聞に書かれた時局評論がこの全集第十三巻には集められている。その時局ごとに適切な問題提議と鋭角的な情勢分析が並んでいる。


扱われる時期はソ連崩壊からイラク戦争、この間にすすんだ日米構造協議、クエート戦争への膨大な出費と敗戦国扱いなどのテーマが重なる。


ソ連崩壊で自由主義が勝ったなどと短絡的反応をしめしたのはネオコンだったが、爾後の世界はかれらの描いた通りには進まず、とりわけ「アラブの春」は無惨に挫折し、シリアへの不介入は米国の威信をぼろぼろにして、プーチンの影響力を際立たせた。


そして東西冷戦に勝ったはずの西側諸国で、左翼はうちひしがれて消えるかに思われたのに、環境、人権、平和などを巧みに逆手にとって「男女同一賃金」はまだしも、怪しげな「反原発」とか、「先住民族差別反対」やらなにやら面妖な「市民」運動を展開して生き残った。


テレビのコメンティターを眺めやっても保守系は誰もいない。偽善と欺瞞でポーズを作りながら右顧左眄を繰り返すニセ知識人が日本の大手マスコミではいまも通用しているのは不思議というより、本当に西側の自由陣営が全体主義に勝利したのかという疑問なのである。


西尾氏はすでに60年代後半、とくにチェコ事件以後の東側を「後期全体主義」と定義されたことがある。


「「処刑と粛清の相次ぐスターリン時代とは異なり、東側は国内で革命精神を失い、守りの態勢に入る。市民相互の密告ネットワークが完成した息苦しい社会で、もう政府も市民も内心で革命を信じていない」。


ゆえに西側でも「共産主義に思想的に冒される危機の時代は去った」(198p――199p)。


しかし、日本では「ドイツや朝鮮と異なって、国内に三八線が引かれていた」のだ。


「国民の心に目に見えないベルリンの壁があった」。そして西側の緊張感は一気に弛緩し、自民党は総主流派の政権たらい回しが続き、「未来への本当の目的が見えなくなってきたのである」。


西尾氏は、第二部の「湾岸戦争」のなかで、こうも書かれる。


「冷戦の終わりとともに、経済力がこれからは世界を動かす時代だというようなことを言う人が、にわかに増えていた」


ところが、「経済力が世界の秩序を決めるという非軍事国の『覇権国家』幻想は、もともと虚しいものであったのに、少し前にはなんとなくそんな幻想が日本の国内に瀰漫していた。湾岸戦争は幻想を一気に打ち壊したが、それだけでは終わらなかった。いかに強大な力であろうとも、経済力は一国の安全保障の代替にはなり得ないことをも証明したのだった」(117p)


そのことを象徴する出来事があった。


「ソ連政府筋と金銭上の取引の密約がすでに成立しるかのごとき取り沙汰が、あちこちの新聞に」報道されはじめ、それを裏書きするかのような小沢一郎の訪ソがあった。


「結果はすでに国民の知悉する通りである。ゴルバチョフへの期待は失望に終わった」


「カネを振り翳(かざ)した戦略が相手をついに動かすことが出来なかった」ではないか。つまり「平和主義的心情のために巨額の金を出し軍事負担を逃げる」という日本の政財官界の考え方は「錯誤」だ、と西尾氏は断定する。


 ▼狷介孤高に見える西尾さんの素顔


さて、この全集に挟み込まれた「月報」に評者(宮?正弘)も寄稿を求められたので、次のように書いた。ご参考のため、ここに再録させていただく。


(引用開始)昨師走にチェコを旅行した折、この全集第十二巻の『全体主義の呪い』を携行した。冷戦終了直後にプラハに赴いた西尾氏が、ハベル大統領の側近や知識人らと「黒い馬」という紫煙もうもうのバアに集まって活発な議論を展開したと、書かれた冒頭箇所を記憶していたからだ。カレル橋から旧市街にかけて、当該酒場を探したが、結局見つけることは叶わなかったが。


それはともかくとして、あの冷戦の酷薄な時代を生き抜いた知識人らと侃々諤々の対話をくりかえすなかで「今世界で一番大事なお話をなさっているという気がしないのです」とずけずけと、しかし相手の肺腑をえぐる発言をしていることに強い印象が残っていた。


こうした思想的なことを軸に本稿に向かったが、すでに過去の月報で氏の多くの友人等が執筆し、論議は出尽くした感がある。そこで小生はごく個人的な目から、氏の人生の取り組みについて綴ってみたい。


なにかの書籍の書評を書いたことが切っ掛けに知遇を得て、西尾氏が主宰される「路の会」のメンバーに加えて戴いた。事後、私塾のような「坦々塾」でも小生が初回の講師に呼ばれ、「新しい歴史教科書をつくる会」での八面六臂の活躍の頃には多少の手伝いもさせていただいた。


小生は学生時代に「日本学生新聞」の編集を担っていた。三島由紀夫や林房雄、村松剛の各氏等に寄稿して貰っていた。初代編集長は持丸博(「楯の会」初代学生長でもあった)だったが、『論争ジャーナル』に移籍した彼が、西尾氏を伴って三島由紀夫邸を訪れた。その晩、六本木のゴーゴー倶楽部へ連れて行かれた回想などが西尾氏の著『三島由紀夫の死と私』(PHP研究所)のなかにも出てくる。


小生は楯の会二代目の学生長だった森田必勝と親しかったこともあり、三島事件後、「憂国忌」の催行を続けており、西尾氏には何回も「憂国忌」にお出ましいただき印象に残る講演をしていただいた。


昨年、第四十五回「憂国忌」でも基調講演をお願いしたのだが、打ち合わせは電話でいつもの長い話の果てに「それじゃ十五分ほど」と。しかし途中で熱が籠もると止まらない。結局四十分の熱弁となった。


一際想い出が深いのは氏の『江戸のダイナミズム』(文藝春秋)の出版記念会だった。

裏方を務めたので招待状つくりから当日配る冊子やスライドの手配など、版元の文藝春秋の担当者等と頻繁に打ち合わせを重ねた。氏の自宅書庫で記念会の基調報告に使う古典や写真のチェックなど、入念な準備に努めた。記念冊子だから8ページ程度でよいのではとの小生の言は軽く一蹴され、結局40ページの大冊となった。


某年4月4日の当日は、まさかの春の雪となった。悪天候に出席の叶わないものと危ぶんだのだったが、会場は四百名超の熱気に溢れた。予測外の「無断出席」の編集者続出という事態を前に、裏方としての面目も然りながら、改めて氏の仕事の大きさ偉大さを思い知らされたことだった。


ニーチェ研究、文藝評論、そして近年は旺盛な時局評論や歴史評論でも学ばせていただく機会が増えた。カバーする範囲はあまりにも広大無辺!と目を瞠る思いだが、やはり学者気質のなせる技か。興の赴くところへ徹底的に突き進む性格、そしてそれを可能にする智力気力体力をお持ちだ。


ひとたびその文字を辿れば誰もが了解するように本質をずばっと抉り出し、切っ先鋭い批判に終始する。書物を通じて氏を知る人はさぞ気むずかしい、狷介な性格の持ち主というように氏を誤解する向きがあるかもしれない。たしかに会話は常に理詰めで、論理的矛盾には容赦なく批判追及の手を弛めず、とことん論じ尽くす。


デビューしたがっている若手や学者の真贋をたちまち見破ってしまう。


西尾氏のお陰で論壇に出た人、お蔵になりかけていた作品を世に問うことができた人も数多い。犬好きで、面倒見の良い、慈父のような側面に触れさせてもらった筆者の場合を綴って、大方の読者に「その一面あればこそ」と氏の眼差しへの理解の深化を促したい。


ある年、氏は突如、小生の出版記念会を企画提案され、ためらいがちな小生の背中をぽんと押して、とうとう拙著出版記念会開催に至った。通り一遍でない、手間暇を要したはずの祝辞に小生はただただ頭を垂れた。これを基調に小生の文庫版の解説を書いていただくことにもなった。


講演旅行にご一緒したこともあったが、氏はじつに健啖家。80才をこえて驚くばかりの旺盛な食欲、そしてお酒が強い。少なくとも、この全集の完結まではお酒を適量におさえては如何と思って見ていたが、どうやらこちらは堅固な意思を以て自主規制されているこの頃のようである(引用止め)。


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| 宮崎正弘 | 08:22 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







書評「いま誇るべき日本人の精神」   宮崎正広

■変化球の名手が、ユーモア筆法で「ヘイワ」という空念仏を斬る 「鰯の頭も信心から」とかの「まじない札」が「憲法九条」だ


<加瀬英明『いま誇るべき日本人の精神』(KKベストセラーズ)>


おなじみ加瀬英明氏の現代日本論の最新バージョンである。


いつもの加瀬節が炸裂するが、語彙の選択の基準はユーモラスな筆法にふさわしく、それでいて左翼の欺瞞の本質をざっくりと抉り出す適切な用語を選択している。


平明で力に溢れる文章、加瀬氏独特のボキャブラリィはいつも不思議な魔力的な精神性を秘めている。


この本でも登場するのは、まず「加瀬の法則」と呼ばれるもので、「全体主義国家が五輪を開催すると九年後に崩壊する」。これがワシントンでも話題のKASES‘LAWだ。


まさしくベルリン五輪から九年後、ヒトラー体制は崩壊し、モスクワ五輪から九年後に、ソ連崩壊が始まった。


北京五輪から九年後とはすなわち来年(2017年)、北京の独裁政権は崩壊を始めるだろうという。


加瀬さんがワシントンで、こうした講演をおこなうとアメリカ人からも拍手が起こるが、それは抜群のユーモアに対してであるという。


平和憲法は「まじない札」である。


――なるほど分かりやすいなぁ。もし左翼がいうように「安保法制」が「戦争法」なら、中国は「戦争国家」であるとも比喩される。憲法九条は「平和念仏」だが、「平和ぼけ」とは「保護呆け」のことであり、いまの占領基本法でしかない「憲法」を後生大事に戴き続けることは「属性国家」の継続を意味する。


その「属国」を、戦後の我が国のマスコミ、リベラリズムの政治家、左翼文化人等が「平和」と言い換えてきた。この状態を加瀬氏は「寄生虫の平和」とユーモラス筆法で切って捨てる。


鰯の頭の信心からというなら、平和憲法は鰯の頭だ。
 訪米した安倍首相は連邦議会で演説したが激烈な歓迎の拍手で迎えられ、「反動」「挑発者」と当初、命名されていたのが、米マスコミからも「朋友」と称えられた。


対照的に、習近平は訪米に際して自ら希望した議会での演説を断られた。


日本のマスコミが大きく伝える「米中戦略対話」は、ちょうど加瀬氏がワシントン滞在中に行われていたが、米国のマスコミは一行も報じなかった。このため国務省のHPで進展を確認したという。


このような絶妙な現代日本論の間に何気なく挟まって、加瀬氏が若き日にまだ存命中だったマッカーサー元帥と会見したときの逸話がでている。これは歴史的証言としても参考になると思った。


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| 宮崎正弘 | 06:02 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







ヒラリーは、このところ連敗ばかり   宮崎正広

■サンダースが予備選挙後半をリード 他方、トランプの勢いは留まるところを知らず、番狂わせ勝利が射程に入った


5月12日、ワシントンDCの共和党全国委員会でトランプ候補と共和党の実力者(下院議長)のポール・ライヤンとの初会合が催された。


ライヤンは面談後、「まだ党の挙党態勢がくめるという合意には到らなかったが、今後も将来のアジェンダに関して合意を模索することでは『合意』できた。かれは純粋で暖かみのある人間だと感じた」と前向きなコメントを出した。


同議長はそれまで「トランプを支持する用意は出来ていない」とし、『彼とは政治スタイルもアジェンダも異なる』としてきた。


共和党全国委員会の前には『アンチ・トランプ』の活動家ら十数名が集まって、『トランプ人形』を掲げ「移民への憎しみ」などと怪気炎をあげていた。


一方で、共和党の有力な『集金マシーン』として知られるスペンズ・ズゥイックが2月以来、定期的にトランプと面談していることが分かった(NYタイムズ、5月13日)。


ズゥイックはロムニー(マサチューセッツ知事)の懐刀として、またファンド経営に辣腕をふるうことでも知られる。


共和党は裏面でも、かなりトランプへの接触が増えていることがわかる。


現時点で、トランプは1086名を既に獲得(過半数1237)、ヒラリーは1716(同2383)。ともに第一位を走るが、過半数を制してはいない。


ちなみにこれまでの結果、共和党はクルーズが546,ルビオ168,ケーシック154である。民主党はヒラリーを追うサンダースが1453を獲得し、猛追している。


しかも意外な動静はヒラリーに勢いがなくなっていることだ。


三月下旬以来、サンダースが勝ったのはアイオア、ユタ、アラスカ、ハワイ、ワイオミング、ワシントン、ロードアイランド、インディアナ、ウェスト・バージニラ州であり、一方のクリントンは人口大州のニューヨーク、コネチカット、メリーランド、ペンシルバニアをおさえたものの、あとはデラウェアとグアムという寂しさを露呈してきた。


同時期のトランプはユタ、ウィスコンシンの二州で負けたものの、ほかの十州では大勝している。
 

 ▼トランプは『道化師』から「勝つかも知れない」候補にシフト


一昨日、沖縄で講演した折、「ところで米大統領選ですが、トランプが勝ちそうです」と言ったところ、会場が一斉に「えぇーっ」とどよめいた。尋常ならざる驚きだったようだ。


高杉晋作は言った。「時と勢いには勝てない」と。ヒラリーは予備選後半で明らかに失速している。


明確にその勢いを失っている。地盤のニューヨークはおさえたものの、優勢といわれた州を次々とおとし、勝利したのはプエルト・リコとか、グアムとかになってきた。


前から言われてきたようにヒラリー・クリントンは「ガラスの天井」を超えないと女性初の大統領にはなれない(拙著『トランプ熱狂、アメリカの反知性主義』、海竜社参照)。

そのうえ、彼女にはこれからFBIの事情聴取がまっている。「嘘つき」というイメージは固定しかけている


民主党内には依然として、強敵の社会主義者、バニー・サンダースが予備選に残って闘っているばかりか、このところ、サンダースが連勝しているのは上記にみた通りである。


あの絶対優勢と評されたヒラリーはどこへ行ったのか?


世論調査をみても、彼女への不人気は沸騰しており、『嫌い』というのが『好き』より多い。


好感度アンケートで、これほどの開きが出るとは民主党主流派も「こんな筈ではない」と臍をかんでいるに違いない。


もちろん」「トランプが嫌い」という回答する比率もヒラリーと並ぶほどに大きいが、トランプに嫌悪感を抱くのは殆どが女性である。


日本の報道がいまもニューヨークタイムズとCNNの分析や予測に偏っているから、トランプは勝つことなど考慮の対象外だった。日本の外務省もそう分析してきたため、日本政府はトランプの情報を3月15日までまじめに集めてこなかった。


共和党がトランプでまとまるという近未来の想定をのぞけば、「勝負は闘う前に明らか」などと民主党陣営は豪語してきたが、最近は「ひょっとして、トランプに負けるのではないか」という本能的な疑問が囁かれ始めた。


昨師走まで、全米のマスコミでもトランプは『道化師』扱いで、まともに取り上げたメディアはすくなかった。年が明けて、トップに立つと泡沫候補とはいえ、「可能性はゼロだが、面白い」となり、三月にフロリダでルビオを撤退させると、『ゼロではないが、限りなくゼロ』という論調となった。


三月末から情勢が激変し、トランプを見るマスコミの目が変わった。正式候補として射程にヒラリーとの対決が明らかになると、「ひょっとして番狂わせもあり」という予測が増えた。


しかも、ここへきてのヒラリーのあまりに連敗ぶり、そのうえ、サンダースが党大会で指名獲得できなければ、党を割って、かつてのアンダーソンのように独立候補で出馬に到る可能性がないわけではない。


 ▼トランプに投票しているのは従来、党の予備選に参加しなかった層である


しかしもっと大事な側面的現象をみのがしていないか。


トランプもサンダースも党の集票マシーンに依存していない。とくにトランプは共和党の組織的支援がまったくないのだ。


「勝手連」のようなボランティアがつどっており、しかもこれまで党員登録しかせずに予備選には投票しなかった層が、どっと投票しているのだ。


民主党はさめた有権者が多く、党大会予備選を棄権している層が目立つ。だから、勢いが違うのである。


共和党の予備選は党主流、保守本流が組織を挙げて推したルビオがフロリダ州でまさかの敗北、そのご、オハイオでテキサスで、それぞれが地盤のケーシックとクルーズが勝ったが、インディアナ州でトランプに負け、両者は撤退した。


今後、トランプは選挙戦をヒラリー攻撃一本に的を絞るだろう。そしてメディアがトランプの一斉攻撃に移行するだろう。が、FBIのヒラリー聴聞がトランプに味方するだろう。


そして、もし米国でフランス、ベルギーのようなテロが起きると、流れは一気にトランプに傾斜するだろう。


どうやら米国の選挙戦の勢いが、予期せぬ方向へ迸り出したようだ。筆者は月末にひさしぶりにアメリカへ出かけて、予備選の後半戦を取材することにしている。


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| 宮崎正弘 | 14:14 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







トランプは45%の報復関税を中国からの輸入品に掛けろと吠えるが   宮崎正広

■オバマは、なんと266%の報復関税を中国の鉄鋼製品に


USスチールは、中国の鉄鋼製品のダンピング輸出により、損害を被ったとして、WTOに近く提訴するが、この場合、適応される報復関税は266%になるという。


普通、ダンピング分を計測し、それに対して100%の関税を追加徴税するのが普遍的と見られてきたが、その上、二倍近い税率を提示している。


つまり懲罰的関税である。


WTOはところで、「もはや死に体となった」と発言しているのが、強引に交渉を牽引した張本人のひとり、ミッキー・カンター(元USTR代表)だから、いまさら米国がWTOに提訴しても、どれほどの政治的効果があるのか、不明である。


政治的タイミングで見れば、トランプが「中国からの輸入品に一律45%を課税せよ」と獅子吼しており、鉄鋼城下町のピッツバーグなどでは一定の支持がある。


オバマ政権としては、この状態を軽視するわけにはいかないというわけだろう。
 

ともかく中国の設備投資過剰、そして鉄鋼、板ガラス、アルミなどの過剰在庫処分のため、WTOに違反を平気で猛烈なダンピング輸出をしており、世界の鉄鋼メーカー、加工企業などが、猛烈な損害を被り、日本でも四基ほど高炉がとまった。


韓国ではポスコが倒産寸前、インドのタタ財閥の鉄鋼部門は苦境に陥り、ベトナムでは鉄鋼商社が倒産している。


中国の洪水のようなダンピング輸出に対して、米国がようやく反撃を開始したことは、これからの成り行きに注視せざるを得ないだろう。


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| 宮崎正弘 | 15:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







在日米軍経費は全額、日本が支払え、さもなければ撤退だ   宮崎正広

■トランプ、CNNインタビューでどぎつい一発


「あなたは日本の核武装を認めるのか」とCNN記者のインタビューにドナルド・トランプは傲然と過激な一発をくりだした。


「そう、もし日本が在日米軍経費を全額支払わず、われわれが撤退したら、北朝鮮の核を前に、日本はほかにどのような手があるのか?」。


この衝撃ともとれる見解は、トランプが従来の発言を繰り返した過ぎないが、5月4日という日は、トランプがインディアナ州予備選を勝利して、ほぼ共和党正式候補のチケットを手中にした日である。


これまでの空砲とは異なってリアリティがある。


同時にトランプらは「韓国とドイツも同様」として、とくに日本を攻撃しているわけではない。韓国は日本同様に50%の経費を負担しているが、トランプはその数字を知らなかったようだが、「全額だ」と切り返した。
 

しかし、ものは考えようではないか。


これを奇貨として、日本は日米安保条約の再改定の準備を進める必要がある。トランプから言われるまでもない。欠陥だらけの日米安保条約の片務制の是正、主権国家として対等な軍事条約としなければならない。


日本はいつまでの平和のぬるま湯に浸かっているわけにはいかない。


いずれ、五年後か、五十年後かは分からないけれども、米軍は去る。オバマは「世界の警察官」を降りると発言しているのであり、全体としてのアメリカは孤立主義がただよい、社会的ムードはTPPに反対している。


いや、そもそも同盟とはどのような時代にも暫定協定である。


主権のある独立国家に外国の軍隊が駐留すること自体が異常であり、それを認めるとすれば集団安全保障、つまりNATOのような国際条約が必要なのである。したがってトランプの過激発言は日本への警告と理解したほうが良い。


トランプの衝撃的提言への回答はすでに小生は二年前に、カウンター・アジェンダを提議して世に問うている。


つまり、在日米軍を日本が買収し、支払いは日本が保有する米国債を担保にすればよく、そして第七艦隊を吸収合併するのである。


■宮崎正弘の防衛論


『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)


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| 宮崎正弘 | 11:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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